JR西日本が関空特急「はるか」用に新開発した271系電車が完成しました。これまでの281系電車のデザインを受け継ぎつつ、荷物スペースや電源コンセント、液晶画面による情報案内装置など、様々な点が改良されています。
JR西日本が、関西空港アクセス特急「はるか」用の新型車両として、271系電車を開発。2019年7月10日(水)、製造を担当した近畿車輛(大阪府東大阪市)で報道陣に公開しました。
JR西日本が新開発した271系電車。デザインは287系電車がベースとなっている(2019年7月10日、伊原 薫撮影)。
現在、「はるか」には専用の281系電車が使われています。「はるか」はおもに6両編成ですが、混雑する一部列車は3両を増結した9両編成で運行しています。このため281系は6両の基本編成9本に加えて、3両の増結編成3本の合計63両が存在しますが、基本編成に比べて増結編成は数が少ないため、全列車を9両編成で運行することはできません。
一方、最近は外国人観光客を中心に関西空港の利用客が増加しており、「はるか」の利用者も増え続けています。そこで、JR西日本は「はるか」の全列車を9両編成で運行することに決定。281系は登場から25年が経過していることから、必要となる増結用編成は新形式で対応することになりました。こうして生まれたのが271系です。
271系は、JR西日本の最新型特急車両である287系電車(特急「きのさき」「こうのとり」「くろしお」などで使用)をベースに、様々な改良が加えられました。
281系のデザイン上の特徴だった、前面下部をへこませる「インバースデザイン」を271系も踏襲。287系と少し違った顔つきになりました。車体下部を覆うスカートの形状は287系と同一ですが、281系と同様のカラーリングにするなど、印象を変えています。
前面や側面の塗り分けも、白をベースに屋根部分を濃いグレー、裾部分をブルーとした281系同様のデザインとし、窓横などには「スクエアドット」と呼ばれる青色の模様や、五重塔などが描かれた「はるか」ロゴマークも配置。281系と連結した際の一体感を出すとともに、287系を使用する「くろしお」などほかの特急と見た目を変えることで、誤乗を防ぐ役目も持っています。

271系の車内。ブラウン系を基調とした281系のカラーデザインを踏襲(2019年7月10日、伊原 薫撮影)。

客室内に設けられた大型荷物置き場(2019年7月10日、伊原 薫撮影)。

271系の先頭部。カラーパターンは281系と同一に(2019年7月10日、伊原 薫撮影)。
車内のカラーリングは、華やかさや上品さをコンセプトとした281系を受け継ぎつつ、数々の新技術を取り入れました。例えば、JR西日本の在来線特急では初めて、車端部に液晶ディスプレイ2画面による情報案内装置を設置したほか、普通車も全席に電源コンセントを設置。天井の高さは287系に比べて70mm高い2220mmで、より広々とした印象を受けます。荷物置き場は大型スーツケースを考慮して2段式となり、さらにデッキ部分にあったのを客室内に移すことで、セキュリティも確保しました。防犯カメラの台数も1両あたり8~9台と大幅に増やされ、デッキ部分に加えて客室内や荷物置き場にも取り付けられています。
デッキ部分に設けられたトイレは、もちろん車いすに対応した大型のもの。向かい側の洗面台は、鏡にLED照明が埋め込まれ、水やハンドソープが自動で出るようになるなど、より使いやすくなりました。
271系は、3両編成6本の合計18両が製造され、2020年春から運用開始予定。25年間にわたって親しまれてきた関空特急「はるか」に、新たな“顔”が加わります。