JR線に続き、2022年度には東急線とも直通する相鉄線。うち、いずみ野線では2030年を目途に、湘南台駅から西へ倉見駅までの延伸計画があります。
神奈川県内に40km弱の路線網を持つ大手私鉄「相模鉄道」。2019年11月にはJR埼京線と直通運転が開始され、乗り換えなしに渋谷駅や新宿駅といった、東京都心へと行けるようになりました。これにより、横浜市内の二俣川駅と新宿駅のあいだを、これまでの横浜駅乗り換えルートより10分程度早い、最短44分で結んでいます。
相鉄20000系電車。
これに続いて2022年度後半には、新横浜駅を経由する形で、2019年11月に開業した羽沢横浜国大駅と、東急東横線、目黒線の日吉駅のあいだに約10kmの路線が新設され、東急電鉄との直通運転も始まる予定です。相模鉄道のホームページによれば、これにより二俣川駅と目黒駅のあいだの移動は、現状の約54分よりも16分早い、約38分に短縮されるとしています。
さらに、相模鉄道では自社路線の延長も計画されています。2020年現在、相模鉄道には横浜駅と海老名駅を結ぶ「本線」と、二俣川駅と藤沢市の湘南台駅をつなぐ「いずみ野線」というふたつの旅客路線があります。このうち、「いずみ野線」の湘南台駅からさらに西へ、JR相模線の倉見駅(寒川町)まで約8km延伸する計画があります。
計画のうち湘南台駅からの3.3kmの区間では、藤沢市内の石川地区と遠藤地区に2駅を新設するとしています。具体的には、石川地区ではショッピングモール「イトーヨーカドー湘南台店」付近に、遠藤地区では、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスに隣接する形での設置が予定されています。
慶應大学の3キャンパスがひとつの線路でつながるこの「いずみ野線」の延伸で、沿線はどのように変わるのでしょうか。まず、東急線の日吉駅へ直通することが予想され、慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパスと日吉キャンパス、さらには東急目黒線に接続する都営三田線の三田駅にある、三田キャンパスの3つが1本の線路で結ばれることが期待されます。
東急線内を走行する都営三田線の6300形電車(画像:写真AC)。
現状では湘南藤沢キャンパスに行くためには、湘南台駅か、JR東海道線の辻堂駅からバスに乗り換える必要があり、ほかのキャンパスとの往来は容易ではないのが特徴です。湘南藤沢キャンパスは頭文字をとって「SFC」と称され、慶應のなかでも独自色が強いキャンパスとしても知られています。それが相鉄いずみ野線の延伸によって、他キャンパスの学生が相互に授業を履修するなど積極的な往来が起こり、キャンパスのカラーが少し変わるかもしれません。
もうひとつ、未来の話ですが、終点の倉見駅にも変化が起こることが予想できます。それはまず、2027年の開業を目指しているJR東海の「リニア中央新幹線」との接続です。リニア中央新幹線は、始発駅である品川駅の隣の駅として、橋本駅(相模原市)を計画しています。
このような将来を見据え、東海道新幹線とリニア中央新幹線の接続地点ともなる倉見駅のそばに、東海道新幹線の新駅を誘致する計画も立てられています。倉見駅はちょうど新幹線に隣接しており、ここに新駅ができるとなれば、倉見駅は相模地域の中心駅となることも考えられます。
JR東海は新駅設置の要望に対して、「現時点では新駅の設置は極めて困難」としながらも、「リニア中央新幹線が開業し、東海道新幹線のダイヤ構成に余裕ができれば新駅設置の余地が生まれる可能性もある」と2020年5月に回答しており、リニア中央新幹線が開業してからの設置には含みを持たせています。
リニア中央新幹線のL0系試験車(2018年10月、恵 知仁撮影)。
こうした将来性をもとに神奈川県などでは、倉見地区と相模川を挟んで反対側の平塚市大神地区とを道路橋で結び、一体的な商業圏の形成を目指しています。
道路交通の面においては、倉見地区は圏央道が走っており、新東名を結ぶ海老名南JCTにも隣接しています。「ツインシティ整備計画」が進むことで、道路交通、鉄道交通の双方において、住宅や産業の集積地になることが期待されます。将来的な引っ越し先の候補にも考えられるかもしれません。