高速道路のSAは施設が充実していて、PAは規模が小さい、というイメージは、新東名高速では特に当てはまらないかもしれません。静岡および愛知県内にある9つのSA・PA、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
新東名高速は2012(平成24)年に静岡区間(御殿場JCT~浜松いなさJCT)、2016年に愛知区間(浜松いなさJCT~豊田東JCT)、あわせて約200kmが開通しました。この御殿場JCT~豊田東JCT間には、4つのSA、5つのPAが設置されています。
並行する東名にはトイレしかないようなPAもありますが、新しく開通した新東名では、SAはもちろん、PAもフードコートやショッピングエリアといった施設が充実しており、どのSA・PAもそれぞれの個性を放っています。今回はそうした新東名のSA・PAを御殿場側から順に紹介します。なお、それぞれのデータは2020年3月現在のもので、駐車台数は障害者用を含みます。
駿河湾沼津SA(静岡県沼津市)●下り線
・駐車場:大型111台、小型133台
・トイレ:男子小用26基、男子大用18室、女子用60室、障害者用4室
●上り線
・駐車場:大型99台、小型148台
・トイレ:男子小用26基、男子大用18室、女子用60室、障害者用4室
上下線とも高台に位置し、新東名の休憩施設では唯一の海を望めるSAです。フードコートやレストラン、ショッピングエリアはもちろん、ガソリンスタンドやドッグラン、スマートICといった施設も備えます。上り線側の商業施設は、地中海の港町をイメージした外観も特徴で、その2階には装飾的な鏡やシャンデリアで飾られた特別な女子トイレやパウダールームがあります。
地中海の港町をイメージした建物の駿河湾沼津SA上り線(画像:中日本エクシス)。
清水PA(静岡市清水区)
●下り線
・駐車場:大型36台、小型118台
・トイレ:男子小用18基、男子大用8室、女子用42室、障害者用2室
●上り線
・駐車場:大型41台、小型118台
・トイレ:男子小用14基、男子大用6室、女子用30室、障害者用2室
駐車場は上下線で別々ですが、施設は共有の上下集約型PAです。フードコートやコンビニエンスストアのほか、「ドン・キホーテ」の高速道路向け新業態「ミチドンキ」が2018年に初出店しました。このほか、アパレルショップや雑貨店が見られる点も特徴です。
新東名にある9つのSA・PAのうち、7つが静岡県内にあります。
静岡SA(静岡市葵区)●下り線
・駐車場:大型72台、小型131台
・トイレ:男子小用28基、男子大用16室、女子用64室、障害者用4室
●上り線
・駐車場:大型160台、小型203台
・トイレ:男子小用24基、男子大用14室、女子用58室、障害者用4室
静岡市の山間部にあるSAで、ガソリンスタンドやドッグラン、子ども向けの屋外遊具、スマートICといった施設を備えます。上下線とも地元静岡の模型・プラモデルメーカー「タミヤ」のプラモデルやグッズの販売コーナーがあるほか、下り線にはバンダイが展開する「機動戦士ガンダム」グッズ専門店「STRICT-G」が出店しています(上り線側にも展示コーナーとグッズの自動販売機あり)。

静岡SA下り線(2019年9月、中島洋平撮影)。
藤枝PA(静岡県藤枝市)
●下り線
・駐車場:大型81台、小型39台
・トイレ:男子小用20基、男子大用10室、女子用50室、障害者用2室
●上り線
・駐車場:大型81台、小型39台
・トイレ:男子小用20基、男子大用10室、女子用50室、障害者用4室
下り線は商業施設にラーメン店とコンビニエンスストアのみが入居する、比較的小さなPAです。上り線の商業施設は、東海道の宿場町をイメージした和風の外観が特徴で、ラーメン店では藤枝名物「朝ラーメン」を、朝限定で提供しています。また上下線とも、屋外には長い藤棚があり、4月から5月にかけて見頃を迎えます。
掛川PA(静岡県掛川市)●下り線
・駐車場:大型86台、小型40台
・トイレ:男子小用22基、男子大用10室、女子用50室、障害者用2室
●上り線
・駐車場:大型86台、小型40台
・トイレ:男子小用22基、男子大用10室、女子用50室、障害者用4室
上下線とも、コインシャワーやコインランドリーを備える「ドライバーズ・スポット天神屋」があり、静岡おでんなどの軽食も提供しています。この「天神屋」は静岡県内にある新東名の各SAに出店していますが、PAでは、ここ掛川が唯一です。また下り線のフードコートは2020年2月にリニューアルされ、牛めし「松屋」などを展開する松屋フーズがNEXCO中日本管内に初出店しました。
遠州森町PA(静岡県森町)●下り線
・駐車場:大型81台、小型37台
・トイレ:男子小用18基、男子大用10室、女子用44室、障害者用2室
●上り線
・駐車場:大型81台、小型37台
・トイレ:男子小用18基、男子大用10室、女子用44室、障害者用2室
静岡県内では東名と新東名、両方の走る自治体が少なくないなか、森町は新東名のみで、遠州森町PAにはスマートICも併設されています。上下線とも茶店をイメージした和風の外観で、トイレにも木材が多用されているほか、お茶や次郎柿といった地元森町の特産品も販売。
浜松以西のSA・PAも、それぞれ個性的です。
浜松SA(静岡県浜松市)●下り線
・駐車場:大型95台、小型93台
・トイレ:男子小用26基、男子大用16室、女子用62室、障害者用4室
●上り線
・駐車場:大型174台、小型110台
・トイレ:男子小用24基、男子大用14室、女子用60室、障害者用4室
上下線ともガソリンスタンド、スマートICなどを備えます。ヤマハやローランドといった楽器メーカーの拠点である浜松にちなみ、外観にはピアノをモチーフにした装飾が施されており、施設内で最新の音楽機材を体験できます。フードコートでは、浜松餃子やうな丼を提供する店舗など、地元浜松の店舗が多く出店しています。
長篠設楽原PA(愛知県新城市)●下り線
・駐車場:大型61台、小型67台
・トイレ:男子小用15基、男子大用13室、女子用39室、障害者用2室
●上り線
・駐車場:大型69台、小型76台
・トイレ:男子小用15基、男子大用13室、女子用39室、障害者用2室
長篠設楽原(ながしのしたらがはら)PAは、戦国時代に織田信長・徳川家康の連合軍と武田勝頼の軍が繰り広げた「長篠設楽原の戦い」の舞台に近く、下り線の建物は織田・徳川軍、上り線は武田軍の本陣をイメージしているほか、下り線側施設からは徒歩で、小高い丘の上の織田信長本陣跡へ行くことができます。フードコートのメニューや土産物も、合戦にちなんだものが多数見られます。

織田信長本陣跡から長篠設楽原PA下り線を望む(2020年2月、中島洋平撮影)。
岡崎SA(愛知県岡崎市)
●下り線
・駐車場:大型78台、小型207台
・トイレ:男子小用24基、男子大用16室、女子用66室、障害者用2室
●上り線
・駐車場:大型68台、小型201台
・トイレ:男子小用24基、男子大用16室、女子用66室、障害者用2室
清水PAと同様、上りと下りで共用の上下集約型PAですが、建物の外観が上り線側と下り線側で大きく異なり、上りは東海道岡崎宿の町屋風、下りは岡崎市に暮らす野鳥をモチーフにしたものになっています。開業当時は「NEXCO中日本最大級のSA」とうたわれており、ガソリンスタンドを併設するほか、フードコートや店舗の数も多く、岡崎の名物「八丁味噌」を使ったメニューや商品も豊富です。
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ちなみに昨今、新東名を中心に駐車マス不足が健在化しており、駿河湾沼津SAの下り線や、静岡SA上り線、浜松SA上り線では2019年以降、駐車スペースが大幅に拡張されました。また新東名は御殿場JCTだけでなく、清水連絡路(新清水JCT~清水JCT)や引佐(いなさ)連絡路(浜松いなさJCT~三ケ日JCT)を介しても東名と相互につながっているので、目的地によっては、東名にあるSA・PAの利用を検討するのもよいでしょう。