バスの車体側面に「自家用」の文字が表記されていることがあります。そのような車両は「自家用」とはいえ、個人が自家使用する車両だけに入っているわけではありません。

「自家用」の表記は法律で決まっている

 バスやトラックなどは一般的に、いわゆる緑ナンバーが付いていれば事業用、白ナンバーが付いていれば自家用ですが、これとは別に、車体の側面に「自家用」と文字で表記されていることがあります。

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公立の福祉施設のバス側面に書かれた「自家用」表記。白ナンバーの車両(乗りものニュース編集部撮影)。

 関東運輸局によると、バス(乗車人員11人以上の自動車)においては、車体に「自家用」と表記することが道路運送法で規定されているといいます。「たとえば貸切バスであれば『貸切』、特定の顧客の需要に応じて運行する『特定旅客自動車運送事業』に該当するバスであれば『特定』といったように、車両の用途を車体に表記すること、とされています。その条文中に、自家用バスは『自家用』と表記すべきことが明記されているのです」とのこと。

「自家用のバス」は、個人が本当の意味で自家使用するものだけではありません。「たとえば幼稚園のバスなどが当てはまります。車体に『自家用』と表記するのは、不特定多数のお客さんを乗せる一般的なバスとの混同を避けるため、というのが法令の趣旨です」と関東運輸局は話します。

「自家用」車両による路線バスも

 他人の需要に応じ、有償で自動車を使用して旅客を運送する事業は、基本的に国から許認可を得て、緑の事業用ナンバーを取得した車両で行う必要がありますが、一部、例外的に白ナンバーの車両で認められるケースも存在します。

 たとえば、既存のバス・タクシー事業者による輸送サービスが提供されない地域で、国の登録を受けた市町村やNPO団体などが、白ナンバーの自家用自動車を用いて有償で運送を行うことが可能になっています。民間路線バスが撤退し、公共交通の担い手がなくなった地域で自治体が走らせるコミュニティバスなどで、白ナンバーの自家用車が使用されることがあるのです。

 このほか、たとえば企業のいわゆる役員車や、要人を運ぶ公用車なども、白ナンバーの自家用車両です。こうした自家用車両の運転や車両管理を請け負う「自家用自動車管理業」という業種も存在。自治体や企業と契約し、役員車や公用車、一部のコミュニティバス、「レントゲン車」「献血車」といった特殊車両などの運転を担っています。

 ちなみに、貨物自動車においても、道路運送法施行規則で旅客自動車と同じ条文のなかに、「特定」や「限定」(運ぶものが限定されている貨物自動車。競走馬を運ぶクルマなど)といった表記をしなければならないことが規定されており、かつてはそのなかに「自家用」もありました。群馬県トラック協会によると、この貨物自動車の「自家用」表記義務は、平成の初めごろになくなっているそうです。

【画像】「自家用」のクルマでOKの旅客運送も

バスの車体側面に「自家用」の文字、その意味は? 意外と広い「自家用」の用途

いずれも該当する運輸サービスが提供されていない地域で実施。団体数は2015年3月末現在(画像:佐渡市/国土交通省)。

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