最近、なぜ「養殖ハマチ」と「天然ハマチ」では天然のほうが安いの?とよく質問される。確かに天然=高価というイメージがあるので、混乱しかねない現象だ。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター有吉紀朗)
天然より高価な養殖ハマチ
養殖全般の歴史は、紀元前1世紀ころの時点で灌漑用の池を利用して魚の飼育池としたとの記録があるらしく、海水魚では香川の引田でハマチ(ブリ)の養殖が昭和初期に行われたというのがはじまりで、今でもブリ類の養殖は生産量が多い。
養殖魚と天然魚を価格で比べると、ブリ、カンパチは天然より養殖魚のほうが高いことが多い。釣り人である我々から見るとなかなか信じ難い事実だ。それでも同じ鮮度ならその差は近づき、特に師走12月は天然入荷も減り脂ものってくるので、同じ鮮度やブランドで天然のほうが高くなることが多い。

22年は円安の影響も
天然魚は旬が近くなると、値段は上がるが水揚げも増える。この水揚げが巾着網や定置網といったような大量に漁獲されるので、流通も増え値崩れしやすい。一方養殖魚は生産計画に基づき出荷の量や時期を調節できる。
また2022年の円相場から海外からの注文も強く、輸入のエサ代、輸送のコストから養殖魚の価格は上昇中で、養殖ブリがキロ単価で1000円を突破している。天然ブリではブランドブリを除きキロ1000円を突破することは少ない(卸値)。
天然へのニーズも変化
スーパーに買い物に行くと、甘エビやシジミ、メイタガレイなどに「天然もの」と書いたシールが貼られていたりするが、これらの魚介は養殖物がない。なのに天然と書いてあるということは、まだまだ天然にこだわるお客さんがいるのが実情だ。
ただ、若い人を中心に脂嗜好の影響で天然信仰は崩れつつあり、その代表がブリ類。養殖ブリは、天然ブリの脂が少ない夏場でも脂が乗っているし、ハマチクラスでも養殖ものは脂が乗っている。これからの時期特に年末は天然ブリも脂が乗ってきて値段も徐々に上がってくるものの、11月にはまだ一切れ100円で売る魚屋さんも多い。
養殖により大量の食糧供給が可能で、世界の養殖量は漁獲量を上回るのが最近の傾向だが、1匹の魚を養殖するのに莫大な小魚、エビ、薬を使い、ギンザケなど日本の裏側のチリから輸送……と、温暖化防止を大きくうたう大手スーパーなどで、養殖魚を売るのは「?」だが、経済、経営的に考えると仕方がない。

お店で買うときは身の色に注目
ちなみに自分は養殖魚でも食べるが、脂っぽい養殖魚はあまり量が食べられない。ただし天然のブリ類は、脂少なくてもブリしゃぶ、ハマチ、ツバスはゴマ油と塩、ネギでいくらでも食べられる。
スーパーで購入する場合の目利きは、身の色に透明感があるものを買う。養殖ものは脂があるので白っぽく天然ものは赤っぽい。また売れ残った品物は味噌漬けや照り焼きタレがかけられている。これは色がすぐかわってくるからで、食感も悪くなっている。

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<有吉紀朗/TSURINEWSライター>
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