現在、品川駅の8番線は定期列車の発着がありません。案内板には「臨時ホーム」と書かれていますが、どのような目的で造られ活用されているのでしょうか。
2015年の上野東京ラインの開業後、常磐線の電車は品川駅まで乗り入れるようになり、新たに9・10・11番線が常磐線用の発着ホームとして活用されるようになりました。
しかし9番線の隣である8番線は「臨時ホーム」と案内されており、定期列車の発着はありません。実は上野東京ラインの開業以前から7~10番線は定期列車の発着がない臨時ホームとして使われていました。
臨時ホームは8番線。コンコースの案内看板に数字のみが掲示されている(2020年8月、乗りものニュース編集部撮影)。
もともとこれらのホームは戦前に、横須賀線と京浜東北線の急行列車「京浜急行線」を走らせるために造られたものですが、第二次世界大戦に突入し、京浜急行線の計画は頓挫。残ってしまったホームは1960年代から1970年代にかけて、多客時に臨時列車を発着させるために活用されました。
たとえば東京駅や上野駅が列車で満杯の際、ホームに余裕のある品川駅発の臨時列車を仕立て、帰省客が上野駅や東京駅に集中しないようにしていました。東海道本線の列車だけでなく、現在の上野東京ラインに相当する路線を経由して、上越線方面の臨時列車も設定されたことがあります。
「大垣夜行」などの臨時列車が発着 イベントに活用されることも東北新幹線の工事が始まり、品川駅から東北方面の線路が分断された後も、夜行急行「銀河52号」のように品川駅到着の臨時列車が設定されました。ほかにも夜行快速「ムーンライトながら」の前身である大垣行きの夜行が混雑する時期は品川始発の救済臨時列車が設定されるなど、ホームの余裕を存分に活用していました。

上野東京ライン開業までは7~10番線が臨時ホームだった。ときには新車披露のイベントなども開催された(2009年8月、児山 計撮影)。
JRになってからは空いている臨時ホームを利用して、新型車両のお披露目や鉄道イベントなどが開催されたこともあります。また列車の運用面でも、ダイヤが乱れ東京駅が満杯になってしまったときに、品川駅8番線を活用することで列車の渋滞を多少なりとも緩和するといった役割も果たします。たとえば寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」は東京駅到着が7時08分ですが、遅延して到着時刻がラッシュ時間帯と重なりそうな場合は、品川駅の8番線に入線し運転を打ち切るといった措置が取られることがあります。
このように普段は列車の発着がない臨時ホームですが、いざというときにはなくてはならないホームへと「変身」するのです。