人口減少や高齢化を背景に、地域交通の存在感が高まるなか、運転手不足などでその需要に対応できない状況が生じています。今後のあり方を議論すべく、国や自治体、交通事業者によるセミナーが開催されました。
今後の地域交通のあり方を議論するセミナー「地域交通のイノベーション~MaaS構築のために~」が2019年10月4日(金)、東京都中央区の時事通信ホールで開催されました。国や自治体の関係者、交通事業者ら約380人が参加し、交通政策や運行事業に携わる人々の講演やパネルディスカッションが行われました。
時事通信ホールで開催されたセミナー「地域交通のイノベーション~MaaS構築のために~」の様子(2019年10月4日、中島洋平撮影)。
東日本における複数のバス・鉄道事業者を傘下に持つみちのりホールディングスのCEO松本 順さんは講演で、高齢化や若者のクルマ離れ、訪日外国人の増加、高齢ドライバーの運転免許返納など、昨今の社会課題の変化がバスの需要を増やしていると指摘。一方、運転手不足などにより、その需要の増加に対応できていない状況も、セミナー全体を通じて浮き彫りになりました。
こうしたなか、全国の自治体で地域交通網の再編計画が策定され、運行事業者のあいだでは連携や統合の動きが進んでいます。たとえば青森県八戸市では、需要の高い路線において2事業者が競合し、それぞれがダイヤを組んでいましたが、これを調整して10分間隔に平準化。本数は大幅に減ったものの、わかりやすいダイヤになったことで、かえって利用者が増加したそうです。また、同じ地域で路線バスや自治体によるコミュニティバス、病院の無料通院バス、学校のスクールバスなどが混在していたのを、路線バスに1本化した茨城県常陸太田市の事例なども紹介されました。
今後の公共交通のあり方として注目される「MaaS(マース)」についても、様々な提言や議論がありました。「MaaS」は「Mobility as a Service」の略で、様々な移動手段をひとつの「サービス」として捉え、利用者に提供する概念です。国土交通省では従来のように公共交通を「路線」ごとに捉えるのではなく、利用者へ「ドアツードア」の移動を提供することを目指しているといい、そのために各事業者がダイヤなどのデータをオープンにし、連携させていく必要があるとしています。

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