新型コロナの影響で、JALが一部CAを対象に「Zoom」を使ったリモート研修を始めています。研修では、受講者だけではなく講師の選定にも工夫がされていました。

また「Zoom」を使ったことで、思わぬ発見もあったようです。

1800人が受講対象者 JAL「CAあるある」の悩みを洗い出し…

 JAL(日本航空)が、パソコンやスマートフォンから会議やセミナーを行うことのできるアプリケーション「Zoom」を使った、CA(客室乗務員)のリモート研修を、5月上旬より実施しています。2020年6月16日(火)、その様子が報道陣に向け公開されました。

 研修を受けるのは、およそ7000人いる同社CAのなかから、実際に乗務を経験している若手CA約1800人が対象です(今後の動向により対象者数に変動あり)。対象者は自宅などからZoomを使って参加します。

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報道陣に公開されたJAL「Zoom」を使用したCAのリモート研修。写真のCAはファシリテーター(2020年6月16日、乗りものニュース編集部撮影)。

 今回取材で公開されたのは、おもに入社3年から4年目で、国内線および国際線で乗務実績を積んだのち、JALの国際線最上級クラス「ファーストクラス」の乗務資格を持って半年ほど経過したCAの研修でした。

 このリモート研修は、朝9時から夕方17時半まで1日かけ行われます。マネジャーのほか、いわゆる“講師”として「ファシリテーター」と呼ばれる現役CAも参加します。こちらはつい半年ほど前まで授業を受ける側だったといい、近い世代の人を置くことで、それぞれのフェーズの受講生の「あるある」な悩みを共有しやすいよう工夫されているとのことです。

 授業では、受講しているCAそれぞれが発言し課題点の洗い出しをするほか、ファシリテーターなどが利用者役となり、実際の国際線フライトを再現し、サービスのロールプレイを行うなどの内容が組まれています。

頼れる先輩ファシリテーター Zoomならではスキル向上も

 JALによると、前述したファーストクラスのリモート研修を履修しているのは、CAの現場にある程度慣れ、同クラスの乗務資格は取得できたものの、まだ入社数年の若手であるといいます。にもかかわらず、いわゆるステータスの高い利用者が多いなかで乗務するにあたり、これから「JALらしい付加価値の高いサービス」を提供しなければならないことや、機内食の盛り付け手順やバリエーションといったサービスを覚える量も膨大であるなど、大きなプレッシャーを感じるものといいます。

 また、資格を得たからといって実際に頻繁に乗務するわけではないとも。加えて、新型コロナによる国際線減便の影響を受け乗務の機会は一層減っており、履修生の大半はまだファーストクラス乗務を経験していないとのことです。

 こうした履修生に、画面の向こうから身近な先輩として悩みを共有しつつ、トップダウンで答えを教えるわけではなく、道筋を示してあげる、というのがファシリテーターの役割なのだそうです。

新型コロナ下JALのCA在宅研修 「Zoom授業」で思わぬ効果アリ? 講師のチョイスも工夫

リモート授業を企画したJAL客室品質企画部 岡部有里マネジャー。実際にCAとして乗務することもあるという(2020年6月16日、乗りものニュース編集部撮影)。

 この研修を企画したJALの客室品質企画部 岡部有里マネジャーによると、Zoomを使うことにより、新たな効果も期待できるといいます。

コロナ禍で企画されたこのZoomの研修では、言葉遣いや表情などをメインにチェックします。使ったことがある方ならお分かりになるかと思いますが、カメラに映った自分の顔を見ることができるのです。なかなかサービスを提供しているときの自分の顔を見ることはできないので、ロールプレイや今後のサービス品質の向上に、役立つ可能性があるのではと考えています」(JALの客室品質企画部 岡部有里マネジャー)

 2020年6月16日時点では、先述の1800人の対象者のうち、40クラス、約650人が6月末までに研修を完了する見込みといいます。講義後に行われたアンケートでは、受けてよかったとの反応が多いとのことです。

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