船のエサ釣りで使用する竿を釣り具ショップの店頭で見てみると、もの凄くバラエティーに富んでいて、「とりあえず1本」なんて、ボヤッとしたイメージで購入しようとすると迷宮に迷い込んでしまう。そこで、今回は船釣りで使用する竿のいろいろなタイプの違いとその選択法を紹介したい。
(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS関西編集部・松村計吾)
品番の表記に注目
釣り竿はその釣りによって長い、短い、そして軟らかい、硬いなど様々で、さらに軟らかさ、硬さの具合も非常に細分化されている。最近ではその竿によって、調子が品番として表記されている竿も多く、一つの指標となっている。
下の写真はカワハギ釣り用の竿だが、品番にある「82-175」という表記は、8:2調子で全長が175cmという意味である。長さが175cmというのは分かるが、8:2調子とはどんな硬さなのだろう。

基本としては簡単で、全長を10とした場合、8:2調子ならば、竿を曲げた時に手元から8分目の部分が曲がりの頂点になると考えておけば間違いないだろう。その竿の曲がり方により、7:3調子や5:5調子などと表現される。
「先調子」と「胴調子」
たとえば、9:1調子といえば、全体の中で穂先の1割程度の部分が曲がるだけで、これを「先調子」と呼ぶ。いわば8:2調子でも竿先の2割程度なので、こちらも先調子といえる。
逆に6:4調子や5:5調子となると、曲がりの頂点がずいぶんと手元にくることにより、大きく竿が曲がり込むイメージになる。ここまで手前に曲がりの頂点がくる竿を胴が曲がるということで「胴調子」と呼ぶ。
ただし、これは「竿の曲がり=調子」を現した数値であり、竿自体の硬さとはまた違う意味となる。全体の硬さをかえれば、同じ8:2調子でもずいぶんと使い方がかわってくることを覚えておこう。
基本的な釣法の違い
さて、竿の調子については前述の通りだが、調子の持つ意味を理解した上で、今回のテーマである釣法にあった竿の硬さを考えてみたい。まず、船釣りで大きな選択肢としてあるのは、手持ちか置き竿か、というスタイルの違いだろう。
手持ちの場合は、一つテンヤ、テンヤタチウオ、カワハギ釣りやタコ釣り、カットウ、根魚など竿の操作で魚を食わせたり、エサをアピールしたり、逆に自然なエサの浮遊を演出したりできる。
掛ける釣り
近年、流行しているライトな釣りのように、特に手持ち竿の操作で「穂先にアタリを出させて、掛けにいく釣り」が主流といっても良いだろう。この場合のキーワードとなるのが仕掛けの操作性である。
竿を持つ手元で仕掛けの操作を使用する場合、先調子の竿であればあるほど、釣り人が動かそうとした動きが仕掛けに伝わりやすい。それは竿の曲がりが小さいためだ。

このような釣りの場合に多いのが、カワハギ釣りに代表されるような、小さなアタリを取って、掛けていく釣り方だろう。カワハギなどの場合は、釣り人側で掛けにいかないとエサをすっかり取られてしまうことも多々ある。
掛けていく釣りの重要な視点が「感度」である。感度が良ければ、魚がエサをくわえたり、達人になると仕掛けの近くに魚が寄ってきたことまで分かるという。そんなことが分かりやすいのは、感度の良さが売りの先調子の竿である。
食わせる釣り
アタリがあればすぐに掛けていかないとハリに掛かってくれない魚とは逆に、早アワセが禁物なターゲットも居る。コマセマダイ釣りなどがその代表で、もっとも良いアワセのタイミングとしては、マダイがエサをくわえて反転した時。この時にマダイが大きく仕掛けを引っ張ることで竿が舞い込むので大きなアタリとして分かる。

これを感度の良さを利用して早くアワせてしまうと、マダイの硬い歯にハリ先が乗り、しっかりと刺さり込まずにバラしてしまうことに繋がりかねない。
「高感度」の長所と短所
上記のように、それぞれの釣り方により適した竿の調子があるのだが、感度という面では、先調子の方に分があると説明した。魚がエサを触ってくることが分かるなら、感度が良い方が確実に釣り上げられるのでは、と思う人が出てくるのは当然だ。
ここで考えたいのは、感度が良いということは、魚がエサを突いたり、触ったりという反応が竿先を通じて釣り人の手元に伝わりやすいということだろう。それが先調子の比較的硬めの竿ということになるのだが、逆に、魚がエサを触りにきた時には、魚にも竿の硬さが伝わり違和感となってすぐにエサを離してしまうともいわれている。
本来なら感度を上げてアタリをきっちりと取り、掛けたい釣りながら、特に食いが渋い時にはワザと感度を落とすように軟らかめの竿を使ってしっかりと食わせる釣りを展開することもある。
感度の良さは魚への違和感の高さともいえるので、長所と短所が同居するということも覚えておきたい。
状況により調子を変えることも
ここまでの説明で、「掛ける(早アワセ)=先調子」「乗せる(遅アワセ)=胴調子」というイメージができ上がるのだが、実は同じターゲット、同じ釣法、仕掛けを用いた釣りでも、調子をかえた竿へ変更することが多々ある。その要因は魚の食い方、活性によるところが大きい。
本来は即アワセで掛けなければ掛かりにくいターゲットでも、魚の活性が低く、エサは軽く触りにきたり食いにきたりはするのだが、なかなかハリまで食ってくれない状況がある。それは低水温下だったり、潮の動きが悪いなど要因はさまざまだが、そんな状況下でもやはり釣れるものなら釣りたいもの。

そこで、9:1といった超先調子から、7:3、あるいは6:4といった、感度はやや落ちるものの、魚への違和感を少なくして、食い込みを良くさせる方法がある。もちろん、同じターゲットなのに、アワせるタイミングも即アワセから、竿が舞い込むくらいまで待ってからの遅アワセへと変更する必要がある場合も出てくる。
まとめ
同じターゲットを狙うにしても、以上のように竿の調子やアワセのタイミングを少しかえていくことで、魚の状況に合わせた掛け方をすることができる。
まずは最初に紹介したような即掛けが中心となるターゲット用の竿なら先調子、じっくり待って乗せる釣りが主流なら胴調子の竿を準備する。そこから釣りの幅を広げるなら、同じターゲット、釣り方用の竿の中で逆の竿を追加して持っておくと良いだろう。
<松村計吾/TSURINEWS関西編集部>