JR九州が、そのうち特に利用者が少ない線区について、収支を初めて発表しました。利用者数が、JR発足時と比べ8割以上の減少になっている線区もあるとのこと。
道路整備の進展や人口減少などを背景に、鉄道ローカル線の輸送人員減少と、その維持が全国的な課題になっているなか、JR九州が2020年5月27日(水)、同社各線区のうち、「輸送人員が少ない線区(平均通過人員が2000人/日未満の線区)」についてのみ、その収支を初めて発表しました(14路線20区間)。
このうち、赤字額が最も大きいのは日豊本線の佐伯~延岡間58.4kmで、2018年度は3億9600万円の営業収益に対し、営業費は10億7000万円。営業損益は6億7400万円のマイナスでした。
日豊本線は九州の東側を南北に結ぶ幹線ですが、そのうちの佐伯~延岡間は人口もその流動も少ない大分・宮崎県境を含み、列車が1日3本しか発着しない駅もあります(特急などの通過列車はほかにあり)。
列車が1日3本しか発着しない日豊本線の宗太郎駅(2018年、恵 知仁撮影)。
また国鉄が分割民営化され、JR九州が発足した1987(昭和62)年度と比べ、このたび収支が発表された各線区は、ほとんどで輸送人員が大きく減少しています。
肥薩線の熊本・宮崎・鹿児島県境にあたる人吉~吉松間35.0kmは、1987年度は569人だった1日あたりの平均通過人員が、2018年度は105人と82%もの減少(営業損益は2億6100万円の赤字)。先述の佐伯~延岡間も74%の減少です。
JR九州 収支公表の狙いは?なぜいまJR九州が、その全線区ではなく、「輸送人員が少ない線区(平均通過人員が2000人/日未満の線区)」についてのみ、収支を発表したのでしょうか。
JR九州の青柳俊彦社長は、こうして厳しい現状を沿線の自治体や人々と共有することをきっかけに、皆で一緒に考え、再び地域の交通手段として鉄道を選んでもらい、それを持続可能なものにしていきたいと、その狙いを話します。
「自治体の皆さまと一緒に線区を活用していくための検討会などを開き、沿線住民のみなさまも含めて、是非とも一緒に取組みをお願いしたいと考えています」(JR九州 青柳俊彦社長)
またJR九州によると、これは「路線の廃止や上下分離、財政負担等をお願いするためのものではない」とのこと。

肥薩線の矢岳駅に停車する観光列車「いさぶろう・しんぺい」(2017年、恵 知仁撮影)。
近年はこのように、状況を動かす一歩として、鉄道会社が「厳しさ」をあえて発表する例がしばしば見られます。鉄道会社と沿線自治体などにおけるひとつの駆け引き、と受け止められる場合もあるかもしれませんが、“特効薬”が存在しないなか、両者がこれをいかに「きっかけ」にしていけるか、注目したいところです。