温度の感じ方は人それぞれ。冷房の効いた車内を快適と思う人がいれば、寒いと感じる人もいます。

そんなときに使えるのが「弱冷房車」。ほかの車両より温度が高めですが、すべての弱冷房車が同じ温度というわけではありません。

関西の京阪電鉄が初導入

 いまの鉄道車両は、ほぼすべて冷房装置を搭載。夏の暑い時期は非常にありがたい設備ですが、温度の感じ方は個人差があり、なかには冷房装置の冷気が苦手という人もいます。そこで連結されるようになったのが「弱冷房車」。その名の通り、冷房装置を弱めに動かし、ほかの車両より温度を少し高くしている車両です。

「弱冷房車」ほかの車両より何度高い? 路線や車両によって変化...の画像はこちら >>

「弱冷房車」のステッカーが貼られた通勤電車(2016年8月、草町義和撮影)。

 弱冷房車は1984(昭和59)年、関西の京阪電鉄が初めて導入しました。1986(昭和61)年10月13日放映のNHKニュースは、京阪の弱冷房車について「お年寄りや女性に評判がよく、個人差の大きい分野のサービスとして注目されます」と報じています。

 その後、弱冷房車は大都市圏の通勤路線を中心に普及。関東では1987(昭和62)年、JR東日本が東海道線と総武・横須賀線に初めて弱冷房車を導入しました。「『冷やしすぎだ』という根強い苦情にこたえるとともに、『省エネ』を狙った」(1987年8月1日付け朝日新聞東京朝刊)といいます。

 弱冷房車の温度は当然ながら、ほかの冷房車より高くなるよう設定されていますが、設定温度は鉄道事業者や路線によって異なります。

 関東エリアのJR線の場合、弱冷房車はほかの車両より2度高くなるよう設定。原則的には通常の冷房車が25度で、弱冷房車は27度ですが、京浜東北線と京葉線は通常冷房車が24度のため、弱冷房車は26度になります。東海道線は通常の冷房車が26度、弱冷房車が28度です。

都営大江戸線の設定温度が低い理由

 関東のおもな私鉄の弱冷房車も会社や路線によって異なりますが、通常の冷房車の設定温度は25~26度、弱冷房車は27~28度が多くなっています。

 小田急電鉄は「一部の車両は設定が異なりますが、弱冷房車は28度、それ以外の車両は26度です。当社車両の車内環境に鑑み、一番快適と思われる温度に設定しています」(CSR・広報部)としています。原則として通常冷房車が25度、弱冷房車が28度の東急電鉄は「相互直通先の鉄道会社との協議で設定温度を決めています」(広報部)と話しました。

 都営地下鉄は浅草線、三田線、新宿線の通常冷房車が25度、弱冷房車が28度で設定されていますが、大江戸線の設定温度は通常の冷房車が22度、弱冷房車が26度と、全体的にかなり低め。東京都交通局の広報課は取材に対し、「大江戸線は車両が小さく、お客さまが大勢乗ると空気の流れが悪くなって体感上の温度が高くなるため、冷房を強くしています」と話しました。

 ちなみに、冬でも天候が良好で気温が高いときには、まれに冷房装置から冷気が吹き出ていることがあります。「冷房装置の温度設定は季節を問わず同じで、冬場に冷房を使うときでも、弱冷房車はほかの車両より温度を高くしています」(東急電鉄広報部)。

 なお、おもに冬季に使われる暖房装置は、取材したすべての鉄道会社が「全車両、同じ温度で設定しています」と回答。一部の車両のみ設定温度を弱めたり強めたりすることはないとしています。

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