1980年代に端を発して一大ブームを巻き起こした「チヌ(クロダイ)落とし込み釣法」が、愛好家たちの間で絶滅危惧種のごとく今も生き永らえているのをご存じだろうか。この記事では、釣り場を関西の沖防波堤に設定して、チヌ落とし込み釣法を、私(筆者)の経験をもとにコンパクトにまとめて紹介したい。

投げずに楽しめる釣り方の一つとして、この夏に挑戦してみてはいかがだろうか。

(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・伴野慶幸)

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チヌ落とし込み釣法の概要

チヌ落とし込み釣法とは、「防波堤や岸壁の壁際に付いた甲殻類(イ貝、フジツボ、カニ)や虫類などを捕食する魚を釣り場を移動しながら、エサを壁面ぎりぎりに垂直に落とし込んでいく釣法」となる。

狙う魚はチヌがメインで、カンダイやサンバソウが釣れることもある。

投げずに楽しむ堤防釣り:クロダイ(チヌ)の落とし込み(前打ち)釣法
投げずに楽しむ堤防釣り:クロダイ(チヌ)の落とし込み(前打ち)釣法
壁面の着生物を捕食する魚が釣れる(提供:TSURINEWSライター・伴野慶幸)

専用タックルを一通り揃える必要あり

上記の釣り方を実践しようと思えば、専用タックルを一通り揃える必要がある。ルアーロッド+ベイトリールの組み合わせで代用しても失敗する可能性が非常に高い。なぜなら、「エサを壁面ぎりぎりに垂直に落とし込んでいく」技術と、「アタリを捉えて掛けアワセる」ことが、専用タックルでないと非常に難しいからだ。

ところが、実際に釣具店に行き、チヌ落とし込み釣法を始めたいので専用タックルを一通り揃えたいと店員に相談したらどうなるか。もしかしたら総額50,000円近くになるラインナップをすすめられてしまうかもしれない。

さすがに総額50,000円となると、始めようと思っても躊躇してしまうだろう。そこで、総額15,000円程度に抑えた専用タックルの一例を紹介する。

タックルの一例

専用竿:プロマリン(浜田商会) 海将落とし込み黒鯛3.9m 約7,000円程度
専用リール:プロマリン(浜田商会) バトルフィールド黒鯛 約5,500円程度
専用ライン:サンライン 黒鯛ISM 落とし込みMARK-WIN2.5号または3号 約1,500円程度
専用目印仕掛け:がまかつ、オーナー 800円~1,500円程度
これに後述するハリス、ガン玉オモリ、釣り針を加えると、タックルが一通り揃う。なお、専用竿と専用リールの入門モデル(廉価品)は、上記よりも値段は上がるが、宇崎日新からも販売されている。

投げずに楽しむ堤防釣り:クロダイ(チヌ)の落とし込み(前打ち)釣法
投げずに楽しむ堤防釣り:クロダイ(チヌ)の落とし込み(前打ち)釣法
初心者向け落とし込みタックル(提供:TSURINEWSライター・伴野慶幸)

ヘチ釣りのタックルとの違いに注意

現在はチヌ落とし込み釣法よりも、上級者向けのヘチ釣りのほうが人気がある。ヘチ釣り専用竿は長さと仕様が全く異なる。ヘチ釣りは専用目印仕掛けを使わないので、リールに巻くラインもヘチ釣りに適した高価なラインが別に販売されている。

釣具店の店員によっては、チヌ落とし込み釣法に対する知識が浅いと、ヘチ釣りと混同して釣り人に案内してしまうことがあるので注意してほしい。

専用タックルのメリット

専用タックルはなぜ「専用」なのか、その所以は「エサを壁面ぎりぎりに垂直に落とし込んでいく」技術と、「アタリを捉えて掛けアワセる」ことの実現性を追求した結果として、その仕様に表れている。

専用竿は軽く、細く、極端な先調子の堅い造りで、ガイドは径の非常に小さいミニクロガイドやUガイドでラインとガイドがまるで一体化するかのような仕様になっている。

専用リールはラインの巻き癖が極力付かないようにスプール径が大きい。糸フケや魚を掛けた時のラインの調整を指先のわずかな動きで調整することに特化しており、ドラグ機能もストッパー機能も付いていない。

専用目印仕掛けは、エサを垂直に落下させていく過程で生じる微妙なアタリを視認するための目印となる小さな発泡シート片やピニールパイプが複数接着されている。自作してもよいが、市販品を用いたほうが一定の性能が担保されていて、時間の節約にもなる。

全体のタックルの図解は、過去のTSURINEWSに掲載された諸先輩方の投稿の中に一目瞭然の素晴らしいものがあるので、そちらに委ねさせていただきたい。

チヌ落とし込み(ヘチ釣り)解説 エサの使い分けが釣果UPの鍵

愛知の落とし込み釣りで50cm『年無し』頭に良型クロダイ手中

ハリスと「針オモリ」について

専用目印仕掛けの下に直結するハリス、ガン玉オモリ、釣り針も、「エサを壁面ぎりぎりに垂直に落とし込んでいく」ことに適したものを選ぶ。

ハリスはフロロカーボン1.5号~2.0号で堅めのものがよく、私は東レフィッシング トヨフロンスーパーLハード1.7号を標準に使用している。

ガン玉オモリは釣り針の結び目のチモトを割れ目で挟み込むように、微量の接着剤を塗ってニッパーで平たく付けて一体化させる。これを「針オモリ」と呼んでいる。

針オモリが作りやすいように、ガン玉オモリは割れ目が広めのチヌ専用のものが市販されている。オモリの大きさと釣り針の大きさは、釣り場の状況や狙う魚の大きさによって変えるとよいが、私はガン玉BB、釣り針はチヌ針3号を標準に使用している。

エサについて

エサは岩カニかイ貝が定番。岩カニは多くの釣りエサ店で販売されている。

イ貝は壁面に着生しているので、タモ網の柄に装着する専用用具で搔き獲るのが基本だが、着生状況が悪い場所や時期は現地採取できるだろうと安易に考えていたら悲惨な目に合うので、イ貝を販売しているエサ店や渡船店を探して買い求めるほうが得策だ。

専用の用具でエサを調達(提供:TSURINEWSライター・伴野慶幸)

岩カニもイ貝も生き物なので、海水バケツに入れて生かしておき、使う分だけエサ箱に取り除けるようにしたい、夏の高温は大敵。海水をこまめに入れ換え、時には冷凍ペットボトルを漬けて水温を調節するなどの細心の注意を払ってほしい。

針の付け方

エサの針への付け方は、岩カニは足の付け根から刺して甲羅に針先を少しだけ出す「横掛け」がカニの動きが良いのでおすすめ。

イ貝は1枚掛けの場合は貝の割れ目の隙間から針を刺して、ガン玉オモリは貝に密着させ、針先を少しだけ出す。繊維掛けの場合は、イ貝に直接針を刺さずに、イ貝の繊維に針を縫い刺す。

エサごとに針の付け方が違う(提供:TSURINEWSライター・伴野慶幸)

釣り方について

落とし込み釣りは、呼び名の通り釣り場を移動しながら、エサを壁面ぎりぎりに垂直に落とし込んでいく釣法である。

「壁面ギリギリ」と「垂直」の2つが重要なキーワード。エサが壁面から20cmより離れてしまうと釣れないと言われており、エサが波や潮に流されて垂直に保てずハリスが斜めになると、魚はエサの落ち方の違和感からアタックして来ない。

壁面ギリギリにエサを落とす(提供:TSURINEWSライター・伴野慶幸)

この微妙な操作を実現するために、竿先で目印仕掛けを巧みに誘導しやすい専用タックルが必要になる。この落とし方は、活字だけでは分かりづらく、経験を積まないと上手くいかない。

幸いなことに今の時代は、落とし込み釣りの実践映像がDVDやネット配信動画で視聴して学ぶことが出来る。一例として、関西でチヌ落とし込み釣法の一大ブームを展開した伝道師的存在の山本太郎氏による実践解説動画が、シマノ公式YouTubeで公開されているので紹介させていただきたい。

潮回りと時間帯が重要

盛期でチヌの寄り付きがよほど良い場合は日中まんべんなく釣れることもあるが、普通は潮回りと時間帯が重要で大潮か中潮で、満潮の前後1時間が朝マヅメ(夜明けから朝8時頃まで)か夕マヅメ(夕方4時頃から日没まで)に到来する日がベストだ。

ただし、強風や高波、前日までの雨の影響による水潮、盛夏の高水温によって生じる赤潮や苦潮といった自然の摂理の負の要素には敵わないので、天候や海況が安定している時を選んで釣行したい。

落とし込釣りのアタリと取り込み

落とし込み釣りにおけるチヌのアタリは微妙で、ウキ釣りやルアーフィッシングなどのように魚が掛かった瞬間が明確には判らない。初の1匹を手にするまでは、アタリは判らないかもしれない。だからこそ目印仕掛けやリールに巻くラインマーカーが微妙なアタリを判別する助けとなる。

アタリは目印を引き込んだり、落下速度が緩んだり、時には竿先から魚の感触が伝わったりと様々だ。アタリを感じたら、竿先を鋭く沖に払い出すようにして跳ね上げるようにしてアワセる。

魚を掛けたら、壁面から魚を沖に離して、糸をリールから極力出さずに、竿の力を信じてひたすら耐えて魚を海面に浮かせることに専念する。魚を海面に浮かせようとすると、海面で魚は激しく抵抗するが、無理にタモ入れしようとせず、海面で魚に空気を吸わせて勢いを止めてから取り込むとよい。

岸和田沖一文字での実践レポート

2023年7月16日の15時~19時の間、岸和田沖一文字に釣行。エサは岩カニを持ち込んだほか、岸和田渡船で季節限定販売のイ貝を購入。

当日は中潮で19時頃の満潮で、夕マヅメのチヌの活性が上がるタイミングを狙ったが、前日からの強風が残り海況は荒れ気味で活性が悪い。

当日の落とし込みタックル(提供:TSURINEWSライター・伴野慶幸)

アタリがない時間が続いたものの、内向きのサビキ釣りで小アジを釣っていたジュニアが「チヌおるで」と「見えチヌ」の情報を送ってくれたことでわずかな希望を得て続行。

納竿間際の19時前にようやく、内向きで目印の落下速度が緩み、続いて竿先を抑え込むアタリをキャッチ。ここで鋭くアワセるとヒット。

魚のパワフルな抵抗が続き焦ったものの、至極の一匹となった44cmのチヌを仕留めて面目躍如の釣行となった。

落とし込みで釣った44cmのチヌ(提供:TSURINEWSライター・伴野慶幸)

獲物は三枚おろしにして身を1晩寝かせ、翌日に絶品の刺身を味わった。

一晩寝かせたチヌの刺身は絶品(提供:TSURINEWSライター・伴野慶幸)

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<伴野慶幸/TSURINEWSライター>

▼この釣り場について
岸和田沖一文字
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