道幅に比較的余裕がありながら、車幅による通行規制が敷かれ、さらには路上の障害物により大きなクルマの通行が物理的に難しくなっているケースが見られます。それぞれの場所で、通行規制を厳格にする理由がありました。

路上に「ハ」字型の縁石、なぜ?

 狭い路地などで、車幅に応じた通行規制が敷かれていることがありますが、なかには道路幅に余裕があってもそのような制限が設けられていたり、路上に設置された縁石やポールなどで、大きなクルマの通行が物理的に難しくなっていたりするケースも存在します。

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板橋区内のある区道。「ハ」の字型に設置された縁石で道路幅が狭められている(2019年7月、乗りものニュース編集部撮影)。

 たとえば東京都板橋区のある区道は、車両の最大幅1.7mの通行規制が敷かれたうえで、一部の交差点付近で路上に縁石が「ハ」の字型に設置され、通行路が狭められています。この道路は首都高5号池袋線の高架下に並行するもので、確かに狭いのですが、車両幅1.7m以上のクルマでも、ある程度の大きさまでは支障なく通れる広さがあります。道路を管理する板橋区の土木部は規制の理由を次のように話します。

「首都高が整備される際に、近隣住民から『大型車が抜け道として通行するようになると困る』という意見が寄せられ、車幅による通行規制が敷かれるとともに、縁石も設けられたようです。もともとこの道路は都道で、1977(昭和52)年に区へ移管されたのですが、都道の時代から縁石がありました」(板橋区土木部)

 首都高5号線は板橋区役所付近から国道17号の直上を通り、板橋本町ランプの北側で国道17号と分かれ、住宅街を貫く形で高島平方面へ通じています。前出の区道はその住宅街区間の高架下道路で、縁石があるのは国道17号から分かれて最初の交差点付近です。

 板橋区は「当時、首都高が渋滞した際に大型車が首都高を降り、この区間を通行することを懸念したのでしょう」といい、規制を無視して通行しようとする大型車を物理的に排除し、住環境を守る目的があると話します。

 制限値である車幅1.7mは、昭和の時代に一般的だった、いわゆる5ナンバーサイズ以下のクルマを意味します。いまではそれを超える車幅を持つ乗用車も増えましたが、板橋区によると現在のところ、縁石を撤去する要望はなく、検討もしていないそうです。

車幅に加え重量の制限も

 制限値以上の車両が通れる幅がありながら、車幅だけでなく重量制限まで設けられている道路もあります。都内におけるその一例が、杉並区と世田谷区を結ぶ都道428号、通称「荒玉水道道路」です。

 この道路は区間により1.7mから2.0mの車幅制限があるほか、最大4tの重量制限が加わる区間もあります。制限値以上の車両が進入することを防ぐかのように、いくつかの交差点付近には、車道の両脇にラバーポールやガードレールが設置されています。

物理で車幅制限のナゼ 縁石やポールで狭められた道路、通行規制を厳格にする理由

都道428号「荒玉水道道路」。杉並区と世田谷区を直線的に結ぶ(国土地理院の地図を加工)。

 通行規制の理由は、この道路のいたるところで見られる看板で説明されています。大正末期から昭和前期にかけ、多摩川の水を中野や板橋方面に給水する目的で造られた水道管が道路の下に埋まっており、それを保護するために重い車両の通行を規制しているのです。地上の道路はもともと水道管を建設するために造られたスペースで、車両の通行が可能になったのは、昭和30年代のことでした。

 都会の道路に限らず、幅が狭く通行が困難な山道や、同じく幅が狭い橋の入口付近などにも、制限値以上の幅を持つ車両の通行を物理的に難しくするコンクリート製のゲートなどが設置されていることがあります。

【写真】「4t車以上お断り」の都道、なぜ?

物理で車幅制限のナゼ 縁石やポールで狭められた道路、通行規制を厳格にする理由

都道428号「荒玉水道道路」。地下の水道管を保護する目的で、車幅制限のほか重量制限も設けられている区間がある(画像:photolibrary)。