新型コロナ感染拡大で大きく影響を受けているのは航空会社や空港だけではなく、博物館も同様です。存続危機に瀕しクラウドファンディングで資金調達を募る千葉の航空科学博物館は、どのような施設で、どのような状況なのでしょうか。
世界中で感染拡大が続く新型コロナウイルスの影響を受け、日本でも緊急事態宣言が発出され、外出自粛が推奨されています。飛行機の減便や運休も相次いでいますが、航空業界で影響を色濃く受けているのは、もちろん航空会社や空港だけではありません。
成田空港のA滑走路のかたわらにある、航空科学博物館(千葉県芝山町)が2020年5月1日(金)、同社の公式Twitterにて、インターネットを通じて有志から資金調達を図る「クラウドファンディング」を近々行う予定であると表明しました。同館は緊急事態宣言を受け、当面のあいだ休館を決めています。
航空科学博物館の館内に設置されている「ジャンボ」8分の1スケール大型可動模型(2019年7月、乗りものニュース編集部撮影)。
航空科学博物館が投稿したクラウドファンディングサイト、CAMPFIREには次のようなメッセージが掲げられています。
「当面の間の臨時休館で入館者数は9割減! 入館料に加え売店・レストランの収入がほぼ0となりました。このままでは航空科学博物館が存続できなくなってしまいます」
同館が誕生したのは1989(平成元)年のことで、国内初となる航空専門の博物館です。また、2019年に開館30周年にあわせて館内を大幅にリニューアルし、2020年にはLCC(格安航空会社)である春秋航空日本の訓練施設も入り、ますます設備の充実が図られる予定でした。
屋外には、戦後初の国産ターボプロップ旅客機、YS-11の試作1号機や、「ジャンボ」ことボーイング747型機の実機の機首部分「セクション41」が展示され、それらの機内にも入れることが目玉のひとつとなっています。
また成田空港で離着陸する飛行機を屋内、屋外から眺められる展望台が数か所設置され、飛行機に関する専門書や古い文献を読むことができる図書室などもあり、飛行機にまつわるユニークな体験ができる、国内有数の施設といえるでしょう。
館内充実の航空科学博物館 それゆえ維持には大出費のものも航空科学博物館の館内にはダグラスDC-8型機、ボーイング777型機、737MAX型機など数モデルのフライトシミュレーターや、ボーイング747の客室モックアップ(原寸大模型)にビジネスクラスやファーストクラスシートを設置し疑似搭乗体験ができるエリアのほか、「ジャンボ」のシミュレーターから8分の1スケール大型可動模型を動かし、壁と床をスクリーンに見立てたパノラマビジョンを用いて操縦体験ができるといった、体験型展示も充実しています。

航空科学博物館の名物のひとつ、ボーイング747「セクション41」(2019年7月、乗りものニュース編集部撮影)。
ところが、こういった設備を維持していくのは、大きなコストもかかるようです。航空科学博物館のスタッフは「展示物のなかには、維持するためのコストが数千万円かかるものもあります。コスト削減のためメンテナンスを先延ばししているものもあり、現在は職員ができる範囲で整備しているところです」と話します。
もし今回のクラウドファンディングでの支援がない場合、どれくらい運営が続けられるのか、という点について、同館スタッフは「新型コロナウイルス終息の時期により入館者の回復も不透明のため、現在は予測ができない状態」としつつ、「大変危機的状況に陥っております」といいます。
クラウドファンディングで有志から集められた資金は、博物館の運営や展示物、建物の修繕費に充てられる予定で、出資額によって返礼が受けられます。たとえば最低額の3000円の場合、有効期限のない招待券(大人・子ども共通)1枚、10万円で1年間入館フリーになる年間パスポートと博物館オリジナルグッズなど、30万円を超える出資者には、2年間分の年間パスポートやグッズなどのほか、ボーイング737MAXのフライトシミュレーターを1時間インストラクター付きで体験できる権利などが提供される予定です。