釣りの世界では「ビギナーズラック」と呼ばれる不思議な現象がしばしば起こる。経験豊富な釣り人が苦戦する中、初挑戦の初心者が大物を釣り上げる――そんな場面を目にしたことがある人も多いのではないだろうか。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・檜垣修平)
ビギナーズラック
初心者が得る幸運を指す言葉。ゴルフで初心者が思いっきり弾いた球が風に運ばれホールインワン、野球なら勘で振り回したバットがボールに当たってヒット等たまたま上手く行くような事があるだろう。
上記のようなことはあまり起こることは無いだろうが、釣りの世界ではビギナーズラックと呼ばれる現象はあるあるだ。その釣りに初挑戦の人が竿頭、釣りに不慣れな女性が一番大物を釣り上げた等はよく聞く話だ。
だがそれは本当にただの運だけだろうか?もしかすると起こるべくして起こった偶然なのかもしれない。

起こるべくして起こる偶然
その釣りに精通した人が苦戦する中、なぜか初心者に大物が掛かる現象というのはただ単にその人が運が良かったからという理由だけだろうか。
落ちパクはさすがにタイミングよく活性の高い魚の目の前に仕掛けが落ちたまさにラッキーだと思うが、同じ仕掛けをみんな同様に垂らしている中、初心者にだけ魚が食いつくというのはなにか運以外の物を感じざるを得ない。
それらを生んで片付けるのではなく論理的に見てみよう。

慣れない手つきがかえって奏功
ルアーフィッシングにおいてただ巻きというのは最もスタンダードかつ奥の深いアクション。基本的には一定速で巻くのがセオリーであるが、初心者にとってはそれが難しい。時には横風にさらされ、船の上で波に揺られ、竿先がブレればルアーの挙動は一定ではなくなる。
だが初心者の不規則な挙動が時に良い誘いとなり魚を呼ぶことがある。釣りに慣れてくると、何も頭で考えずともそれら外的要因を補正出来てしまうが故に、魚のやる気スイッチを入れきらない場合がある。
放置が正解
基本的には誘いを掛けることが釣果に繋がりやすいマダイテンヤのような釣りで、渋い中初心者の仕掛けにマダイが掛かることがある。
周りが頻繁に誘いのアクションを掛ける中、船の揺れで半分グロッキーになっていて竿を動かしていない初心者にマダイが掛かる。
ビギナーズラックで53cmバス
これは一例だが、ビギナーズラックにはそれなりに起こる理由があるはずである。この記事を書いていて私自身に起こったビギナーズラックをひとつ思い出した。当時の私はソルトの釣りにはそれなりに精通していたがバスはほぼド素人。バスロッドすら持っておらず、シーバスロッドで琵琶湖に向かった。
足場も良くアクセス良好ないかにもハイプレッシャーエリアで、9ftのシーバスロッドを振り回していたら53cmが釣れてしまった。まさにビギナーズラックであるが、これはよくよく考えたら周りがベイトロッドで誘いを重視した釣りをしている中、私だけがロングロッドで重いテキサスを竿抜けポイントまでド遠投をしていたから釣れたのであろう。
アユの友釣りは別物?
様々なプロとロケで釣りをする機会のある某大手メーカーの方が言っていた話だ。海での釣りはやはり運とタイミングが絡むから、たまにプロに釣り勝てる時があるそうだ。だが、ある釣りだけはプロにはどうやっても勝てないらしい。

その釣りとはアユの友釣りである。私は友釣りに造詣が深くない為あまり語ることはできないのだが原理は知っている。オトリ鮎を狙いのアユのテリトリーにいかにうまく誘導するか、それは運ではなく鍛錬と経験による、運の介入する余地のない技術がモノを言う世界の様だ。
<檜垣修平/TSURINEWSライター>
