釣りに出かければ誰しも「良い魚を釣りたい」と思うもの。それは初心者も上級者も同じだ。

狙い通りのターゲット、大物のサプライズ──歓喜の形は人それぞれだろう。その瞬間を振り返るうえで欠かせないのが「写真撮影」である。今回は元フォトグラファーであり、今もメディアに寄稿する筆者が「良い写真」を撮るための実践ポイントを紹介する。

(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・小林卓)

「夜にフラッシュはダメ?」釣った魚を美しく残すスマホ写真撮影...の画像はこちら >>

釣りと写真

ここ10年で社会を取り巻く環境は大きく変化した。それは産業などの技術もそうであるが、一番変化したのは「情報の量と伝達」である。

これまで釣りにおける情報発信の仕方は主にTVや雑誌(紙媒体)、またネット環境においてはブログであった。TVや雑誌にて情報を発信するには、その人個人の信頼や実績が必要不可欠なことが大前提。これは関わる企業やそれに出資するスポンサーが存在するため、当然な理由である。

また、当時のネット環境でブログでの情報発信はプラットホーム(ブログサイト)などは存在していたものの、敷居がまだ高かった。その理由にブログは文章力が求められるため、気軽に投稿するものではなく、根気よく読者に読んでもらえる記事を投稿しなければならなかったからだ。

SNSの登場

この情報発信の勢力図を大きく変化させたのが、SNSである。SNSは文章力を大きく求めず、「誰でも気楽に短文で投稿できる」という利点があり、ブログよりも投稿の敷居が格段と低くなった。

その代わりに求められるのが写真であり、この写真の印象によりそのユーザーのSNSが閲覧されるかどうかの可否が決まるといっても過言ではない。ゆえに、SNSにおいて写真はマストなのである。

写真は構図が大事

写真を撮影する際にぜひ気をつけてもらいたいのは「写真構図」。写真構図とは、被写体(魚やタックルなど)を綺麗に見える角度や位置、写真の余白を考慮しながら配置を決めて魅力ある写真が撮影できるように配置することであり、実は良い写真を撮影するには写真構図が8割以上占めていると筆者は考えている。

この構図さえしっかりと出来ていれば、良い写真を撮影する準備はほぼほぼ完成したと言ってもよいであろう。

撮影機材はスマホでOK

では画質が良い写真を撮るために高性能が一眼レフカメラやデジタルカメラが必要になるのでは……と考える読者もいるかと思うが、そんなことは全くない。お持ちのスマホで十分である。

実は現在のスマホカメラはかなり優秀で、画素数もかなりのものである。変に慣れていない機材で撮影するより、スマホカメラのほうがよほど効率的で良い写真が撮れるのだ。

もし写真撮影に慣れてきて、より写真に表現を求めたくなれば、撮影機材を検討するという形が良いと思う。まずは手持ちのスマホカメラのシャッターを意識しながらたくさん切っていこう。

構図を理解しよう

話を少し戻すが、構図を理解するにはどうするのか。これはネット検索で「構図 取り方」などの検索ワードで調べれば、解説記事がたくさん出てくるので見てみるのも手だ。ここでは筆者が撮影した写真をもとに、どのような意図で撮影したのかを説明を交えながら解説したい。

グリッド線を活用

いきなり構図の取り方を考えるといっても、当然どうして良いかわからない。そのためにまずは構図を取るための補助として「グリッド線」を活用する。

グリッド線とは、カメラ画面(プレビュー)に表示される補助線のこと。4本の線が画面に表示され、中央部でこの線が重なる4点に被写体(魚やタックル)を合わせたり意識することで構図が良くなる。

「夜にフラッシュはダメ?」釣った魚を美しく残すスマホ写真撮影方法を徹底解説
「夜にフラッシュはダメ?」釣った魚を美しく残すスマホ写真撮影方法を徹底解説
写真の例(提供:TSURINEWSライター・小林卓)
「夜にフラッシュはダメ?」釣った魚を美しく残すスマホ写真撮影方法を徹底解説
「夜にフラッシュはダメ?」釣った魚を美しく残すスマホ写真撮影方法を徹底解説
グリッド線を表示(提供:TSURINEWSライター・小林卓)

1枚目の写真が実際にスマホで撮影したもの、2枚目がグリッド線を出したプレビュー画面のスクリーンショットである(プレビュー画面スクリーンショットはカメラ撮影ではないため、スクリーンショットを撮る際に手ブレに若干なってしまっていることはご容赦いただきたい)。

このイワナの写真は御覧の通り、左下の点に目を当て、頭から尾鰭に上がっていくように意識をした。それに並行するようにタックル(ロッドとリール)を並べた。

トリミングで調整

右下部分に空間ができているが、この部分は例えば文章で写真の上にタックルデータを載せたりすると、雑誌などで見かける釣果写真のようになる。また気になるのであれば、横写真の4:3の比率で撮影しているので、同じ比率でトリミング(写真のカット)をすれば、魚が目立つようになる。

最初はこのように引き目で撮影し、後にトリミングで調整していけば大きな失敗はない。大きくトリミングをしなければ写真容量の心配もなく、SNSで掲載するにも問題はない。

「夜にフラッシュはダメ?」釣った魚を美しく残すスマホ写真撮影方法を徹底解説
「夜にフラッシュはダメ?」釣った魚を美しく残すスマホ写真撮影方法を徹底解説
トリミングで調整した写真(提供:TSURINEWSライター・小林卓)

グリッド線の出し方

グリッド線の出し方はスマホによって異なるが、筆者の場合はiPhone12 miniのため、[設定]→[カメラ]→[グリッド線]で進み、オンにすれば表示される。

今回は横写真で紹介したが、縦写真も同じでグリッド線の交わる4点を意識すれば構図は取ることが可能だ。

魚の魅力を引き出そう

グリッド線の使い方に慣れてきたら、ワンランク上の写真を目指してみよう。人間は文章や写真を見る際に「Zの法則」「Nの法則」「Fの法則」という視点の動きがある。

何かの頭文字?と思われるかもしれないが、これはそのままの「Z」「N」「F」の文字を書く流れに視線が動く法則のこと。これを先ほどの写真に当てはめれば、タックル(ロッド)→タックル(リール)→イワナ(目)→イワナ(尾鰭)という流れになり、Zの法則に当てはめているのである。

ロッドは少ししか見せないことでまず見た人に疑問を投げ、次にリールを見せることでタックルと認識してもらう。そして一番の主役であるイワナの目を魅せて、釣果を請求して尾鰭で完結……と文章で解説するならこのような内容となる。

この上記3つの法則は広くデザインする際に使われ、日常になじんでいる。余談であるが、いうなればこの記事の構成は「Fの法則」になるであろう。

敢えて全体を見せない

お世辞にも今回紹介したイワナはさほどサイズが良いわけではない。特に1枚目の写真では小ささが目立ってしまうだろう。そこであえて魚体を見切らせてみたのが次の写真だ。

「夜にフラッシュはダメ?」釣った魚を美しく残すスマホ写真撮影方法を徹底解説
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全体を見せない構図(提供:TSURINEWSライター・小林卓)
「夜にフラッシュはダメ?」釣った魚を美しく残すスマホ写真撮影方法を徹底解説
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この写真もグリッド線を活用(提供:TSURINEWSライター・小林卓)

スクリーンショット時に魚が若干動いてしまったが、同様に魚の目をグリッド線左下に置いて、ルアーとイワナの顔を主役にしてみた。こうすることで魚のサイズ感がわからなくなり、よりその魚の模様であったり表情が反映されるようになる。

タックルデータその1

ロッド:テンリュウ レイズインテグラルRZI50L-4
リール:アブ カーディナル33(改)
ライン:ヤマトヨテグス ファメル トラウトサイトver. 2lb
リーダー:ヤマトヨテグス ファメル フロロショックリーダー 4lb
ルアー:DUO スペアヘッドリュウキ38S

ナイトゲーム時の撮影のコツ

これまでのことを踏まえて、ナイトゲーム時はどのように撮影をしていけば良いのか。基本の構図の取り方は何も変わらず全く同じであるが、夜ということで光の使い方が大切になってくる。

フラッシュは不要

夜なのでフラッシュを使って……となりがちだが、実はフラッシュだと光が正面から被写体(魚)に直線的に当たってしまうため、良い写真が撮れないことが多いのだ。

経験として、魚の目が光ってしまったり、釣り以外で人を撮影したときに赤目になってしまったり……ということはないだろうか。これこそが光が直接当たりすぎているために起こる現象なのだ。

後ろから光を当てる

どのようにすればナイトゲームで綺麗な写真が撮れるのか。答えは「被写体(魚)の後ろから光を当てる」ということになる。ナイトゲームならば手持ちのヘッドライトが必ずあるだろうから、そのヘッドライトを手で持って魚の後ろから光を当ててみよう。

この際に必ずスマホのカメラ画面を確認しながら、光源(ヘッドライト)を近づけすぎないようにするのがポイント。今市販されているヘッドライトはLEDがほとんどであるからだ。

LEDは電球の光とは異なり、直線的に光が当たるため、近づけると光が当たっている部分のみ明るく、周辺は暗いまま。周りも明るく照らせるように、画面で確認しながら離して調整していこう。

「夜にフラッシュはダメ?」釣った魚を美しく残すスマホ写真撮影方法を徹底解説
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LEDで照らして撮影(提供:TSURINEWSライター・小林卓)

このカサゴの写真は上記方法で撮影したもの。タックルの影が魚体スレスレにかかってしまったため、光をもう少し上からにしてもよかったかもしれない。このように影との調整も必要であるが、基本的に自分の手で動かしながら行うので調整はさほど難しくはない。

タックルデータその2

ロッド:ヤリエ フォルゴーレ FG-623UL
リール:ダイワ 19バリスティックLT2000SS-P
ライン:ヤマトヨテグス ファメル フロロフラッシュレイズ 2lb
リーダー:ヤマトヨテグス ファメル フロロショックリーダー 4lb
ワーム:ヤリエ アジ爆ワーム 1.8インチ
ジグヘッド:ヤリエ アジ爆ジグヘッド 0.5g

筆者のおすすめのライト

ヘッドライトでも十分に撮影は可能であるが、筆者は以下写真にあるライトを愛用している。

「夜にフラッシュはダメ?」釣った魚を美しく残すスマホ写真撮影方法を徹底解説
「夜にフラッシュはダメ?」釣った魚を美しく残すスマホ写真撮影方法を徹底解説
筆者愛用のライト(提供:TSURINEWSライター・小林卓)

このライトはネット通販でも購入できるし、近年ではホームセンターやカー用品店でも見かけるようになった。光量も十分に確保され、カラビナ一体型でD管に取り付けが可能、USB充電式なのでクルマ移動の際に充電をしている。

ヘッドライトの電池が切れてしまった際、代役まではいかないにしてもピンチヒッターとして使用することができるため、持ち歩いて損はないのでおすすめだ。

釣りと一緒に写真も楽しもう

この記事を読んでいただき、より多くのアングラーの役に立てればうれしい限りである。撮影する際は周囲と魚に配慮をしながら読者の良い釣行、ならびに良い写真撮影の一助となることを心から願っている。

<小林卓/TSURINEWSライター>

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