新型コロナで航空業界が異例の状況を迎えるなか、JALが株主総会を実施しました。株主からの質問もこれに関連するものが多く「国内航空会社の一本化はあるのか」「武漢チャーターはなぜANAが?」といったものが飛び出しています。
JAL(日本航空)は2020年6月19日(金)に定時株主総会を開催、株主からは、新型コロナウイルスの影響下における今後のJALや航空業界についての質問が相次ぎました。
新型コロナの影響は株主総会そのものにも及んでいます。今年のJAL株主総会はオンラインでの参加も可能としたことから、会場には昨年の半分以下の参加者が見られるにとどまりました。また、それぞれの細かな業務報告を短縮、省略し、総会の時間自体を短縮する対策も講じられています。
JALのボーイング787型機(2020年、乗りものニュース編集部撮影)。
そして株主からの質疑も、新型コロナ関連のものが多く見られました。以下はその一部抜粋です。
――新型コロナの影響もあり、日本の航空会社を一本化するという噂が少し聞こえますが、どうなのでしょうか?
他社と併合し、日本の航空会社を一本化することは全く考えていません。航空会社間の健全な競争環境は必要なことであり、これはお客様の利便性に直結することだと考えています。
――2020年1月に実施された、武漢チャーター便はなぜJALではなく、ANA(全日空)が担当したのでしょうか。
このチャーターは、もちろん私どもも協力するつもりでいました。しかし緊急性が高いなか、ANAはすでに武漢への定期便を飛ばしていました。
株主からの質問はJALそのものだけではなく、同グループで2020年6月から貨物専用便として運航開始された中長距離LCC(格安航空会社)、「ジップエア(ZIPAIR Tokyo)」にも及びました。

JALが展開するLCC「ジップエア」のボーイング787型機(2020年、乗りものニュース編集部撮影)。
――「ジップエア」などのLCCは、旅客数を多く乗せなければならないビジネスモデルですが、これは“密”になるのではないでしょうか?
密になる可能性もありますが、消毒やマスクの着用、トイレの消毒、機内食の個包装など、とれる衛生策をしっかりとりながら、旅客便開始時には安心してお乗りいただける環境を整えたいと思います。
――JALのハワイ路線は新型コロナ終息後、どのように展開していくのでしょうか。
JALとハワイは長く深い関係があり、最も重要な渡航地のひとつです。ハワイだけでも日本人の往来ができないかと関係当局と検討したこともあり、現在は往来が再開できるよう準備している段階です。新型コロナが終息後、ハワイ路線では大々的なキャンペーンを行う予定なので、ご期待ください。また、ジップエアもそこに就航させる予定となっています。
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なお、飛行機は上空でドアが閉ざされているものの、「機内の空気は実は清潔で、上空2分から3分ですべて入れ替えられるよう作られている」とJALは説明しています。
また、議長を務めたJALの赤坂祐二社長は、アフターコロナのJALの戦略として、「ジップエア」を強化する方針を示しています。
国内移動「対新幹線」問題 JALはどう説明?株主からの質問には、国内移動の際のほかの交通手段と比べて、改善や協力を要望するものも飛び出しました。
――国内の同じ区間を移動する場合、飛行機よりも、出発時刻ギリギリでも乗ることができる新幹線を選ぶ人が多いと思います。もう少し楽に飛行機に乗れるようになれば、利用者が増えるのではないでしょうか?
保安検査は年を追うごとに強化されており、時間がかかるようになっているのは事実だと思います。衛生対策のため係員に接触しないで済むようなタッチレス化とともに、セルフサービス化など新技術を使って、もっと時間のかからないように私たちも努力していきたいと思います。JALが提唱している、自動手荷物預け機などに代表されるような『スマートエアポート』の取り組みは、実はまさにそのコンセプトに基づいています。
――ヨーロッパでは、航空機と高速鉄道がコードシェアをするなどの取り組みが見られるようです。地方空港と新幹線が接続するなど、そういった取り組みをして欲しいです。
JALグループでは、地方路線はとても重視していますが、確かにすべての路線を網羅しているわけではありません。おっしゃる通り重要なポイントで、新幹線のみならず、タクシーやバスなどさまざまな交通網と協力しなければならないと思います。

JAL「第71期定時株主総会」にて、JALの赤坂祐二社長。報道陣は別室からモニターを通しての取材だった(2020年6月19日、乗りものニュース編集部撮影)。
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今回発表された2019年4月から2020年3月までのJALグループの連結決算は、営業収益が1兆4112億円、営業費用が1兆3105億円となり、営業利益は新型コロナ禍で航空需要が減退した影響を受け、前年比42.9%減となる1106億円となりました。こうしたことから、今回の株主に向けた期末配当は、無配となっています。