アメリカ軍の戦闘機の制式名称につく、いわゆるFナンバー。F-15などが広く知られる一方で、日本ではほぼ知られていないものも。

たとえば空自でも採用されたF-86とF-103のあいだには、ミサイルであるとしかいえないものもありました。

戦闘機の「Fナンバー」は順番どおりに振られている

 1954(昭和29)年に発足した航空自衛隊が最初に導入した戦闘機は、その少し前の朝鮮戦争においてアメリカ空軍の主力であった亜音速機、F-86「セイバー」でした。その8年後、航空自衛隊は2倍以上の速度性能を持ったマッハ2級ジェット戦闘機F-104「スターファイター」を導入します。

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世界初の実用超音速機、F-100「スーパーセイバー」。いわゆる「センチュリーシリーズ」の1機種目(画像:アメリカ空軍)。

 わずかな期間で驚くべき性能向上を実現したジェット戦闘機ですが、それと同時に戦闘機(Fighter)を意味する機体名の番号が「F-86」から「F-104」へ18個もジャンプしています。

この航空自衛隊戦闘機の「F-xx」という表記は、アメリカ空軍の命名規則をほぼそのまま継承したものであり、そしてアメリカ軍において「Fナンバー」は、基本的に開発計画ごとに1機種ずつ割り当てられます。

 つまり「F-87」から「F-103」まで、あいだを埋める「Fナンバー」を与えられた機種が存在しています。ところがこの期間の戦闘機は日本においてあまり知られていません。いったいどのような機種があったのでしょうか。

日本ではあまり知られていない「Fナンバー」その内訳は…?

 実は量産されなかったものが7機種(F-87/88/90/91/92/93/103)もあり、完全に新規設計で量産に至ったものは以下の4機種のみでした。

・F-89「スコーピオン」:104発ものロケット弾で武装した亜音速迎撃戦闘機。


・F-100「スーパーセイバー」:世界初の超音速機だが実質爆撃機化。
・F-101「ヴードゥー」:成功といえるかやや微妙ながら偵察機化。
・F-102「デルタダガー」:米本土を守った超音速迎撃戦闘機。

 加えて、既存機の改良型でありながらも新たにFナンバーが与えられたものが1機種あります。

・F-94「スターファイア」:F-80が原型の迎撃戦闘機。世界初のアフターバーナー搭載。

戦闘機につく「Fナンバー」 空自機でおなじみF-86とF-104のあいだにどんな飛行機が?

F-99「ボマーク」無人戦闘機。事実上の地対空ミサイルであり特に戦闘機パイロットたちは戦闘機と呼ぶことを嫌ったとされる。のちCIM-10となる(画像:アメリカ空軍)。

 さらに、改名により欠番となったものが5機種ありました。

・F-95:F-86が原型であったためF-86D「セイバードッグ」へ改名、量産。
・F-96:F-84が原型であったためF-84F「サンダーストリーク」へ改名、量産。


・F-97:F-94が原型であったためF-94C「スターファイア」へ改名、量産。
・F-98:AAM-A-2空対空ミサイルから改名され割り当てられ、GAR-1「ファルコン」へ改名され、さらにAIM-4へ改名、量産。
・F-99:地対空ミサイルに割り当てられのちにIM-99「ボマーク」へ改名され、さらにCIM-10へ改名、量産。

 以上のように17機種中、名前が残ったものは実質F-80であるF-94を含めても、たったの5機種しかありませんでした。この時期のアメリカ空軍はかなり気前よくFナンバーを割り振っていたことが事情を分かりにくくしています。

1950年代の無人戦闘機(実質ミサイル)にもFナンバー

 なかでも、どうして戦闘機扱いされたのかよくわからないのが、対空ミサイルであるF-98(AIM-4)とF-99(CIM-10)です。

これらは「無人戦闘機」であるという理由だったとされます。しかしFナンバーが割り当てられていたころから「無人戦闘機」よりも普通に「ミサイル」と呼ばれており、さすがにこの解釈は無理があったのか、すぐに改名されてしまいます。

戦闘機につく「Fナンバー」 空自機でおなじみF-86とF-104のあいだにどんな飛行機が?

F-89H「スコーピオン」。翼端のポッドに見えるのがF-98(AIM-4)「ファルコン」短射程空対空ミサイル(画像:アメリカ空軍)。

 ただF-98やF-99は、標的を捕捉し自律的に飛行し航空機を撃墜するための飛翔体ですから、いま風にいえば「自爆型ドローン」そのものです。無人戦闘機と見なせないこともありません。

特にF-99は、見た目が現代の新型無人戦闘機と紹介してもほとんど違和感はありませんし、速度性能はマッハ2.8、航続距離約400km、弾頭は威力10キロトン(広島型の半分)の核弾頭であり、その衝撃波は数km内の敵爆撃機を破壊する能力がありましたから、数字だけを見ると恐るべき高性能無人戦闘機だったといえます。

 2020年現在、攻撃能力をもった無人機や自爆型ドローンは当たり前の存在になりましたが、いまのところは有人戦闘機と空中戦が可能な「無人戦闘機」といえるだけの機種はまだありません。しかしそれももはや時間の問題です。未来の無人戦闘機は再び栄光の「Fナンバー」を手にすることができるでしょうか。