「熊本空港アクセス鉄道」構想が本格的に動き出します。熊本県が示した基本的な方向性にJR九州が同意。
熊本県は2019年2月21日(木)、整備を検討している熊本空港アクセス鉄道に関して、JR九州から基本的な方向性について同意を得たと発表しました。熊本県は、空港アクセス鉄道の実現に向け、取り組みを加速させていく方針です。
JR豊肥本線を走る普通列車。空港アクセス鉄道は同線の三里木駅から分岐する(2018年4月、恵 知仁撮影)。
熊本空港は熊本市の中心部から直線でおよそ15km離れており、バスだと熊本駅前からおよそ1時間かかります。この状況を改善するため、これまで鉄道やモノレール、路面電車(熊本市電)などによる空港アクセスの整備が比較検討されてきました。
熊本県が示した基本的な方向性によると、熊本県が中心となって設立する予定の第三セクターが、豊肥本線の三里木駅(熊本県菊陽町)から分岐する空港アクセス鉄道を整備。所有も第三セクターが担い、鉄道の運行はJR九州に委託されます。
この空港アクセス鉄道の列車は豊肥本線には“乗り入れない”としており、熊本駅から空港に向かう場合は三里木駅で乗り換える必要があります。熊本県の担当者は乗り入れない理由について、「豊肥本線が単線のため、いまの列車に加えて空港発着の列車を増やすのは難しいという問題があります(編注:すれ違える場所が少ないため、列車本数を増やすのが容易ではない)。また、一部の列車が空港行きになると、現在の豊肥本線 肥後大津行きなどの列車が減ってしまうのではないかという地元の声もあります」と話しました。
その一方、今回の合意では「特段の事由により、豊肥本線への乗入れを検討する場合は、負担等の一切を熊本県が負う」としており、列車がすれ違える場所を増やすなどし、将来の乗り入れ運転実施の可能性に含みを持たせています。
空港アクセス鉄道の総事業費は概算で約380億円。JR九州は第三セクターに出資しませんが、空港アクセス鉄道の開通後、既存路線の増益効果の一部を第三セクターに支払います。支出総額の上限は整備費の3分の1です。また、空港アクセス鉄道の実現に向け、熊本県が行う調査・検討に対し、JR九州は運行データの提供や技術的助言など協力を実施します。
【地図】熊本駅と三里木駅、熊本空港の位置関係

2004年から2008年にかけて検討された、三里木駅から分岐するルート(赤)。破線は2016年の熊本地震により運休中(国土地理院の地図を加工)。