最近、養殖の現場で「地下海水」というものに注目が集まっているようです。ひところ話題になった「海洋深層水」とは違うのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
「アカアマダイ」の陸上養殖に成功
先日、JR西日本の関連子会社で、様々な養殖魚の開発・販売で注目されている「JR西日本イノベーションズ」が、とある高級魚の養殖に成功し、販売を始めたことで話題となっています。
その高級魚とは「甘鯛」。代表種であるアカアマダイの養殖に成功し、100匹程を試行販売するに至ったのです。
この甘鯛は山口県産の「人工種苗」(卵から孵化させ育てたもの)でかつ陸上で養殖されたもので、1年半ほどの養殖期間で約400g、全長約30cmほどのサイズになっています。
アカアマダイは身に水分が多いため品質の劣化が早く通常は生食されませんが、今回のものは鮮度管理も徹底しており生食も可能だといいます。
なぜ養殖が可能に?
アカアマダイは高級魚であり、養殖の需要はかねてからあったものと見られています。しかし技術的に難しく、栽培漁業として種苗の放流例があるのみで、これまで養殖物が流通に乗ることはありませんでした。
そんな養殖アカアマダイが今回なぜ本格的に発売できるに至ったのか、その秘密は「地下海水」にあるのだといいます。
今回のアカアマダイは、地下海水を用いて、長崎県の五島で陸上養殖されたもの。アマダイの仲間はいずれも沖合のやや深い場所に棲息し、冷たくて酸素の多いきれいな海水を好むと言われています。地下海水には「水温の一定さ」と「通常の海水と比べての清浄さ」があり、これによってアカアマダイの養殖が可能になったのだそうです。
地下海水とはなにもの?
地下海水はその名の通り「地下から採取された海水」です。と言っても海底から採取されるのではなく、海岸に近い場所に掘削した井戸から採取されます。
海面より低い場所では地下水が塩気を帯びており、これは通常の井戸水として利用するのには向かないのですが、海水として利用する分には問題がありません。
同様のメリットがあるものとしては「海洋深層水」が知られており、こちらも養殖に活用されることがあります。しかしこちらは水深200m以深から採取しないといけないため費用がかかり、岸に近い場所から急に水深のあるような海岸でないと採取することができないため場所の制約も大きいです。
地下海水は10~数10mの掘削で採集ができ、設備も簡易的なものでOK。全国に数か所掘削施設があり、陸上養殖や、海水温上昇の影響を受けやすい海藻の養殖などで用いられているといいます。
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<脇本 哲朗/サカナ研究所>
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