海の中には、まるで魔法使いのように姿を変える生き物たちがいます。彼らは、周囲の環境に溶け込んだり、他の生物にそっくりになったりすることで、捕食者から身を守ったり、獲物をおびき寄せたりしているのです。

そんな驚きの擬態能力を持つ「海の擬態名人」たちの中から、代表的な3種のマジックを見ていきましょう。

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(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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砂に隠れるカレイ

カレイは、海底の砂や砂利の色に合わせて体の色を変える「保護色」の達人です。

平たい体の片側に両目が集まっているのが特徴で、海底にじっと横たわると、まるで砂の一部のように見えます。

「まるで海の忍者!」驚異の擬態能力を持つ海の生き物3種 護身だけでなく狩りのためにも活用
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擬態したイシガレイ(提供:PhotoAC)

この能力の秘密は、皮膚にある「色素胞(クロマトフォア)」と呼ばれる細胞。色素胞は、目で捉えた周囲の明るさや色の情報をもとに、内部の色素を広げたり縮めたりすることで、体の色を変化させます。

特に黒色を担当するメラノフォアなどが働くことで、周囲の環境に見事に溶け込むことができるのです。

砂地から岩場へ移動すると、数分から20分ほどで体色が変わることもあります。カレイの巧みな変身術は、まさに自然界のカモフラージュのお手本ですね。

砂に潜るのも得意

さらにカレイは、砂の中に潜るのも得意。目だけを出してじっとしている姿は、まるで忍者のようです。

敵から身を守るだけでなく、獲物を待ち伏せるためにもこの技を使います。うまく隠れて、甲殻類などのエサを一瞬で捕らえてしまうのです。

岩そっくりのオコゼ

オコゼは、ゴツゴツした岩そっくりの姿で獲物を待ち伏せる、隠蔽擬態のスペシャリストです。

体の色や形が岩の凹凸を見事に再現しており、じっとしていると本物の岩と見分けがつきません。

「まるで海の忍者!」驚異の擬態能力を持つ海の生き物3種 護身だけでなく狩りのためにも活用
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擬態したオニカサゴ属の魚(提供:PhotoAC)

この完璧な擬態のおかげで、近くを通る小魚や甲殻類はオコゼに気づかず、あっという間に捕食されてしまいます。

さらに、オコゼの背びれには強力な毒があり、不用意に触れると激しい痛みや腫れを引き起こします。場合によっては麻痺することもあり、まさに「隠れる+毒」のダブルの生存戦略です。

実は俊敏なハンター

オコゼの狩りの仕方も見事。獲物が近づいた瞬間、大きな口を開けて一気に吸い込みます。

そのスピードは人間の目では捉えきれないほど。擬態のプロフェッショナルでありながら、実は俊敏なハンターでもあるのです。

変幻自在のタコ

タコは、色や形を自由自在に変えられる、まさに変身名人。皮膚にある色素胞と筋肉を巧みに操り、周囲の環境に合わせて瞬時に体の色や質感を変えます。

「まるで海の忍者!」驚異の擬態能力を持つ海の生き物3種 護身だけでなく狩りのためにも活用
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擬態したマダコ(提供:PhotoAC)

岩そっくりに変身して隠れたり、海藻のように揺れてみせたり、一部のタコは他の魚の動きを真似することまで可能!

しかも、危険を感じると墨を吐いて敵の目をくらまし、素早く逃げるという必殺技まで持っています。

迷路を解くほど賢い?

さらに、タコはとても賢い生き物。迷路を解いたり、ココナッツの殻を持ち運んでシェルターとして使うこともあります。

状況に応じて最適な擬態を選び、敵を欺く知恵には驚かされるばかりです。

擬態の進化戦略

こうした擬態の技は、長い進化の過程で身につけた「生き残るための知恵」。敵から身を守ったり、獲物を捕らえたりするために、それぞれの生き物が時間をかけて進化してきました。

擬態は単なるカモフラージュではなく、ときには狩りのための武器にもなります。

カレイやオコゼのようにじっと身を潜めて待ち伏せするタイプもいれば、タコのように自在に姿を変えて敵をかく乱するタイプもいます。

海の擬態名人たちを見ていると、自然のすごさを改めて実感します。水族館などで彼らの見事な変身術を観察してみると、思わぬ発見があるかもしれませんよ!

<minto/サカナトライター>

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