レンタカーを借りた営業所と違う営業所で返す「乗り捨て」は、その営業所間の距離が離れるほど料金が多くかかりますが、こうした片道の利用を格安料金で提供するサービスが登場しています。利用者だけでなく店側にもメリットは大きいようです。
レンタカーは、そのクルマを借りた店舗に返却するのが一般的ですが、一定の条件で別の店舗に返す「乗り捨て」が可能な場合もあります。レンタカー会社により、乗り捨て料金は「30kmまで無料、30km以上は距離に応じて加算」といったケースもあれば、「同一県内は基本的に無料」というケースも見られます。
レンタカーに使われる「わ」ナンバーのイメージ(画像:写真AC)。
そのようななか、ニッポンレンタカーは都道府県をまたぐ広域な乗り捨てプランを格安で提供する「特割ワンウェイ」というサービスを展開しています。たとえば、ホンダ「フィット」を新潟駅周辺の店舗で12時間借り、東京駅周辺の店舗へ返却する場合、通常は3万888円(貸出料金8208円〈通常期の安心コース、免責補償料込み〉、乗り捨て料金2万2680円)となりますが、「条件が合えば」これを2160円という格安料金で利用できるサービスです。
なぜこのような格安料金が実現できるのでしょうか。ニッポンレンタカーを展開するニッポンレンタカーサービス(東京都千代田区)は、次のように話します。
「これは、乗り捨てられた車両を活用したサービスです。こうした車両は早めに登録地へ戻さなければならず、社員が運転して回送することもあれば、車両輸送業者に戻してもらうこともありますが、いずれにせよ費用がかかります。そこでもし、同一方向へ向かう方がいらっしゃるならば、使っていただいた方がほうがいい、というのが『特割ワンウェイ』の考え方です」(ニッポンレンタカーサービス)
「特割ワンウェイ」はつまり、実施営業所に対象車両がいつもあるわけではなく、もしあったとしても、車種および出発と返却の営業所があらかじめ指定されているという「条件」があるわけです。このため「こまめにアプリをチェックいただく必要がありますが、割引率としては通常のおよそ9割引くらいで、2、3人でのご利用ならばさらにお得です」(ニッポンレンタカーサービス)とのこと。同社は2017年1月に特定の地域でこのサービスを試行したのち、スマートフォンの「ニッポンレンタカーアプリ」限定のサービスとして本格的に展開しているそうです。
トヨタレンタカーにおいても2019年1月から、乗り捨て車両を活用したワンウェイレンタルサービス「片道GO!」を東京都(成田空港の店舗含む)と、大阪および京都府内の店舗で開始。貸渡期間は出発日から最大48時間で、車両と出発営業所、出発期間は決められていますが、返却営業所は、たとえば「トヨタレンタリース京都」管轄の対象店舗ならどこでもOK、といった形になっています。
料金は一律で、24時間まで2160円、48時間まで4320円(税込。免責補償料などは含まない)。つまり、レンタカーで東京~大阪間を最安2160円と燃料代で移動できてしまうのです。対象車両や出発店舗は、トヨタレンタカーのウェブサイトで随時掲載されています。
トヨタ自動車のモビリティ事業部によると、トヨタレンタカーでも、車両輸送業者を使って乗り捨て車両を登録店舗に返却しているとのこと。その輸送コストのほか、「業者の人手不足もあり、たとえば東京~大阪間で2週間程度を要するなど、返却まで時間がかかることが課題となっています」といいます。車両の登録店舗は、その車両が戻ってくるまで次の予約を取れず、貸出機会の損失につながることから、この「輸送待機」期間を利用機会に変えるべく、サービスをスタートしたそうです。

「片道GO!」サービスは、東京(および成田空港)と大阪、京都のあいだで展開されている(トヨタレンタカーのウェブサイトより)。
背景には、東京~大阪・京都間といった広域にまたがる乗り捨て利用が近年増えている、ということもあるといいます。「訪日客の増加にともない、インバウンド移動ニーズの高い地域を中心に、乗り捨て利用が増加しています」とのこと。
乗り捨てられた車両の有効活用を目的とした「片道GO!」サービスは、トヨタ自動車によると、予想以上の好評だそうです。「対象地域の拡大について前向きに検討していきたいと考えておりますが、具体的内容は現時点では未定です」と話します。
【写真】ニッポンレンタカーはアプリ限定で「特割ワンウェイ」

アプリ内の各店舗紹介ページで、特定期間内に同店舗へ返却、あるいは同店舗から出発する回送車両がある場合に、「特割ワンウェイ」の在庫として表示される。画像は一例(「ニッポンレンタカーアプリ」より)。