「カヤック」と聞くと「手でパドルを漕いで進む小さな船」を思い浮かべる方が大半でしょう。しかし、現代のカヤックは足漕ぎタイプも登場し、とてもスタイリッシュに進化しています。

今回はカヤックの歴史から最先端の機構まで、筆者が愛用しているHOBIE JAPANのカヤックを中心にご紹介します。

(アイキャッチ画像提供:HOBIE JAPAN)

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カヤックはカヌーの一種

カヤックは広い意味では「カヌー」の一種であり、カヌーとはパドルを使って水をかいて進む小船の総称です。

カヌーとの区別

現在では、一般的に片側にブレード(水かき)が付いたパドルを使うものをカヌー、両側にブレードが付いたパドルを使うものをカヤックと呼んで区別されています。

カヤックの歴史

カヤックの起源は約6000年前ともいわれ、極北の海での漁業や狩猟を目的とした動物の皮を張った船が「カヤック」となったようです。

近代的なスポーツ・レジャー用のカヤックは19世紀中ごろにイギリスからヨーロッパへと広まり、1936年にはカヌー競技がオリンピック種目となりました。

近年主流のポリエチレン製カヤックの登場は1980年代で、その歴史からするとごく最近の出来事と言えますね。

最初は手漕ぎのみ

カヤックは約6000年をかけて、材質や形状などが様々に進化・発展してきましたが、その間唯一変わらなかったのは「手で漕ぐ」こと。

しかし、「カヤック=手で漕ぐもの」の定義すら覆す「足漕ぎ」タイプの登場で、カヤックの歴史は新たな局面を迎えています。

足漕ぎカヤックの登場

足漕ぎカヤックは、1997年にアメリカのホビー社(創業者:ホビー・アルター)が開発した「ミラージュ・ドライブ」という画期的な足漕ぎ装置を搭載したカヤックが元祖です。

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釣りと足漕ぎカヤックの相性は抜群(提供:HOBIE JAPAN)

ペンギンから着想

ミラージュ・ドライブは、ペンギンが泳ぐときの足ヒレから着想したといわれ、2枚のフィンが前後に並び、ペダルを漕ぐと、柔軟性のあるフィンが絶妙によじれながら左右にスイングし、前方向への推進力を生み出します。

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ミラージュ・ドライブ(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

プロペラ式などではなく、自然界に存在する動きや形状に着目した点は、もともとサーフボードやセールボート(帆船)の製造を通して、波や風との調和を大切にしてきたホビーならではといえるでしょう。

一見すると、どうしてこれで前に進むのか?と疑問に思う見た目をしていますが、数えきれないほどの試作を繰り返した結果たどりついた形なのです。

ホビーカヤックの抜群の操作性

足漕ぎカヤックの大きな特徴に、前進と操舵の役割が分担されているため、操作が簡単なことが挙げられます。ミラージュ・ドライブの操作は、足を前後に動かしてペダルを漕ぐのみ。方向転換は手元のレバーを指で回して後方のラダー(舵)を操作するだけ。

手漕ぎより簡単

手漕ぎカヤックは、パドリングひとつで推進力と進行方向を決めるため、まっすぐ早く漕いだり、思った通りに方向転換したりできるようになるには習熟が必要です。

しかし、足漕ぎカヤックは初めて乗ったその日でも全速力で進み、方向転換することが可能。実際に筆者も、初乗り1時間後にはすっかり慣れて、魚を釣ることに集中していました。

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カヤックで釣れたワラサ(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

ホビーカヤックの快適性

これまでの一般的なカヤックのシートは、クッション材をペタンと載せるタイプが多く、乗っていればお尻が濡れるのが当たり前でした。

釣りのためなら我慢できなくはない……ですが、そのうち蒸れてかゆくなってきたりするので、やはり不快です。近年のホビーカヤックのシートはアルミ製パイプフレーム構造で、座面がカヤック本体から浮いており、艇内に水が入ってきても座面はドライのまま。メッシュ素材のため蒸れにくくもなっています。

リクライニング可能

さらに、リクライニングが可能で、漕ぎやすいポジションに調整できたり、単体でチェアとして使えたりとかなり多機能。上位機種に採用される「ヴァンテージシート」は、カヤックからはずして砂浜に置くだけで、優秀なビーチチェアに早変わりしますよ。

最先端のミラージュ・ドライブ

筆者のカヤックは、前進のみのオーソドックスなミラージュ・ドライブですが、現在のホビーカヤックは驚くべき進化をとげています。

キックアップフィン

「キックアップフィン」とはミラージュ・ドライブに備わる機構で、フィンが障害物にあたると自動的に格納されて破損を防ぐものです。格納されたフィンは自動ですぐに復帰します。

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フィンが水平になった状態(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

これにより、小型ボートでも入っていけない浅瀬や、水中に障害物が多い場所に侵入することができ、行動範囲が広がります。

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障害物に当たると格納されるキックアップフィン(提供:HOBIE JAPAN)

ミラージュ・ドライブ180

手もとのケーブルを引くだけで前進・後進を切り替え可能。魚探の反応を見て急停止&バックができて便利。また、狙ったポイントの上でホバリングする際にも役立ちます。

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水中から見たミラージュドライブ180(提供:HOBIE JAPAN)

ミラージュ・ドライブ360

これぞ最先端!と感じるのが2019年に登場したミラージュ・ドライブ360。なんと前後、左右、斜めに移動し、さらにその場で回転することも可能。まさに「360度」の機動性で、手漕ぎカヤックに勝るとも劣らない小回り性能を獲得しています。

縦横無尽に動く姿をぜひ一度動画で見てください。きっと感動しますよ!

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水中の生き物たちにも優しいミラージュ・ドライブ(提供:HOBIE JAPAN)

釣行時の足漕ぎメリット

筆者が感じる足漕ぎカヤックならではのメリットを挙げると5つあります。

移動中に上半身が空く

食事や小休憩、ルアー交換、写真や動画の撮影など、移動中に様々なことができることは足漕ぎカヤックの大きなメリット。

ロッドとパドルの持ち替えが不要

ちょっとした移動のたびに、ラインの垂らしを調整し、ロッドを所定の位置に置いてパドルに持ち替え……この作業を何十回も繰り返すと、想像以上に釣りをしている時間をロスしたり、ストレスになったりすることも。

手漕ぎと足漕ぎで差がつくところですね。また、魚(とくに大物)とやりとりしながらの移動・向き変えが簡単な点もメリット。定置網や航路、消波ブロックなどに近づいてしまいそうな場面でも、危険回避しながらファイト続行が可能です。

長距離移動が楽

もちろん過信は禁物ですし、各人の技量や船体の形状にもよりますが、足漕ぎカヤックの方が手漕ぎカヤックより、楽に遠くのポイントまで行けると感じています。上半身を休ませ、釣りに使うエネルギーを温存できる点もメリットですね

向かい風に強い

強い向かい風のとき、手漕ぎカヤックはパドルに受ける風圧がブレーキになってしまうため、低めの軌道でパドリングするなどテクニックが必要になります。足漕ぎであれば、とにかく一生懸命ペダルを漕ぐのみ。

ただし、足漕ぎだからといって絶対に無理はしないでください。荒れた海では人の力など微々たるもので、自然の力にはかないません。

魚に警戒されにくい

カヤック全般、エンジン付きのボートなどより魚へ与えるプレッシャーは圧倒的に少ないものです。なかでもミラージュ・ドライブは自然の動き・波動に近いため、プロペラ式の足漕ぎカヤックよりも警戒されにくいといわれています。

実際に、カヤックのすぐそばで魚がヒットすることも多いと感じます。

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カヤックで釣れたシーバス(提供:TSURINEWSライター・福永正博)

足漕ぎがカヤック釣行を変えた

ホビーカヤックに代表される足漕ぎカヤックの進化により、カヤックフィッシングはより快適・簡単に楽しむことができるようになりました。

もちろん、これまで長い歴史を紡いできた手漕ぎカヤックの奥深さを否定するわけではありません。しかし、こと魚釣りをすることに関して、足漕ぎカヤックに有利な点が多いことはまぎれもない事実でしょう。

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試乗会で体験も

最近では各地でカヤックの試乗会が開催されています。カヤックフィッシングに興味のある方は、ぜひ一度最新のカヤックを体験してみることをおすすめします。釣り人ならば、きっと欲しくてたまらなくなることでしょう。

<福永正博/TSURINEWSライター>

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