沖縄の海で、故意に傷つけられたウミガメが多数見つかり問題となっています。警察の捜査によってわかったその原因は複雑で、すぐには解決策が見つからないもののようです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
傷ついたウミガメが大量に見つかる
沖縄本島から西に100kmほど離れたところにある久米島。その海岸で今月14日、数十匹のアオウミガメがひどい怪我を負った状態で発見され、大きな問題となりました。事件性があるとみなされ、翌日には警察の捜査が開始されています。

発見時、一部のカメは出血しており、息絶えつつある個体もいたそうです。そしてカメたちの首の周りには、刃物らしきもので刺された傷があったといいます。
なぜウミガメは傷つけられた?
捜査が進む中、19日には地元の漁師がこの事件に関与していたことが判明しました。その漁師は「漁網にかかったウミガメを、弱らせて網から外そうと思って刺した」と話したとのことです。
実は今回傷ついたウミガメが見つかった場所は浅瀬で、ウミガメが餌となる藻を食べに来る場所なのだそうです。その一方で浅瀬ならではの地形を利用し、当地で珍重されるチヌマン(テングハギ)などを漁獲する漁場にもなっています。

その結果、網にウミガメがかかってしまう事例が多くなっているといいます。網にかかったウミガメは暴れるため、逃がすためには網を切るしかなく、修理代もかかるうえ、修理が終わるまでは漁が行えなくなり経済的損失は大きくなります。
養殖モズクにも被害
加えて近隣ではモズクの養殖も行われているそうなのですが、その養殖モズクがウミガメに食べられてしまう被害も出ているといいます。これらの事情から、ウミガメを害獣だと考える漁師もいるといいます。
ウミネコの違法駆除
さて、今回のウミガメのニュースと時を同じくして、漁師による北海道・利尻島のウミネコ違法駆除が問題になっているのをご存知でしょうか。
これは、利尻島の名産品である昆布の乾燥処理中に、ウミネコが糞をしてしまうため、昆布の商品価値が落ちることに怒った漁師が、ウミネコを駆除するための網をかけたり、卵を潰したりして違法な殺処分を行っているというものです。
一般人のSNSへの投稿が周知のきっかけとなり、更にこの問題について研究している大学准教授の声明が発表されたことで問題の深さが追認される形となりました。

解決は一筋縄にはいかず
この事象について、ウミガメの例と併せて強い非難の声が上がる一方で、「野生動物による漁業被害は被害額の補填がない事が多く、漁師には死活問題となっている」「保護と漁業のバランスが取れておらず、漁師だけが割を食う形になっておりアンフェアだ」という声も出ている状況となっています。
ウミネコは準絶滅危惧種、ウミガメはワシントン条約記載種であり、いずれも漁師の一存で殺処分が行われてよいものでは無いのは当然です。野生動物の許可なき殺戮は犯罪でもあります。しかし「何が何でも保護すべき」と声高に叫んでも、最前線ではただの理想論となってしまっている可能性もあり、対立ばかりで何も解決できない状態になってしまう危惧もあります。
月並みな結論となってしまうのですが、双方の視点から相寄る形で最善策を考えていかなくては、本当の解決に至ることはないでしょう。
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<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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