自衛隊というと、緑色のトラックに迷彩服の隊員が乗っているイメージが強いかもしれませんが、緑色の車両ばかりというわけではありません。各地の駐屯地や基地には任務に応じて必要な車両を配備しているため、中には派手な外観を持つ車両も存在するのです。

上空や遠方でもハッキリ見える自衛隊車両とは

 日本は災害大国です。地震や台風、大雨などで大規模災害が発生し、消防や警察だけでは対応が難しくなった場合、最後の砦として自衛隊に災害派遣要請が出されます。その要請を受けて活動する自衛隊車両は、テレビをはじめ様々な媒体で目にすることが多いでしょう。
 
 そうした被災地に展開した自衛隊というと、濃緑色(オリーブドラブ)のトラックやテントをイメージするかもしれませんが、自衛隊の車両イコール濃緑色というわけではありません。

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航空自衛隊が運用する場外救難車(2019年9月、柘植優介撮影)。

 そもそも、なぜ自衛隊の車両に濃緑色が多いのかというと、それは山野で敵に見つかりにくくするためであり、つまり野外での戦闘を想定しているからです。ただし野外戦闘をおもに想定しているのは、陸上自衛隊と一部の航空自衛隊部隊の車両であり、海上自衛隊の車両や航空自衛隊の航空機部隊の車両は、有事においても野外戦闘より基地機能の維持の方が主要な任務となります。
 
 陸上自衛隊は野外戦闘を想定しているからこそ、全部隊に可搬式の炊具セットや野外風呂、浄水セットを装備しています。だからこそ、電気や水道、ガスなどが寸断された被災地でこれらが活用でき、そこから災害派遣のメインとなることが多いのです。その結果、被災地で濃緑色の車両を見かける確率が高くなるといえるでしょう。
 
 逆に、地上戦闘を想定しなければ濃緑色に塗る必要はありません。自衛隊の車両全てが地上戦闘を想定しているわけではないため、自衛隊の車両でも濃緑色でないものは存在します。


 
 例えば飛行場はコンクリートが多いため、航空自衛隊の飛行場支援車両などは濃緑色よりも薄い緑灰色で塗られています。

飛行場では事故防止のために目立つことが重要

 飛行場ではむしろ目立たなくてはいけない車両も存在します。たとえば消防車、これなどは緊急車両のため、自衛隊所有のものであっても赤く塗られています。また滑走路や駐機場(エプロン地区)を点検する車両などは、万が一動いている航空機に接触されたら大事故につながるため、目立つように黄色に塗られています。
 
 同じように積雪地で活動する除雪車も、吹雪などの視界が悪い悪天候下でも滑走路や駐機場などの除雪で動き回ることが求められるため、黄色いボディで目立つようにしています。

緑の多い自衛隊車両のなかで目立ってなんぼのカラフル支援車両とは

京都府の舞鶴基地で使用される牽引車。海上自衛隊の航空機支援車両は黄色が主流(画像:海上自衛隊)。

 ほかにも、初めてそこの基地に飛来して地上滑走が不慣れな航空機や、無線が故障して管制塔と連絡が取れなくなった航空機に対して誘導を行う「航空機誘導車」は、緊急車両を兼ねているため回転灯に加えて車体の側面と後方に「Follow Me」と大きな文字を入れています。そのため同車は通称「フォローミーカー」と呼ばれています。
 
 ちなみに海上自衛隊では、牽引車や燃料補給車なども目立つように黄色く塗装されています。
 
 また緑色が陸上自衛隊のイメージカラーであるように、海上自衛隊と航空自衛隊にもそれぞれ白/黒と青というイメージカラーがあります。なので従来はそれに合うように車両についても専用塗装を用いてきました。


 
 ただし海上自衛隊は、そもそも白または黒というのは一般車にありふれたカラーであり、なおかつ陸上自衛隊や航空自衛隊でも一部車両に用いている色のため、あまり海上自衛隊専用色というイメージはないかもしれません。海上自衛隊の一部車両は濃紺で塗られていますが、それも一般車ではポピュラーなため、陸上自衛隊のイメージカラーである緑色ほど、海上自衛隊のイメージカラーとはなっていません。

最近は市販車のカラーリングをそのまま使用

 航空自衛隊については少し傾向が異なっていて、当初は青灰色といえる専用色を用いていたことがありましたが、専用塗装は車両単価が上がり、陸上自衛隊のように偽装することがないのに専用塗装にする必要性がないため、最近では市販車ベースの車両を導入した場合、青色の塗色はそのまま用いています。
 
 一方で、野外展開することの多い地対空ミサイルを運用する高射部隊や通信中継部隊などは、従来どおり専用塗装の車両を使用しています。なお、これらは陸自と同じような運用を想定しているものの、塗装は若干明るい緑色をしています。

緑の多い自衛隊車両のなかで目立ってなんぼのカラフル支援車両とは

青森県の三沢基地で使用される航空機誘導車。「FOLLOW ME」という文字を描いている(2016年9月、柘植優介撮影)。

 ただし、これら派手なカラーリングの車両はあくまでも一部に過ぎないため、陸海空の自衛隊のいずれに所属する車両かを識別するには、ボンネットなどに描かれた桜のマークを見るのがいちばんでしょう。
 
 このマークは陸上自衛隊なら桜のみ、海上自衛隊なら桜に錨を組み合わせた意匠で、航空自衛隊ならば桜の縁どりに翼が付いた形で描かれており、車体色が濃緑色であったとしてもここを見れば一目瞭然です。
 

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