船釣りで釣れる寒サバや、スーパーなどで売られている脂が乗ったサバに比べると、波止で釣れるサバは脂の乗りも少なく、ちょっと物足りないイメージがある。ところが下処理と料理法次第で、絶品の身に生まれかわる。

今回はそんな重要な下処理の方法とオススメ料理を2つ紹介したい。

(アイキャッチ画像提供:WEBライター・伴野慶幸)

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波止サバの味はイマイチ?

新鮮なサバを手に入れられるのは釣り人の特権。ところが釣ったサバを家に持ち帰って料理してみたら、何かが足りない。パサパサして美味しくなかった。そんな残念な経験をした釣り人はけっこういるのではないだろうか。

船釣りで釣れる丸々と太ったサバと違い、波止釣りで釣れるサバは最長でも40cm余り。30cm前後の中サバや、ファミリーフィッシングで釣れる小サバとなると、脂の乗りが足りず旨味も劣るのが正直なところだろう。

漁師の獲るサバやノルウェー産の輸入サバは、いわばプロの食材。鮮度では断然優れているのに、波止釣りのサバに勝ち目はないのだろうか。

せっかくの釣りの楽しい思い出を、食卓で残念な結果に終わらせたくない、そんな方におすすめの波止釣りのサバ(以下「波止サバ」)を美味しく食べる料理法を紹介してみたい。

釣り場での素早い下処理が重要

サバが傷みやすい魚なのはご存じの通り。波止サバを美味しく食べようと思えば、鮮度の確保が絶対条件だ。波止サバの下ごしらえは釣った瞬間からスタートしていると思ってほしい。

『波止サバ』は美味しく無いはウソ? 絶品料理への道は下処理にアリ
しっかりと下処理をしたサバ(提供:WEBライター・伴野慶幸)

まずは釣り上げた後の釣り場での処理方法から紹介しよう。

1、釣ったら即、エラブタの中にナイフの刃を差し入れて、エラを切りつつ骨まで刃先を入れて即〆する。

2、肛門から頭に向けて、ナイフで一気に切り開き、エラと内臓を全て取り去る。

3、空にした腹の中とエラ蓋の中を、海水バケツの中で指洗いするか、タオルで拭き掃除する。

『波止サバ』は美味しく無いはウソ? 絶品料理への道は下処理にアリ
腹の中はきれいに掃除する(提供:WEBライター・伴野慶幸)

4、氷で冷やした海水の中に魚を入れて保存。

この4段階をいかに早く済ませるかでサバの鮮度確保の度合いが決まる。サバの頭を上向きにねじ上げて首の骨を折るサバ折りで結構済ませがちだが、血が身に回って鮮度確保の手段としては今一歩といえる。

群れが回ってきて釣れ盛っている時間帯を逃したくない場合でも、即〆と血抜きは一体と考えて、即〆した直後に海水の入ったバケツに頭から突っ込んで血抜きするところまでは、たとえ当座の策であっても施しておきたい。

自宅での下処理

自宅に持ち帰る前に、釣り場で大半の下処理は済ませているが、持ち帰り後すぐに切り分けてはいけない。次は自宅に持ち帰った後、身を切り分ける前にしておきたい処理について・・・だ。

1、魚体を水洗いした後、腹とエラ蓋の中を布巾かペーパータオルできれいに拭き掃除する。

2、出刃包丁の刃先でウロコを取る。(粒子状の細かいウロコなので、ウロコ取り道具は不向き)

3、魚体の水分を布巾かペーパータオルで拭き取る。

これらの処理を忘れると、調理後の味や舌ざわりがかわってしまうので注意してほしい。

釣り場と帰宅直後にしておきたい全ての下処理を済ませたら、身とアラに切り分ける。波止サバは大きくとも40cm余りまでのサイズなので、三枚おろしが特に必要な料理でなければ、筒切りで十分。

頭はエラブタの少し下から、尾は付け根から少し上の部分で、それぞれ切り落とす。アラはダシ取りに使うので、わざと身を少し付けて切り落とすのがポイントだ。40cm級の大きめの魚体なら、頭は梨割りにしたい。

「波止サバ」オススメレシピ

ここまでできたらいよいよ料理に入る。ここからは私が普段よくしている波止サバ料理のレシピを紹介しよう。

なお、今回料理に用いるのは35~40cmの波止サバをイメージしている。

サバ汁

アラを使ってダシを取り、身を具にするサバ汁は、サバの旨味を身と汁の両方から味わえる料理。新鮮なサバのアラから十分にダシを引き出そう。

●材料(2人前)

サバのアラ:サバ2匹分以上の頭と尾(わざと身も少し残すと良い)
サバの身:サバ1匹分の胴体を一口大の筒切りにしたもの
昆布ダシ:600cc(沸騰して蒸発する分を計算に入れて、少し多めの量で)
青ネギ:1本の半分を2cm程度の大きさに刻む(使う量はお好みで)
※細かい刻みネギにはしない
塩、醤油、ショウガ汁:いずれも少々(ダシの味の調節用)
酒または料理酒(下処理用):サバのアラに一通り振りかかる程度(ダシの風味付け)。

酒の場合は大さじ4杯、料理酒の場合は大さじ2杯
熱湯:鍋に十分な量(サバのアラと身の生臭み取り用)

●作り方

1、昆布ダシと酒または料理酒を鍋に入れて強火にかけ、沸騰したらすぐ火を止めて、常温まで冷ましておく。

2、鍋に十分な量の水を入れて火にかけ、熱湯まで沸かしておく。

3、サバのアラと一口大に切った身に、それぞれ酒または料理酒を表面に振りかけ、5分程度置く。

『波止サバ』は美味しく無いはウソ? 絶品料理への道は下処理にアリ
料理酒を振り5分置く(提供:WEBライター・伴野慶幸)

4、酒をまぶしたアラと身をザルに取り、軽くゆすって水気を切る。

5、水気を切ったアラと身を沸かした熱湯に入れ、箸でゆるくかき混ぜながら生臭みを取り、5秒ほどでアラはザルに、身はトレイに、それぞれ引き上げる。

『波止サバ』は美味しく無いはウソ? 絶品料理への道は下処理にアリ
アラは湯通しして臭みを抜く(提供:WEBライター・伴野慶幸)

6、引き上げたアラと身は、布巾かキッチンペーパーで水気を切る。

7、常温まで冷ました昆布ダシに、水気を切ったアラを入れ、中火にかける。沸いたら弱火にして5分間ほど煮出した後、アラは取り出して捨て、ダシは布巾かキッチンペーパーで濾す。

8、濾したダシを再び鍋に入れ中火にかけ、醤油少々で味付けし、塩少々で味を調節する。

※最後に味を調整するので、この段階では味が濃くなり過ぎないように注意。

9、味を調えたダシが沸いたら、水気を切った身を入れて中火のまま焚く。アクはていねいに取る。

10、鍋が沸いたら弱火にし、味見をしながらショウガ汁、醤油、塩で味を最後に整える。

11、身に十分に火が通ったら、刻んだネギを鍋に入れて、1分ほどで出来上がり。

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サバ汁と煮サバ(醤油味)(提供:WEBライター・伴野慶幸)

サバの味噌煮

サバの味噌煮はご存じのとおり有名な料理。濃い目の味、さっぱり味、甘目の味など、また使う味噌も、合わせ味噌、白味噌、八丁味噌と、味の好みは人それぞれ。

レシピもWEBで検索すれば多種多様。従って、火が通るまでのプロセスは、今回紹介する手順にこだわらず、好みのレシピを優先していただきたい。私から今回紹介するポイントはたった1つ。「冷蔵室で一晩寝かせてから翌日以降に食べる」である。

●材料(2人前)

サバの身:サバ2匹分の胴体を、一口大よりも少し大きめの筒切りまたは三枚おろしの切り身にしたもの
薄切り生姜:親指の先ぐらいの量(入れすぎないよう注意)
合わせ味噌:大さじ2
砂糖:大さじ2
みりん:大さじ2
醤油:小さじ2
酒:大さじ4(料理酒の場合は大さじ2)
水:150cc

●作り方

1、合わせ味噌、砂糖、みりん、醤油を小皿に取り混ぜ、合わせ調味料の状態にしておく。

2、鍋に水と酒を入れ、強火で沸騰させる。

3 沸騰したら中火にして、「1」の合わせ調味料を入れ煮立たせる。

4、煮立たせた鍋に切ったサバの身と薄切りショウガを入れ、落とし蓋かアルミホイルで蓋をして、やや弱めの中火で、照りがつくまで煮る。

『波止サバ』は美味しく無いはウソ? 絶品料理への道は下処理にアリ
煮上がったサバ(提供:WEBライター・伴野慶幸)

波止サバの味噌煮を美味しく食べるには、料理した当日はがまんして食べない。
先ほどまでの火が通るまでのプロセスで、普通はこれで出来上がりとして食べるのだが、ここからが私が今回紹介する料理の肝心のポイント。「料理した当日はがまんして食べずに、寝かせるプロセスを踏む」。

5、照りがつくまで火を通したら、火を止めて自然に冷ます。

6、鍋が冷めたら身と煮汁をともにタッパーまたはフリージングパックに入れて、冷蔵庫の冷蔵室で一晩寝かす。

『波止サバ』は美味しく無いはウソ? 絶品料理への道は下処理にアリ
冷蔵庫で一晩寝かす(提供:WEBライター・伴野慶幸)

7 翌日、一晩寝かした味噌煮を冷蔵室から取り出して、熱々まで温め直し、皿に盛り付けて出来上がり。

『波止サバ』は美味しく無いはウソ? 絶品料理への道は下処理にアリ
寝かせた味噌煮を温めて食べる(提供:WEBライター・伴野慶幸)

一晩寝かせる理由

食べ慣れたプロの食材のサバほどには脂の乗りが足りない波止サバを、味噌煮にして美味しく食べるには、「自然に冷ましてから、冷蔵室で一晩寝かす」手順を踏むことがポイントとなる。味噌の煮汁の味をなじませるとともに、サバの身が持つたんばく質の旨味成分を引き出す効果がある。

なお、しばらく食べずに保存食にする場合は、いきなり冷凍するのではなく、冷蔵室で一晩寝かしてから、冷凍庫に移しかえて冷凍保存すると良い。

<伴野慶幸/TSURINEWS・WEBライター>

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