和歌山県の川でモクズガニ漁が解禁されました。山間部の観光地でよく名物食材になっているカニですが、実はあの超高級ガニと極めて近い存在なんです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
モクズガニ漁がスタート
和歌山県古座川町の古座川流域で秋の味覚、モクズガニの漁が始まったことが話題となっています。
モクズガニは海で生まれた後、川をのぼって中~上流域で育ち、秋になると産卵のために川を下ります。漁の適期となるのはこの秋。
当地ではダムより下の中下流域で、9月1日から年内いっぱいまで漁期に指定されています。主に蟹籠で獲られ、漁協組合員以外も入漁料を払うことで捕獲ができるそうです。(『秋の味覚、モクズガニ漁始まる 古座川流域』紀伊民報 2020.9.23)
モクズガニとは
モクズガニは甲幅8cmほどになる、国内では最大の淡水棲カニです。磯などでよく見かけるイソガニと近い仲間ですが、上記の通り両側回遊性を持っており、日本では珍しい甲殻類だと言えます。ハサミに藻のような毛が生えるので「藻屑カニ」と呼ばれています。

正式和名のほか、ツガニやズガニという名前で呼ぶ地域も多いです。広島市では毛ガニと呼ぶ地域もあり、しばしば海産のケガニと混同されるといいます。変わったところでは南九州で「ヤマタロウガニ」とも呼ばれています。山奥の渓流にも大型が棲息するので「山太郎」と名付けられたのかもしれません。
モクズガニは美味しい
このモクズガニ、実は知る人ぞ知る超美味なカニ。海産のものを含め、あらゆるカニの中でも最も美味という人も少なくありません。
高級食材「上海蟹」と近縁
それもそのはず、実はモクズガニは中華の最高級食材のひとつ「上海蟹」と極めて近縁で、見た目や性質、そして味もそっくりなのです(上海蟹の和名はチュウゴクモクズガニ)。

身はあまり多くないですが、カニならではの強い旨味を持ち、特有の好ましい香りを持っています。
ワイルドすぎる「がん汁」
蒸したり茹でたりして食べられることが多いですが、とくに出色なのが「がん汁」。生きたカニをまるごと潰し、取り出したエキスをナスなどの野菜と煮るというワイルドな料理で、まさに「飲むカニ」といった味わいです。

山奥の観光地で名物料理となっていることが多いモクズガニですが、全国津々浦々、上流から下流まで広く生息しているごく一般的なカニでもあります。都心の川でもしばしば見かけ、タモ網で簡単に救うことも可能。もし近くの川で姿を見かけたら、漁業権が設定されていないかどうかを確認した上で、捕まえてみるのも面白いかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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