首都圏を担任エリアとする陸上自衛隊第1師団において、令和への改元後、初となる偵察用オートバイの競技会が行われました。自動車やトラックでは行けない悪路や狭隘路を2輪で走破する技術を競い合いました。
豪雨や地震などで自衛隊の災害派遣が毎年のように行われるなか、各部隊が保有する偵察用オートバイは、情報収集や連絡任務のために、ときには獣道などを踏破することが求められます。そのようなときに隊員の技術が伴っていないと任務達成は難しいため、スキルアップを目的に、2020年6月29日、陸上自衛隊朝霞訓練場において「令和2年度第1回オートバイ競技会」が開催されました。
コースの途中でジャンプするオートバイ隊員(2020年6月、中野英幸撮影)。
実施したのは首都圏を警備担任区域として受け持つ第1師団に所属する第1偵察隊で、競技会の実施は令和初だけでなく、第1師団としても十数年ぶりの開催とのことです。そのため第1偵察隊の隊員が主体ではあるものの、第1師団所属の他の部隊や、教育訓練部隊である機甲教導連隊からも参加していました。
オートバイ用のコースは訓練場の一角に設けられています。スラロームや一本橋といった教習所などでお馴染みのものから、ウィリーやブレーキターン、ジャンプなどの自衛隊ならではのものまで様々な課題を順番にクリアしていくポイント制で、総数42名が頂点目指して競っていました。
いざ競技が始まると、隊員たちは悪戦苦闘。なぜならダートコースでブレーキやアクセルワークがシビアなうえに、前日まで降っていた雨によって輪をかけて滑りやすくなっていたからです。そのため、ベテランの年配隊員ですら普段と勝手の違う訓練場のコンディションに難儀していました。
偵察オートバイは軽快さがウリ 戦闘だけでなく災害派遣でも活動偵察用オートバイは、その名のとおり偵察活動のほか、伝令のような部隊間の連絡などにも使います。全国に15個ある師団および旅団の偵察隊のほかに、戦車部隊や、他国でいう歩兵に相当する普通科部隊、砲兵に相当する特科部隊、工兵に相当する施設科部隊などにも、情報収集や連絡用として少数ずつ偵察用オートバイが配備されています。

タイヤを乗り越えるためにウィリーするオートバイ隊員(2020年6月、中野英幸撮影)。
最近ではドローン(UAV)も情報収集に多用されていますが、活動時間の長さや隠密性などの面で、隊員(兵士)が直接情報収集する必要性はまだまだ変わらないようです。オートバイはほかの車両と比べると防御力の面では劣り、燃料タンクもコンパクトなため単独での航続距離も短いですが、小柄であるがゆえに隠密性が高く、ほかの車両が入っていけないような狭小地を走り抜けることができます。
また小柄で軽量なため、輸送ヘリコプターよりも小さなUH-1J汎用ヘリコプターに載せることも可能、川や海であっても、近距離であれば手漕ぎボートで運ぶことができます。
この機動力の高さこそ、ほかの車両にはないオートバイ特有のメリットといえるでしょう。その点で、馬に乗って長距離を走り回る、昔の騎兵と似た性格ともいえるのかもしれません。
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