「駅弁」に関し、昔といまで大きく変わったことがあります。「冷却」です。
帰省や旅行のお供「駅弁」。昔と大きく変わっていることがあるそうです。
それは「冷却」。製造・販売をしているジェイアール東海パッセンジャーズによると、ご飯は炊きたてのものを、すぐに25度へ冷却。煮物も、昔は冷めるまで鍋にしばらくおいて味を染みこませたそうですが、いまはすぐ20度に冷却するといいます。
東海道新幹線の車内販売や駅売店で販売されているジェイアール東海パッセンジャーズの「特製幕之内御膳」1370円(2018年3月、恵 知仁撮影)。
私(恵 知仁:鉄道ライター)はかつて、駅弁を買って「まだ温かい!」と喜んだことがしばしばありましたが、「温かい」ということは「菌が繁殖しやすい」「食中毒の原因になる」ということ。また駅弁は、必ずしも購入から時間を置かずに食べられる、わけではありません。昔の駅弁も梅干しを入れたり、塩気を強くしたり、煮染めたりなど配慮はしていたものの、衛生意識がより高まった現代、「冷却」が重要になっているそうです。
ただ「冷却」となると、味に影響が出そうなもの。
そこでジェイアール東海パッセンジャーズは、「真空冷却」という20分で一気に冷却する方法のほか、それだと水分が飛んでパサパサになってしまう肉や魚では、時間をかけて冷風をあてる「差圧冷却」という方法を採用。同社の駅弁には「たこ焼き」が入っているものもありますが、味を保ったまま冷却できるよう、工夫しているそうです。
いろいろ計算されている、サンドイッチの肉の厚さジェイアール東海パッセンジャーズによると、こうして「冷却」された駅弁は、工場から温度管理をした状態で駅などへ配送。もしそのとき、輸送容器に蓄冷材が入っていないなどの不備があったら、工場へ戻すといいます。

衛生的な観点から、フィルムで包んで工場から出荷しているのも、ジェイアール東海パッセンジャーズの駅弁の特徴(2018年12月、恵 知仁撮影)。
また「駅弁開発の苦労」のひとつに、「隙間」もあるそうです。大荷物を抱え、駅売店でお弁当を購入して、ホームにあがって、列車に乗り込んで……となると、水平を保ったままそれを運ぶのは、簡単ではありません。このとき、駅弁の容器の中に隙間があると、盛り付けが崩れてしまうのです。
「もう一品入れればピッタリ!」だとしても、そうすると原価が上昇、販売価格が高くなってしまう……というジレンマがあり、いろいろと工夫しているとのこと。たとえばサンドイッチでは、容器のサイズへピッタリになるよう、肉厚を調整することもあるといいます。
ちなみに、東海道新幹線の座席ポケットに車内販売の案内が置かれていないのは、新大阪駅から西側の山陽新幹線区間とで、車内販売の担当会社が変わるため。乗務しているパーサーから、メニューをもらうことができます。