2025年3月期 全国253信⽤⾦庫「総資⾦利ざや」調査
全国253信用金庫の2025年3月期の「総資金利ざや(中央値)」は0.19%で、前年(0.20%)より0.01ポイント低下した。前年を上回ったのは、104金庫(構成比41.1%)と4割にとどまった。
「資金運用利回り(中央値)」は1.10%(前年1.03%)と前年より0.07ポイント上昇したが、「資金調達原価率(中央値)」も0.88%(同0.82%)と前年より0.06ポイント上昇した。
信用金庫は、貸出金利が銀行より高い傾向にある。だが、日銀資料では、2025年3月の約定平均金利は1.699%(前年同月比+0.264ポイント)で、銀行(地方銀行:同+0.444ポイント、第二地銀:同+0.365ポイント)に比べ引き上げが遅れている。その一方で、預金金利は上昇が続き、総資金利ざやは前年を下回った。
253金庫のうち、「資金運用利回り」が前年を超えたのは243金庫(前年212金庫)で、9割を超えた。ただ、資金調達コストを示す「資金調達原価率」も247金庫(同160金庫)で上昇した。
「資金調達原価率」が「資金運用利回り」を上回る、いわゆる「逆ざや」は6金庫(前年2金庫)で4金庫増えた。
信用金庫は、銀行との低金利の貸出競争を避け、2022年(0.97%)を底に3年連続で「資金運用利回り」が上昇した。ただ、信用金庫の取引先は中小・零細企業が多く、貸出金利の引き上げによる影響が企業の資金繰りに直結しかねず、金利引き上げ幅は銀行に比べ小さくなっている。ただ、安定した収益確保に金利引き上げは避けられず、事業再生への支援が重要になっている。
※本調査は254金庫のうち、非公開の1金庫を除く253金庫の2025年3月期決算の「総資金利ざや」を調査した。
※「総資金利ざや」とは、「資金運用利回り」-「資金調達原価率」で算出され、収益を示す指標の一つ。貸出金や有価証券の利息などを指す「資金運用利回り」が、人件費や資金調達に要したコストの「資金調達原価率」を下回ると、貸出や運用で利益が出ていない「逆ざや」となる。
※2017年3月期以前は、主要152金庫の数値を参考までに記載した。
「逆ざや」は6金庫に増加
253金庫のうち、2025年3月期に「総資金利ざや」がマイナス、いわゆる「逆ざや」は6金庫(前年2金庫)で、3年ぶりに前年を上回った。
「総資金利ざや」の分布は、最多が「0.1%以上0.2%未満」の97金庫(構成比38.3%)で、前年の92金庫から5金庫増加した。次いで、「0.2%以上0.3%未満」の59金庫(前年64金庫)、「0.3%以上0.4%未満」の33金庫(同37金庫)だった。
「資金運用利回り」上昇が9割超の243金庫
253金庫の2025年3月期「資金運用利回り(中央値)」は、1.10%だった。前年の1.03%から0.07ポイント上昇した。
253金庫のうち、「資金運用利回り」の上昇は243金庫(前年212金庫)で、全体の96.0%を占めた。
一方、低下は6金庫(同32金庫)、同水準は4金庫(同9金庫)。
「資金運用利回り」の分布は、最多が「0.9%以上1.0%未満」の52金庫(同57金庫)。以下、「1.1%以上1.2%未満」47金庫(同32金庫)、「1.0%以上1.1%未満」44金庫(同51金庫)の順。
マイナス金利政策の解除以降、資金運用利回りが好転し、1.1%以上から上のレンジで増加が顕著となった。
