鉄道の運転士は列車を安全に運転するため、指さししながら言葉を発する「指差喚呼」を行うことがあります。特によく知られているのが「出発進行」ですが、それは発車することとは別の意味があります。
列車の運転室を見ていると、運転士が前方を指さししながら、短い言葉を発することがあります。列車を安全に運転するために行う作業のひとつ、「指差喚呼(しさかんこ)」です。
列車の運転士は「指差喚呼」しながら列車を走らせる(2019年3月、草町義和撮影)。
特によく知られている指差喚呼が「出発進行」。多くの場合、駅に停車した列車が動き出す直前に、運転士が指さししながら「出発進行」の4文字を口にします。列車が発車する直前に行われることが多いため、発車の合図のように思えますが、本来は別の意味があります。
「出発進行」のうち「出発」は、「出発信号機」のことです。鉄道の信号機は設置の場所や用途によって様々な種類があり、そのうちのひとつが、駅のホームなど列車が停車するポイントの少し前に設置されている出発信号機。運転士に対し、列車を発車させてもよい状態かどうかを示します。
また、標準的な鉄道信号機は、赤、黄、青(緑)の3色を使用。赤が「停止」、黄が「注意」、青(緑)が「進行」を示します。このうち「進行」は、「信号機がある場所の先の区間に進んでもよい」という意味です。
列車が駅などに停車している場合、運転士は前方に見える出発信号機を指さして、表示されている色を確認。それが青(緑)の「進行」なら「出発信号機が『進行』を表示していることを確認」したことになり、略して「出発進行」と言うわけです。
表示の確認が目的ですから、運転士が「出発進行」と指差喚呼を行ったあと、すぐには発車しないことがあります。また、赤(停止)や黄(注意)が表示されているときには「出発停止」「出発注意」と指差喚呼することもあります。
【写真】「出発進行」で指さす信号機はこれ!

JR仙石線と東北本線(仙石東北ライン)が乗り入れている高城町駅の出発信号機。路線ごとに設置されており、緑が点灯しているときは「出発進行」、赤の点灯時は「出発停止」と喚呼する(2015年7月、草町義和撮影)。