2024年度「葬儀業」業績動向・倒産休廃業調査


 ことし6月、内閣府より「令和7年版高齢社会白書」が公表された。白書では、2039年まで死亡数が増加し、2040年の死亡者数は164万人に達すると推計している。高齢化が進み、終活ブームも広がる中、コロナ禍を契機に家族葬など葬儀業界には新たな潮流も生まれている。

全国の主な葬儀会社505社は、ブランド力の高い老舗企業を中心に、売上高を堅調に伸ばしていることがわかった。
 ただ、新たに設立された法人数が、休廃業・解散や倒産を上回り、市場は厳しい競争が繰り広げられている。
 
 東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(約440万社)から、全国の主な葬儀会社505社を抽出し、直近3期を分析した。
 505社の2024年度の売上高は4,051億5,200万円(前期比4.6%増)、最終利益は268億6,900万円(同21.6%増)と増収増益だった。葬儀業界は拡大を維持するが、2024年の休廃業・解散は66件、倒産は8件で合計74件に達し、2013年以降で最多を更新した。
 一方、2024年の葬儀業の新設法人数は105件(同8.6%減)と減少したが、新規参入が倒産などの市場退出を上回る状況が続き、葬儀業界の競争は激しさを増している。
 コロナ禍以降、大人数が参列した一般葬は、親族など少人数の家族葬が取って代わり、葬儀単価も低価格化が進んでいる。さらに、通夜を省いた「一日葬」や火葬のみで取り仕切られる「直葬」など、故人の弔い方も多様化し、葬儀業界は変革期を迎えている。
 コロナ禍で減少していた会葬人数は戻りつつある。だが、実質賃金が伸び悩み、葬儀費用を抑える動きが広がっている。今後、家族葬など新たなトレンドの取り込みが強まると、葬儀業界はこれまで以上にシェア拡大にしのぎを削ることになる。

※ 東京商工リサーチの企業データベース(約440万社)から、「葬儀業」を対象に、2024年度の業績(2024年4月~2025年3月期)を最新期とし、3期連続で業績が判明した505社を抽出、分析した。

主要505社 売上高は2年連続で増加

 主な葬儀業505社の売上高は、2022年度が3,580億3,100万円、2023年度が3,870億8,100万円(前期比8.1%増)、2024年度が4,051億5,200万円(同4.6%増)と、伸長が続く。
 最終利益も、2022年度が182億8,900万円、2023年度が220億8,300万円(同20.7%増)、2024年度が268億6,900万円(同21.6%増)と伸びている。

「葬儀業」は老舗ブランドと新興勢力で二極化 家族葬など新たな...の画像はこちら >>


売上高5億円未満が7割超を占める

 2024年度の売上高別の最多は1億円未満で197社(構成比39.0%)。
 次いで、1~5億円未満が188社(同37.2%)、10~50億円未満が50社(同9.9%)、5~10億円未満が49社(同9.7%)と続く。
 5億円未満の小・零細事業者が385社(構成比76.2%)を占める一方で、100億円以上はわずか8社にとどまる。

「葬儀業」は老舗ブランドと新興勢力で二極化 家族葬など新たな潮流を契機に、群雄割拠
葬儀業 売上高別


業歴別 10~50年未満が最多

 業歴別は、10~50年未満が297社(構成比58.8%)で最多だった。次いで、50~100年未満が157社(同31.0%)で、100年以上の老舗企業が27社(同5.3%)と、50年以上が全体の3割超を占めた。
 一方、10年未満は24社(同4.7%)にとどまり、全国各地で老舗がブランド力を高めているのが葬儀業界の特徴といえる。

「葬儀業」は老舗ブランドと新興勢力で二極化 家族葬など新たな潮流を契機に、群雄割拠
葬儀業 業歴別


休廃業・解散、倒産は2024年が集計以降で過去最多

 2024年の休廃業・解散は66件、倒産は8件で合計74件にのぼり、 2013年以降で過去最多に達した。
 一方、2024年の新設法人数は105社で、新設法人数が市場退出を上回った。葬儀の多様化などで新規参入が相次ぎ、今後、競争激化が進んでいくだろう。

「葬儀業」は老舗ブランドと新興勢力で二極化 家族葬など新たな潮流を契機に、群雄割拠
葬儀業の休廃業・解散、倒産、新設法人数(年次推移)

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