奈良県中央卸売市場の丸中水産株式会社勤務の著者が、今回はおいしいマダイの見分け方を紹介。旬や役立つ小ネタも併せて解説しよう。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・有吉紀朗)
マダイは魚の王様
白〇、青〇、黄〇、黒〇、〇の中に入る魚は?答えは鯛。標準和名で色の名前がつくタイ。地方名を入れれば色んな色のつくタイがいるが、この中で本当のタイの仲間はキダイとクロダイだけ。シロダイもアオダイも抜群においしい魚だが、タイ科ではない。ネットではタイの種類はイシダイ、アマダイ、イトヨリダイ、イボダイと非常に多く…と書かれていたりするが、タイ科はマダイとキダイ(レンコダイ)、クロダイ、キチヌ、チダイ、ヘダイなど十数種類で、その本家本元がマダイだ。

日本でマダイは非常にポピュラーな魚で、魚の代表がマダイと言ってもいいだろう。だから○○ダイと言ったあやかりダイが多いのだが、シロダイ、イシダイ、ハマダイ(オナガ)、アマダイなど、マダイよりキロ単価が高いものも多い。
マダイの旬
マダイは春に産卵するので、春のマダイはお腹の仔に栄養をやるので身はパサパサだとか、梅雨の頃の麦わらダイはおいしくないと言われるが、お腹に仔がいれば歩留まりは悪いものの仔や白子は美味しいし、身もそんなに悪くない。梅雨の頃もまだ産卵が終わっていないマダイも多く、バラツキが多い。南北に長い日本で梅雨のころのマダイはまずいと決めつけ印象付けするのはよくない。
今年2020の盛夏のころ、関西では痩せたタイが多かったが、これも年によってそんなに痩せない年もある。
しかし、これから水温は下がってくる。それに伴いマダイは落ちに入る準備でエサを食べて、体色も紅葉を連想させるような色になり、紅葉ダイと呼ばれる。私的には桜ダイも好きだが、紅葉ダイも大好きだ。

マダイは「アシの遅い魚」
魚の鮮度を科学的に表すことに用いる数値がK値と呼ばれる数値で、ATP関連物質の総量に占めるイノシンとヒポキサンチンの量を%で表したものだが、10%以下であれば生食が可能といわれている。このK値がすぐに高くなる魚が「アシの早い魚」と言われるが、天然マダイはこのK値の上昇が遅い。氷冷蔵で10日目くらいまで10%以下だったという報告もある。
ただし、おいしいかどうかは別。個人的には死後硬直に入るか入らないかの身に旨味が出てきてはいるがプリップリという状態が好きであるが、これは好みの問題だし関東と関西でも違う。

よく見ると顔が違う
日本沿岸のマダイには6の系群が知られている。よく見ると鹿児島のマダイと長崎対馬のマダイと和歌山加太のマダイは顔が違う。中紀(和歌山)の白崎以北と以南でも顔が違い、どちらかというと内海のマダイの方が顔が優しい。

どこの産地がおいしいかは、その魚の筋や仕立て方によっても違ってくるが、大阪近郊の釣り人なら明石、加太のタイが一番と思っている人も少なくない。自分のホームグラウンドのタイが一番おいしいのだろう。
養殖のマダイでも春は仔があるので歩留まりが悪いが、1年を通して天然ほどムラがない。しかしこれから平均海水温の上昇が予想されているので、その生産量の8割以上を養殖している西日本では何らかの対策が必要になってくるだろう。
目利き
マダイを1匹丸ごと購入するなら、天然でも養殖でも外観の鮮やかさ、目の色、エラを見る。大阪近郊では「養殖マダイ刺し身用」と書いてあるのは、ほとんど早朝に水槽からあげて絞められたタイなので、コリコリした歯ざわりがある。
ウロコは軽く塩をしてから干し、油で揚げるとウロコチップスになる。鮮魚店で調理を頼んだ時は「ウロコ、アラ付けてください」と頼むのをお勧めする。胃も中身を出してからよく水洗いしてアラ炊きでおいしい。
養殖マダイはエサの匂いが残ることもある。釣り人なら天然にこだわりたい。ただし正月用の焼きダイは脂が多い養殖物が好まれている。

刺し身用の柵を購入する時は、切り口が鋭いもので血合いと白身がはっきりしたもののほうが新鮮だ。

今年はコロナの影響で輸出も低調なことから、養殖マダイ、天然マダイとも例年より安いのだ。ぜひおいしいマダイを食べてほしい。
<有吉紀朗/TSURINEWS・WEBライター>
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