現在人気の食用魚となっているものの中には、かつては見向きもされない存在だったものが少なくありません。

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注目が集まる「未利用魚」

現在、漁業における大きな課題のひとつとされているものに「未利用魚の活用」があります。

全国では様々な漁法で数多くの魚たちが漁獲されていますが、そのすべてが食用として流通するわけではありません。

見た目が悪いもの、美味しそうに見えないもの、数が揃わないものや小さすぎるものなどはなかなか活用の道のない「未利用魚」となっており、その多くが廃棄処分の憂き目にあっています。

未利用魚からスターになった魚「トウジン」 人気の秘訣は肝臓にあり?
未利用魚からスターになった魚「トウジン」 人気の秘訣は肝臓にあり?
未利用魚扱いされるタカノハダイ(提供:PhotoAC)

しかし、最近は主要漁獲物の水揚げ減少や、SDGsの考え方の浸透に伴い、このような未利用魚を活用しようという動きが出ています。各地で新たな魚のブランド立ち上げ、未利用魚にフォーカスした加工食品の開発などが行われており、たびたびニュースにも取り上げられています。

かつては「トロ」も捨てていた

未利用魚の活用について考えるとき、しばしば言及されるのが「かつてはトロも不人気部位だった」という事実です。

マグロのトロは、かつて冷蔵技術が発達する以前は、すぐに酸化して色や風味が悪くなってしまうこと、またそもそもかつては現在ほど脂のりの良さを尊ぶ文化がなかったことなどから喜ばれず、捨てられてしまうこともある部位でした。

未利用魚からスターになった魚「トウジン」 人気の秘訣は肝臓にあり?
未利用魚からスターになった魚「トウジン」 人気の秘訣は肝臓にあり?
トロの寿司(提供:PhotoAC)

それが戦後、冷蔵技術が発達して保存できるようになったこと、また日本人が脂っぽいものを好むようになったこともあって次第に「希少で美味な部位」へと変化し、今では高級部位となっています。

このトロのように「捨てられるもの」から「利用されるもの」「珍重されるもの」になった魚は少なからず存在します。

スターになった未利用魚たち

そのような魚の代表が「トウジン」でしょう。

トウジンは深海に生息するタラ類「ソコダラ」の一種で、深海性のタカアシガニの漁などで混獲されます。頭部が長くて尾にかけて細くなるという幽霊のような体型や、全身がザラザラの鱗に覆われている見た目などが敬遠され、かつては捕れても捨てられていたそうです。

未利用魚からスターになった魚「トウジン」 人気の秘訣は肝臓にあり?
未利用魚からスターになった魚「トウジン」 人気の秘訣は肝臓にあり?
トウジン(提供:PhotoAC)

しかしその身は水分と弾力に富み、刺身にすると独特の質感があって美味であること、また大きく肥大する肝臓が非常に濃厚であることが徐々に知られるようになり、水揚げ漁港近くの鮮魚料理点が提供し始めるとすぐさま大ヒット。地域の名物として知られるようになり、やがて美味な魚として知られるようになった歴史があります。

これ以外にも「和食だとあまり美味しくないが、フレンチに加工すると美味しいために値段が上がっている魚(ヒメコダイなど)」「釣り人の撒く餌を大量に食べた結果味が良くなり、流通するようになった魚(メジナなど)」といった形で未利用魚を脱しつつあるものがあります。

今後も同様の例が続いていくかもしれません。

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<脇本 哲朗/サカナ研究所>