SNSで話題沸騰の「怖い魚」。人間相手にも襲いかかってくる厄介ものの正体は「カワハギ」の一種です。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
カメラに向かってオラつく魚が話題
先月末頃、XなどのSNSでとある「恐ろしい魚」が話題となりました。大元となったポストの動画で写っていたそれは、まるで聖飢魔IIのライブの参加者のメイクのような恐怖感を煽る風貌をしています。
それだけではなく、口の中には丈夫そうな歯が目立ち、その口を開けて水上にいる撮影者を威嚇するような素振りも見せてきます。サイズもかなりありそうです。

我々にとって根源的な恐怖を煽ってくるこの魚は、ゴマモンガラという名前の魚です。九州以南の浅い海に生息し、釣りで顔を出すこともよくあります。
注意が必要な怖い魚
この魚が怖いのは見た目だけではなく、むしろ生態を知るともっと怖く感じられるでしょう。というのこの魚は、人にも容赦なく襲いかかってくるからです。
ゴマモンガラが含まれるモンガラカワハギの仲間には、攻撃性が強いものが少なくありません。皮膚と鱗が一体化した強靭な外皮に包まれていて外敵が少なく、気性の荒さも相まって自分より大きなものに対しても怯まず向かっていきます。

特に繁殖期が近くなると、目に入ったものすべてに攻撃性を示し、ダイバーが噛みつかれてしまう事故も発生します。ゴマモンガラはモンガラカワハギの中でも特に大きく、その分歯も大きいので噛まれると大怪我に繋がりかねません。
食べても大丈夫?
そんなやたらと恐ろしいゴマモンガラですが、生息地ではなんと食用にされることもあります。沖縄では切り身、むき身で流通することもあるそうです。
モンガラカワハギ類はカワハギ同様に弾力のある白身をしており、見た目に似合わぬ淡白でさっぱりとした味わいがあります。生食ではちょっと無個性ですが、煮付けやバターソテーなど濃い味付けの加熱調理にするととても美味です。

ただし、一般的なカワハギと違い、肝臓は食用にすべきでないと言われています。これは南方系の魚が内臓に、パリトキシンなどの蓄積毒を持つことがあるからです。ゴマモンガラの肝臓も大きくて非常に美味しそうですが、食べないのが無難でしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>