海水温上昇のためか、近年増加傾向にあるチヌとキビレ。筆者がホームとする東京湾でも、シーバス狙いのカヤックフィッシング中にゲストとしてヒットすることが多くなってきた印象です。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・福永正博)
カヤックチニングとは?
「カヤックチニング」とは、文字通りカヤックに乗ってチニングをすることですが、もう少し詳しく理解するために、「カヤックチニング」という言葉を分解してみましょう。
チニングの概要
「チニング」とは、ルアーでチヌを釣ること。アジングやメバリングなどと同様、ルアーフィッシングの対象魚にingを付けた言葉ですね。チヌ釣りの歴史から見れば、生まれてから20年くらいの新しい釣り方といえます。
チニングの発祥地は広島県で、ラパラCD7を改造した「Mリグ」底ズル引き釣法がその始まり。
その後、浜名湖発祥のポッパーでのトップウォーターゲーム「チヌトップ」や、大阪淀川から広まったフリーリグでのボトム攻略など、様々なメソッドが生まれゲーム性が高まり、釣りジャンルの一つとして確立されました。
カヤックフィッシングの概要
カヤックフィッシングとは、カヤックに乗って釣りをすること。左右両側にブレード(水かき)が付いたパドルで進む小舟をカヤックと呼びますが、最近では足でペダルを漕ぐタイプも一般的です。
船外機付きボートに比べれば、維持費やメンテナンスの負担が少なく、出艇場所を比較的選びやすいことも大きなメリット。一旦海へと漕ぎ出してしまえば、おかっぱりの人気釣り場のような混雑とは無縁で、自分1人の自由な空間で釣りを楽しむことができます。

チニングとカヤックは相性抜群
筆者は、カヤックとチニングはとても相性が良いと考えています。その理由をいくつか挙げてみましょう。
仕掛けがシンプル
フカセ釣りでも人気ターゲットのチヌですが、船上で身動きがとりづらいカヤックフィッシングには、仕掛けがシンプルな釣り方が向いています。
複雑な仕掛けが、カヤックの先端などに絡まるとかなり厄介です。その点、ルアーを接続するだけのチニングは相性抜群。
流されながら釣るならルアーが良い
イカダからエサダンゴを落としてチヌを寄せる「かかり釣り」や、コマセを撒く釣り方はカヤックフィッシングには不向きです。エサでカヤックはもちろん自分の服がかなり汚れます。
そもそも、流されるのが当たり前のカヤックは、一か所に魚を寄せる釣りとの相性は良くありません。やはりルアー釣りの方が向いていますね。
シャローに強い
膝下くらいのシャローにまで侵入してくるチヌ・キビレを狙う釣りにおいて、ボートでは座礁してしまうほどの浅場にも侵入できるのはカヤックの特権。
それほど沖に出なくても釣りが成立するチニングは、安全面・体力面でもカヤックフィッシングとの相性は良いといえます。
根掛かりが少ない
ボトムを攻めることが多いチニングでは、根掛かりが付きもの。ですが、おかっぱりでは回収できない状況でも、カヤックならば根掛かりしたポイントの真上や反対側に回りこめるため、はずせることがほとんど。
実際に、根掛かりでのルアーロストは数えるほどしかありません。それらも、海底に沈んだ捨てられた網などに引っかかったものです。

チヌ・キビレはどんな魚?
それでは、今回のターゲットであるチヌ・キビレの生態や特徴を確認しておきましょう。
チヌとキビレの見分け方
高水温や淡水・汽水に対応するチヌ・キビレ。チヌはクロダイとも呼ばれるとおり、黒っぽい体色をしています。キビレはチヌと比べると少し白っぽい体色であるほか、その名のとおり黄色いヒレが特徴です。

二重人格?
ルアーでよく釣れることからもわかるように、エサと思われる動くものに対しては非常に貪欲で好奇心旺盛。その一方で、人影や物音を感じると逃げてしまう警戒心が強い一面もあります。
ボートと違いエンジン音がしないカヤックは、静寂性の点で有利といえますが、それでもなるべく余計な音は出さないように注意しましょう。
なにを食べる?
チヌとキビレはどちらも雑食性です。小魚や貝類、エビやカニなどの甲殻類はもちろん、スイートコーンやスイカをエサにしても釣れるほどバリエーション豊かな食性。まさに雑食、基本的になんでも食べる魚といえるでしょう。
近年、増殖したチヌやキビレが、養殖している海苔やカキ、潮干狩り場のアサリなどを食べてしまう被害が報告されています。駆除の対象になっている地域まであります。
チヌ・キビレの生息域
チヌ・キビレは、河川や河口、サーフ、磯、干潟、運河、堤防まで様々な場所に生息。悪条件に強い魚で、水質の悪い湾奥エリアや、工業地帯の運河などでも元気に泳いでいます。
地域によっては、川で釣れる鯛「カワダイ」と呼ばれるように、河川の上流域まで入ってくる個体もめずらしくありません。
どちらもシーバスやボラと同様に、淡水域から沿岸部一帯に広く生息する魚といえますが、キビレが沿岸部までに限られるのに対して、チヌは沖合で釣れることもあります。
カヤックで狙うポイント
上述のように、様々なエリアで狙えるチヌ・キビレですが、カヤックフィッシングに適したエリアとなるとある程度は絞られます。おすすめは河口部や干潟。
サーフは狙いが絞りにくいですが、海藻やゴロタ石があれば積極的に攻めてみてください。堤防は落とし込み釣りの定番ポイントですが、岸釣りとエリアがバッティングすることや、カヤックが波で岸壁に打ちつけられる危険性があるので避けた方が良いでしょう。

釣れる時期
一年を通してチニングは成立しますが、とくにおすすめなのは暑い時期。他魚種の反応が乏しいことがある夏場でも、高水温に強いチヌ・キビレは果敢にルアーへアタックしてきます。とくに早朝はトップウォータープラグへの反応も良いので、ぜひチャレンジしてみてください。
ちなみに、チヌとキビレは産卵期が異なります。チヌは春から初夏にかけて、キビレは秋から初冬にかけて産卵します。
カヤックチニングのルアー
チニングは、様々なルアーを使用するゲーム性の高さが大きな魅力です。ここでは、各ルアーの種類や使い方、適したシチュエーションなどを解説します。
トップウォーター
チニングで使用するトップウォータープラグは、ポッパーやペンシルベイトが一般的です。まれにシーバス用の10cm以上のトップウォータープラグにヒットすることもありますが、基本的に5~8cmほどの小ぶりのルアーが良いでしょう。
小型プラグは飛距離が不満という方には、「沈むトップウォーター」がおすすめ。放っておくと沈んでしまうので厳密にはシンキングプラグですが、リトリーブやロッドアクションによって浮き上がるタイプです。
トップウォーターに反応が良い時期は、5月から10月くらいまでで、水温の低下とともに反応が悪くなっていきます。河口や干潟など水深が浅いエリアほど魚とルアーの距離が近くなるため、バイトが得られやすいでしょう。
逆にいえば、水深が深いエリアや、風や濁りが強くルアーを見つけてもらいにくい状況では、好反応を得ることは難しい傾向です。

バイブレーション
中層からボトムの攻略に便利で、アピール力が強いのがバイブレーション。小型のメタルバイブや、バス用のボトムで立つタイプが使いやすく実績もあります。
根掛かりしやすい場所であれば、フロントフックをはずすか、ダブルフックに交換することをおすすめします。

Mリグ
「リグ」というとワームでの釣りを連想しますが、Mリグはハードルアーでの釣り。ラパラCD7のフロントフックをはずし、その部分にスプリットショットリグ用のオモリを装着。リアフックはダブルフックに交換し、上向きにセッティングすることで根掛かりを回避します。
沈めて巻いてくると、海底を這いまわるシャコなどの甲殻類のようにボトムをつつきながら泳いできます。
初めてこのルアーを見ると、どこがM字形状なのかな?などと疑問に思いますが、Mリグの「M」は考案者のイニシャルから。現在ではチニング専用のルアーも多数リリースされていますが、Mリグを使ってチニングの原点を感じてみるのも一興でしょう。

カヤックチニングのタックル
チニングは、比較的ライトなタックルで楽しむことができる点も魅力です。カヤックフィッシングとの相性をふまえてご紹介しましょう。
ロッド
現在は、各メーカーからチニング専用ロッドがリリースされています。全般的に食い込みが良い繊細なティップと、良型の引きに負けない強いバットが特徴。ファーストテーパーで7.5ftくらいの長さのロッドが主流といえるでしょう。
ただし、カヤックフィッシングで7.5ftの長さは、使えなくはありませんが少々長すぎるかもしれません。カヤック上での取り回しに優れる6.6ftから7ftのロッドが理想的です。
短めのチニング専用ロッドがあれば最適ですが、バスロッドやボートシーバスロッド、強めのライトゲームロッドも流用可能です。
リール
ベイトリールを使うかスピニングリールを使うかは、個人の好みで選んで問題ないでしょう。あえて区別すれば、軽量なトップウォータープラグを使用するならスピニングがおすすめ。2000~2500番のリールが適しています。
ボトムを攻める際のダイレクトな操作感を求めるならベイトがおすすめです。フロロ16lbを100m巻けるくらいの糸巻き量があるモデルを選べばOKです。
ライン
ラインはフロロカーボンラインかPEラインを使用します。フロロは12~16lb、PEラインは0.6~1.0号にリーダー16lb前後。根ズレが激しいポイントでは、リーダーを組み直す手間が省けるフロロ直結のベイトタックルが快適です。
おすすめカヤック
浅場に侵入することが多いカヤックチニングでは、船底をこすってしまう可能性もあるので、シンプルな手漕ぎカヤックか、破損を防止する機構を持った足漕ぎカヤックがおすすめ。
ここでは、筆者が使用するホビー製のカヤックの中からおすすめの一艇をご紹介します。
ホビーカヤック ミラージュ・パスポート12.0
シンプルなデザインながら、カヤックを手に入れてすぐに釣りに出かけられる装備をもつパスポートシリーズ。手頃な価格も大きな魅力です。

「ミラージュ・パスポート12.0」は3.6mの長さで、カヤックフィッシングに求められる安定性とスピードを確保。令和4年の法改正によって軽自動車にも積めるようになりました。
注目すべきは、2021年のモデルチェンジによって、「キックアップフィン」が標準装備になったこと。水中の障害物にぶつかっても、自動的にフィンが倒れて破損を回避します。
従来のミラージュドライブやプロペラ式の足漕ぎカヤックの弱点の一つであった、足漕ぎドライブの座礁や破損のおそれを払拭しています。カヤックチニングにぴったりの仕様ですね。

カヤックで釣った魚はおいしい!?
カヤックで沖に出て釣れた魚は、港湾部や河川の個体とちがいニオイが少なくおいしく食べられることが多いです。とくに潮通しの良い水質がきれいなエリアで釣れたら、ぜひ一度キャッチ&イートに挑戦してみましょう。
身近なフィールドでも気軽に狙えるチヌ・キビレは、「釣って良し、(場所によっては)食べて良し」の好ターゲット。みなさんも様々なルアーを駆使してカヤックチニングを楽しんでみてください。
<福永正博/TSURINEWSライター>
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