東京23区内を走る都営バスの運賃は基本的に、乗車区間によらず片道210円ですが、なかには運行距離10km以上、1時間を超えるような長い路線も。日常的な移動だけでなく、鉄道不通時の代替にも役立ちます。

都バス23区内最長路線は18km超え

 東京23区内における都営バスの運賃は2020年3月現在、一部の路線を除き、乗車区間によらず1回210円です。乗車区間が長くなるほど運行コストが高くなることもあり、数キロ程度の短い路線が主流ですが、なかには10km以上を結ぶ路線もあります。多摩地域で運行している対距離制運賃とは異なり、どこまでも210円で乗ることができる都営バス23区内路線の、長大路線を5つ紹介します。

王78:新宿駅西口~王子駅前

・おもな経由地:中野坂上、高円寺陸橋、野方駅北口、中板橋駅入口、大和町、北区神谷町
・運行距離:約18km

「王78」は東京23区内の都営バス最長路線で、運行区間は新宿、杉並、中野、練馬、板橋、北の6区にまたがります。おもに環七通りの西北側を走り、山手線から放射状に延びる10以上の鉄道路線と交わります。本数は日中1時間あたり2本から3本、所要時間は1時間強ですが、時間帯や道路状況によっては90分近くかかることもあります。

都バス「23区内長大路線」5選 1時間乗っても210円 鉄道...の画像はこちら >>

環七通りをゆく「王78」(2020年3月、中島洋平撮影)。

 環七通りの高円寺中学校~東十条四丁目間では、関東バスと国際興業バスが共同運行する「赤31(高円寺駅~赤羽駅)」と並走し、同区間で「王78」「赤31」のどちらにも乗れる3事業者共通定期券も発行されています。なおこの「赤31」も、関東バスと国際興業バスの都内最長路線です。

 ちなみに「王78」終点の王子駅は、池袋駅東口~西新井駅前間の「王40」、池袋駅東口~浅草寿町間の「草64」など、運行距離10kmを超える長大路線が多く乗り入れています。

繁華街と郊外「まっすぐ結ぶ」「ジグザグに結ぶ」も

 都心部の繁華街や大ターミナルと、郊外の駅とを結ぶ路線に、運行距離の長いものがあります。

草39:上野松坂屋前~金町駅

・おもな経由地:上野駅前、浅草寿町、言問橋、四ツ木橋、青戸車庫、中川大橋
・運行距離:約13km

「草39」は上野や浅草から、千葉県との境をなす江戸川に近いJR常磐線の金町駅までを結ぶ路線で、言問橋~金町駅前間は水戸街道(国道6号)をひた走ります。

浅草寿町(東京メトロ銀座線 田原町駅前)~金町駅間の運行が基本で、一部の便が上野松坂屋前まで乗り入れるほか、途中の青戸車庫止まりの便もあります。

 バスはJR常磐線、京成本線、同押上線のあいだを縫うように、鉄道がやや不便な地域をつないでいます。葛飾区内から都心の繁華街へ直通する数少ないバス路線のひとつであり、水戸街道沿道の基幹的な路線といえるでしょう。

都バス「23区内長大路線」5選 1時間乗っても210円 鉄道の隙間縫う絶妙ルート

右が金町駅に停まる「草39」浅草寿町行き(2020年2月、中島洋平撮影)。

渋66:渋谷駅~阿佐ヶ谷駅前

・おもな経由地:富ヶ谷、新国立劇場前、笹塚駅、和田堀橋、新高円寺、杉並区役所前
・運行距離:約12km

「渋66」は京王バス東との共同運行路線です。都営バスと民間事業者との共同運行は、以前は多くありましたが、現在では「渋66」を含め3路線のみとなっています。日中は1時間あたり片道5本が運行されるものの、京王バス東のほうが多く運行を担当することもあり、京王の路線というイメージのほうが強いかもしれません。

 渋谷駅から代々木公園の西側にある富ヶ谷にかけては、上下線でルートが異なり、阿佐ヶ谷駅行きは井の頭通り、渋谷駅行きはその西側、東急百貨店本店前の通りを経由します。富ヶ谷から阿佐ヶ谷駅にかけては、山手通り、甲州街道、環七通り、青梅街道、中杉通りと南北・東西の通りをジグザグに走り、京王新線や東京メトロ丸の内線といった新宿に通じる鉄道沿線と、渋谷駅とを結びます。

「コ」の字形に逆「し」の字形 ルートが絶妙な長大路線

 特徴的なルート設定で2地点間を結ぶ長大路線もあります。

白61:新宿駅西口~練馬駅

・おもな経由地:曙橋、牛込柳町駅前、江戸川橋、ホテル椿山荘東京前、目白駅、南長崎二丁目
・運行距離:約14km

「白61」は、新宿駅から山手線内側の新宿区牛込地区や文京区目白台地区などを巡り、練馬駅(西武池袋線、都営大江戸線など)へ至る路線で、そのルートは地図上で「コ」の字形を描きます。2018年度の1日あたり乗車人員は1万4279人と、都営バスで7番目の多さです。

 全区間の通し運行のほか、ホテル椿山荘東京から目白駅や練馬車庫まで、といった区間運行も行われています。なお練馬側はもともと西武池袋線 桜台駅近くの練馬車庫が起終点でしたが、2013(平成25)年、大泉学園~新江古田間の「新江62」系統が廃止され、その際に「白61」の練馬車庫~練馬駅間が延長されました。ただし練馬駅まで乗り入れるのは1時間に1本程度です。

都バス「23区内長大路線」5選 1時間乗っても210円 鉄道の隙間縫う絶妙ルート

ホテル椿山荘東京行きの「白61」は、ホテルの敷地内まで乗り入れる(2020年3月、中島洋平撮影)。

業10:新橋~とうきょうスカイツリー駅

・おもな経由地:銀座四丁目、勝どき駅前、豊洲駅前、木場駅、東京都現代美術館前、菊川駅前
・運行距離:約13km

「業10」は新橋、築地から晴海、豊洲といった臨海部を結び、江東区内の枝川二丁目からは三ツ目通りをまっすぐ北上するという経路で、地図では「し」の字を反転したようなルートを描きます。全線の通し運行のほか、ルート外の江東区東雲(しののめ)地区にある深川車庫に入出庫する便なども多く設定されています。

 タワーマンションが立ち並ぶ臨海部と都心部の輸送、そして、かねてから鉄道の不足が指摘されている江東区、墨田区における南北方向の輸送という2面性を持ち、2018年度の1日あたり乗車人員は1万4787人と、都営バスで6番目に利用者の多い路線です。なお、東京スカイツリーの開業後、終点のバス停名は「業平橋(なりひらばし)駅」から「とうきょうスカイツリー駅前」に変更されましたが、系統番号はそのままです。

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 ちなみに、都営バスの最長路線は、多摩地区で運行している「梅70」花小金井北口~青梅車庫前の約28kmです。

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