路線バスが数分おきに、ひいては1日数千本が行き交うような区間が全国にあります。西日本には、1日あたり3500本ものバスが通過するという区間も存在します。

1系統だけで朝1時間あたり27本 大阪が誇るドル箱バス路線

 路線バスが日に数百本、なかには1000本以上という区間が全国に存在します。今回は、西日本の「バスがどんどん来る区間」を3つ紹介します。なお、運行本数などの数値は2020年2月末現在のものです。

守口車庫前~大阪駅前(大阪府守口市~大阪市北区)

 大阪シティバスの「34号系統」は、大阪市の北東に隣接する守口市の守口車庫前と、大阪駅前とを結んでいます。おもに淀川の南岸に並行する「城北公園通」を通るのですが、運行区間の半分近く(毛馬橋~済生会病院前)は34号系統のみが走っており、この系統だけで、平日8時台の大阪駅行きが27本、運行されています。

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大阪シティバス34号系統。日中も利用者が多い(2020年2月、宮武和多哉撮影)。

 34号系統は本数だけでなく、営業利益も年間3億円強と、収益のうえでは大阪シティバスのなかでも群を抜いています。沿線には、移動手段がほぼ「バス一択」という地域もあり、これだけの運行頻度にもかかわらず、朝晩には何便も待たないと乗れないケースもあるほどです。大阪駅前では、この系統専用のとりわけ広い乗り場が構えられ、平日夕方は乗車待ちの行列で敷地が埋め尽くされます。

 しかし、2018年には沿線でおおさか東線の城北公園通駅(大阪市旭区)が開業し、この路線があと数年後には新大阪駅から、大阪駅北側に新設される通称「うめきた新駅」まで延伸されます。このことが、大阪シティバス34号系統に影響を与えるかもしれません。

日本一? バス1日3500本通行 さらに路面電車も並行

 ターミナル駅の近くなどで、多くの路線が集中するために本数が多いという区間は全国にありますが、なかでもとりわけバスが多いという区間が九州にあります。

宝町~八千代町(長崎市)

 九州で「路線バスが集中する場所」といえば、西鉄バスが集中する福岡市内の「大博通り」(博多駅前~祇園)なども有名ですが、さらに多くの系統が集中しているのが、長崎市の宝町~八千代町間です。JR長崎駅前を通る「新浦上街道」沿いで、長崎バスと長崎県営バスあわせて、1日あたり往復3500本以上のバスが運行されているだけでなく、路面電車まで並行しています。

 長崎駅の北約1kmの宝町交差点で、さらに北の浦上駅方面から来たバスと、市西部の住宅街である稲佐方面からのバスが合流し、長崎駅方面へ向かいます。八千代町を通過後、長崎駅の手前で長崎県営バスは自前のバスターミナルへ進入するものの、八千代町~長崎駅前間もバスが走る本数が多いことに変わりはありません。

 長崎駅周辺は、東側にすぐ山が迫り、西側には浦上川が流れるため、平地が少ないこともあり、この新浦上街道にバス路線も集中せざるを得ないのです。

「路線バス本数かなり多い区間」西日本3選 バス1日3500本通過 片側1車線の道路で対応

長崎駅前の高架橋から八千代町方面を望む(2009年7月、宮武和多哉撮影)。

 前出のとおり、この区間は路面電車や、周辺の幹線道路から合流するクルマも走るため、典型的なボトルネック(交通集中が起きる場所)でもあります。1日500本弱運行されている路面電車は長崎駅に優先して入れるので、この渋滞を避けるために、長崎駅方面行きのバスからわざわざ路面電車に乗り換えて長崎駅へ向かう、という人もしばしば見られます。

2車線の道路にバス1日1300本 渋滞しない?

 京都市の中心部はバスの本数だけでなく、交通量そのものも多いのですが、それにもかかわらず、車道を縮小し、歩道を拡幅するという一大工事が行われました。

四条河原町~四条烏丸(京都市下京区)

 京都市の中心部を東西に走る「四条通」の四条河原町~四条烏丸間は、京都市営バスと京都バスで計12系統、1日約1300本ものバスが行き交います。この区間で特筆すべきは、車道が片側1車線しかないことです。

 この区間の車道はもともと片側2車線でしたが、1時間あたり2000台と、通常の片側2車線道路より多くのクルマが行き交い、バスの定時運行に支障をきたしていました。また歩道幅が片側3.5mしかなく、年間5000万人以上 の観光客が訪れる京都市の中心部ということもあり、あまりに歩きづらく、バスの乗車に列を作ることすら困難だったのです。

 議論と工事に10年をかけ、この区間は2015(平成27)年に車道が片側1車線に縮小された一方、歩道は倍の広さに拡張されました。この区間にあったバス停の数自体も、16か所から4か所に集約され、ひとつのバス停には3台が同時に停車できるバスベイ(停車スペース)が設けられました。

「路線バス本数かなり多い区間」西日本3選 バス1日3500本通過 片側1車線の道路で対応

京都の四条通を行く市営バス(2020年2月、宮武和多哉撮影)。

 その結果、四条通は車両の通行が4割ほど減少しました。京都市によると、車道が狭くなったことから、多くのドライバーが避けるようになったと見られるそうです。また、バスベイの整備で停車による渋滞を引き起こさなくなったバスは、その運行自体もぐっとスムーズになりました。日中を通して1時間あたり40本から50本もあるバスの乗降扱いも、効率よく行えるようになったのです。

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 全国の「路線バスがどんどん来る区間」は、単に乗客や運行系統数が多いだけでなく、道路や地形なども密接に関係します。今回紹介した場所へ訪れた際は、通り沿いのコーヒーショップでひと息つきながら、行き交うバスを眺めてみるのも良いかもしれません。

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