カヤックフィッシングの楽しみ方は人それぞれ。1人黙々とストイックに釣果を追い求める人もいれば、仲間と和気あいあいと楽しく釣りをしたい人もいるでしょう。
(アイキャッチ画像提供:HOBIE JAPAN)
カヤックは何人乗りまである?
まずは、カヤックには何人乗りのモデルがあるのか、その点からご紹介しましょう。
有名カヤックブランドのカタログをのぞいてみると、その多くは1人乗りモデルですが、たいてい2人乗りモデル(タンデム艇)もラインナップされています。
なかには、3人乗り表記のモデルもありますが、スペックをよく見ると大人2人乗り+子供1人のカヤックが多いですね。
また、変わり種として分割式のカヤックがあり、組み合わせによって1人乗りと2人乗りを変化させられるモデルも販売されています。
レジャー用のインフレータブルタイプには、2人以上乗れるものもありますが、フィッシングカヤックは、基本的に1人乗りモデルか2人乗りモデルのどちらかと考えて差しつかえないでしょう。
2人乗りカヤックは1人でも乗れる?
筆者もそうですが、「1人での釣行がメインだけど、たまには2人でカヤックフィッシングに行きたい!」という方はたくさんいます。では、2人乗りカヤックは1人でも乗れるのでしょうか? 2人乗りカヤック1台でどちらもこなせるならば、とても便利でうれしいことですよね。
結論を言えば、「可能ではある」という少し歯切れの悪い言い方になってしまいます。1人での釣行には、やはり1人乗りカヤックの方が使い勝手は良いと断言できます。
それは、2人乗りカヤックに1人で乗ると、シートやロッドホルダーがちょうど良い位置にこなかったり、小回りがきかなかったり、細かな部分で不満が出てくるケースが多いから。シートの位置にもよりますが、1人乗りに適したショートロッドでは、バウ(船首)を左右にかわせず魚とのやりとりに困ることもあります。
タンデム釣行がそれほど多くないと予想される場合は、2人乗りカヤックを購入する前によく考えて決断する必要があるでしょう。
1人乗りカヤックと2人乗りカヤックを徹底比較
それでは、1人乗りと2人乗りのカヤック、それぞれのメリット・デメリットをご紹介します。
イメージしやすいように、ホビーカヤックの「ミラージュ・コンパス」と「コラージュ・コンパス・デュオ」のデータを載せておきますので、参考にしてください。
ホビー ミラージュ・コンパス(1人乗り)
長さ:366cm
重さ(船体のみ):31kg
幅:86cm

ホビー ミラージュ・コンパス・デュオ(2人乗り)
長さ:411cm
重さ(船体のみ):41kg
幅:89cm

2人乗りカヤックのデメリット
ここからは2人乗りカヤックの欠点について触れていきます。
2人乗りカヤックの方が重い
1人乗りカヤックと2人乗りカヤックをくらべると、どうしても2人乗りの方が重くなってしまいます。カヤックの重さは、水に浮かべてしまえばそれほど気にならないものです。しかし、陸上での移動や車載などにおいて、やはり軽いに越したことはありません。
積載量が減る
上記データのように、1人乗りから2人乗りになっても長さが倍になるわけではありません。2人乗りカヤックは、どうしても乗員のスペースの分だけ船上が狭くなり、積んでいける荷物が少なくなる傾向があります。大型青物が入るような、大きなクーラーボックスを積んでいくのは難しいと考えておきましょう。
自由度が減る
1人乗り(=1人釣行)である何よりのメリットは、自由であることでしょう。「自由」という言葉にはいろいろな意味がありますが、ここで言う「自由」とは、他人に合わせる必要がないという意味です。
どこに釣りに行って、どんな魚を釣るかは自由。何時に出艇して、何時に釣りをやめるかも自由。朝起きて気が乗らなければ、釣りに行くこと自体をやめることすらできます。

時には我慢や妥協が必要
自由に行動できる1人乗りカヤックに対して、2人乗りカヤックはせまいスペースの船上で、2人きりで長い時間をすごすわけですから、時には我慢や妥協を強いられることもあります。
なかでも意外と大きな問題が「トイレ」。自分1人であれば、まぁ……海上でもどうにかなるのですが、すぐそばにパートナーがいる2人乗りでは気をつかいますよね。また、各人の体力や釣りに対する熱量のちがいによって、午前中で終わるか、夕マズメまで釣りをするかなどで意見が分かれることも。
安全面では、キャスト時にパートナーにフックを引っかける事故が起きないように十分注意する必要があります。
2人乗りカヤックのメリット
このように見てみると、2人乗りカヤックのデメリットばかりが目立つようですが、2人乗りならではのメリットもたくさんあります。

2人で協力しあえる
2人乗りカヤックは、単純に考えれば体力と動力が倍になるので、機動力が高くなります。大人2人が協力して全力で漕ぐと、なかなかのスピードが出ます。
どちらか1人が体調不良になったり、疲れきってしまったりしても帰還できることもメリット。万が一転覆した際も、救助しあえることはもちろん、2人でいる安心感からパニックになりづらくなります。
また、カヤックの準備・片付け・車載・移動などが楽になる点も良いところです。出艇場所までカヤックを引いて移動する際、1人では断念するような斜面や階段も、2人で協力すれば乗り越えることができるでしょう。
2人で思い出を共有できる
カヤックフィッシング中に起きた様々な出来事を共有できることも、2人乗りカヤックの大きな魅力。大きな魚を釣った喜びも、サメを見かけて怖かったことも、ほぼ同じ視点から見た思い出として共有できます。
1人乗りカヤック複数でカヤックフィッシングに行っても、次第に離れていき、結局バラバラに散ってしまうことになりがちです。「共有できること」は2人乗りカヤックならではのメリットといえます。
また、初心者に釣りのテクニックなどを教える際は、2人乗りの方が声がよく届き、パートナーの動作を把握しやすいため、アドバイスしやすいですね。

手漕ぎと足漕ぎの違いは?
以上のように、2人乗りカヤックのメリット・デメリットをご紹介しましたが、2人乗りカヤックのなかでも「手漕ぎと足漕ぎどちらのタイプを選ぶべきか」という問題もあります。
手漕ぎのメリットとデメリット
カヤックフィッシングを、「パドルスポーツ」としても楽しみたい方には手漕ぎモデルが向いているでしょう。
手漕ぎの2人乗りカヤックは、良くも悪くもパートナーとパドリングや方向転換のタイミングなどを合わせる必要があります。
パートナーとバッチリ息が合って、スイスイと動きまわることができれば、釣りをせずに漕いでいるだけでも楽しいアクティビティに。なかなかうまくいかないことを、2人でクリアしていく楽しさがあるといえます。釣行数を重ねていくと、パートナーとの「相棒感」のようなものが生まれてきて楽しいですよ。
反対に、慣れないうちは思い通りにカヤックが進まず、釣りどころではないこともあります。細かな点では、フロント側のパートナーがパドルでかき上げる水しぶきによって、リア側に座った人が濡れてしまいがちなところも気になりますね。
足漕ぎのメリットとデメリット
「今日はじめてカヤックに乗せる友人に、どうしても魚を釣らせてあげたい!」と、魚を釣ることにフォーカスするならば、足漕ぎの2人乗りカヤックが断然おすすめです。
足漕ぎカヤックならば、はじめて乗った30分後には釣りに集中できるほど操作が簡単です。推進力(ドライブ)と方向転換(ラダー)の機能が分かれているため、2人で息を合わせることがあまり必要ありません。漕いだ分だけ前進し、方向転換はレバーをちょっとひねるだけ。
手漕ぎと足漕ぎ、どちらが釣りに集中しやすいかといえば、足漕ぎカヤックに軍配があがるといってよいでしょう。あえてデメリットをあげると、価格が高くなってしまう点でしょうか。足漕ぎカヤックの心臓部で、最も複雑で高価なドライブ(駆動部)が1つ追加になるため仕方ないところですね。

おすすめの2人乗りカヤック紹介
今回は、筆者が愛用するホビーカヤックの中から、2人乗りモデルを2艇ピックアップしてご紹介します。
ホビー ミラージュ・コンパス デュオ
エントリーモデルのカヤックとしては、抜群の安定感とスピードを誇る「コンパス」のタンデムバージョンが「ミラージュ・コンパス・デュオ」。

前進のみのドライブと、バックも可能なドライブの組み合わせです。
2人乗りでバックなんて使うかな?と思う方もいるかもしれませんが、2人乗りカヤックにこそ必須といえる装備です。その理由は、バック機能を強力なブレーキとして使えるから。
ただでさえスピードが出るホビーカヤックを2人で漕いだ場合、かなり勢いよく突き進んでいきますが、意外と困るのはカヤックが止まらないことです。
魚探に反応があっても、ポイント上をスーっと通り過ぎてしまうのは、良くも悪くも水の抵抗が少ないミラージュドライブの知られざる弱点。バック機能を使えば簡単にポイント上に戻ることもできます。
ラダーを操作するレバーは、後部の左側にのみ装備されていますので、操作に慣れた上級者の方がリアシートに座ることをおすすめします。
ホビー ミラージュ・アイトレック14 デュオ
2人乗りカヤックのネガティブな要素である重量増。それをクリアするインフレータブル(空気を入れる)タイプがミラージュ・アイトレック14デュオ。船体のみなら約20kg、ドライブやシートなどを装備しても約33kgと、1人乗りモデル並みの軽量さです。
また、軽自動車での運搬が可能な点も魅力的。現在の法律では、車に積載できるのは車長の1.2倍までという制限があるので、本来なら全長417cmのカヤックは軽自動車には積めません。
しかし、インフレータブルタイプのアイトレック14デュオなら、たたんで車内に収納可能です。抜群の安定性と運びやすさを、2人乗りで楽しめる貴重なモデルといえますね。

2人乗りカヤックを試してみよう
今回は、2人乗りカヤックについて解説しました。正直なところ、1人乗りモデルよりも購入するハードルが高い部分はありますが、2人乗りならではのメリットも多数あります。
最近では、カヤックの試乗会やレンタルもあるので、ぜひ一度パートナーを誘って2人乗りカヤックを体験してみましょう。もしパートナーが乗り気になってくれれば、素敵なカヤックフィッシングライフが始まるかもしれませんよ!
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<福永正博/TSURINEWSライター>