ANAと豊田自動織機が、佐賀空港で実施中のトーイングトラクター自動走行実験を公開。飛行機の間近、ほかの車両が往来する実稼働エリアで行われている、実際の状況を想定した実験です。
ANA(全日空)と豊田自動織機が2019年10月3日(木)、佐賀空港内の制限エリアで9月30日(月)から実施中の、貨物コンテナをけん引する「トーイングトラクター」の自動走行実証実験を、報道陣に公開しました。
佐賀空港で行われたトーイングトラクター自動走行実証実験の様子(2019年10月3日、乗りものニュース編集部撮影)。
実験は、飛行機が駐機・走行し、ほかの地上支援車両が行き来する「実稼働エリア」で行われ、佐賀空港における実際の業務内容をイメージした2つのルートを2回ずつ、計4回走ります。
けん引するコンテナの台数は、ルートによって異なります。ひとつめのルートでは、コンテナ2個をけん引。これは、実際に佐賀空港でANAの飛行機が積み下ろしを行う旅客用荷物量に相当するとのこと。ふたつめのルートでは、コンテナ4個をけん引。これは、実際に佐賀空港でANAの飛行機が積み下ろしを行う貨物の量に相当するとしています。
自動運転に使われるトーイングトラクターは豊田自動織機製。法律上の理由から補助者が同乗しますが、自動運転中はハンドルから手を放した状態。通行帯へ入る際に必須となる一時停止も、自動で行います。
ANAでは、佐賀空港を「イノベーションモデル空港」として位置づけています。理由は、天候が安定していること、開港以来、ANAと佐賀県の関係が良好なこと、地上支援の車両が少なく基礎的な実証実験を行うには適していることだそうです。
過去に佐賀空港では、2019年3月に専用空間を設けて国内初というトーイングトラクター自動走行技術の検証を実施したほか、7月には飛行機をプッシュバックするリモコン式の機材を導入しています。

ハンドルを操作しなくとも走るトーイングトラクター(2019年10月3日、乗りものニュース編集部撮影)。
「『仕事をシンプルかつスマートにする』ことを合言葉に、先進的な技術を使いながら、いかに業務内容のひとつずつを簡単にしていくかを考えて取り組んでいます。このことで人がより高度な仕事をするよう、働き方を変えていきたいです」(ANAオペレーションサポートセンター品質管理部 大野亮介マネジャー)。
国土交通省航空局航空ネットワーク部空港技術課の山根 勇課長補佐によると、旅客需要が右肩上がりで増えている一方、生産年齢人口の減少により、人手不足が懸念されているとのこと。官民一体となって、先端技術を取り入れたイノベーションの推進を図りたいといいます。
ANAではこのたびの結果をもとに改善を加え、2020年1月から2月にかけて中部空港で実証実験を行う予定。飛行機の離発着便数や車両の往来が多い条件で自動走行技術を検証し、2020年中の実用化を目指すとのことです。