新型コロナで外出自粛が要請されるなか、成田市のANAスタッフが「ドライブスルーで弁当を売る」という形の地域貢献をしました。この活動が、どのように始まり、どのような経緯で大きくなったのでしょうか。
新型コロナウイルスの影響で外出自粛が要請され、航空需要も大きく減退していた2020年4月から5月、ANA(全日空)グループのひとりのスタッフが、地域貢献のためユニークな取り組みをしていました。
千葉県成田市に本社を構えるANA成田エアポートサービスの総務部に所属する川上泰弘さんは、成田空港のある成田市の青年会議所のメンバーであり、地域活性化の取り組みをしています。新型コロナの影響下、その一環として行ったのが、「ドライブスルーで弁当を売る」ことでした。
成田空港に駐機するANAの成田~ホノルル線に就航するエアバスA380型機「フライング・ホヌ」(2019年、乗りものニュース編集部撮影)。
平時であれば成田山新勝寺などの観光名所もあり、市内の飲食店は国内外からの観光客でにぎわう成田市ですが、新型コロナの影響は大きく人通りは激減。市内の飲食店はテイクアウト販売を進めるなど苦心するなか、会議所メンバーから、これに協力しようとの声が上がったといいます。
飲食店の弁当をドライブスルー形式で販売する企画を「なり弁スルー」と名付け、川上さんもその実行委員のひとりに。「これまでにない危機といえる状況で、自分たちの住む成田のために何かできないかと考え、すぐに行動に移すというのは、なかなかできないことなのではないかと思います」と、川上さんはメンバーの「行動力の高さ」に驚いたといいます。
最初は個人で参加した「なり弁スルー」ANAも支援した経緯は?ちなみに当初、川上さんはあくまで個人的に「なり弁スルー」に参加していました。個人としてだけでなく会社としてより大きな支援をしたいと考えた川上さんは活動について会社に相談したところ、会社側はこの活動に賛同。ANA成田空港支店として協賛し、ANAオリジナル紙飛行機やANAグッズの販売に加え、社内ポータルサイトで購入を呼びかけるなどの協力をしました。

「Zoom」でインタビューに応えるANA成田エアポートサービス兼ANA成田空港支店の川上泰弘さん(2020年7月7日、乗りものニュース編集部撮影)。
「なり弁スルー」はこれまで計5回行われ、徐々に認知度も高まり売れ行きも好調に。回を重ねるにつれ、家族連れの利用者も多かったことから、オムライスやお好み焼きといった子どもも食べやすいメニューなども取り入れるなど工夫も凝らしたとのことです。
航空会社が弁当販売に協力するというユニークともいえる取り組みですが、川上さんは逆に励まされることもあったといいます。
「お客様から掛けられた『がんばってください』の一言で疲れが吹き飛びました。街の飲食店や地域の方々を応援するための企画なのに、自分たちが応援されたことは一番印象に残っています。先ほど言った行動力がある人も多いのですが、成田市は温かい人が多いイメージですね」(川上泰弘さん)
なおこの「なり弁スルー」、感染対策も徹底していたとのこと。スタッフのマスクや手袋の着用のほか、待ち時間にメニュー表を利用者が回覧する方式ではなく、スタッフがメニュー表を持って利用者の車内から見えるようにすることで、「お弁当とお金の受け渡し以外、接触をしないように」工夫したといいます。