釣り人なら誰でも憧れるマグロ。今年は、大型のキハダマグロが仕留められています。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・近藤惣一郎)
基本を徹底することが重要
8月1日に開幕した相模湾キハダマグロ。8月中旬からコマセへの反応も良くなり、特に今年は概ねサイズが良く、9月中旬からは40kg、50kg級も仕留められています。とかく、相模湾のキハダマグロはヒットすることも、取り込むことも運が大きく左右すると考えられています。
しかし、今シーズンの釣果を観ると、同じ釣り人が釣行ごとに確実にキハダを仕留めている傾向があります。私自身もキハダがコマセに反応するようになった9月10日の釣行では3度ヒットし30kg前後の3本のキハダを仕留めることができました。

食い気のある魚の群れに出会えば、他の釣り同様、相模湾のコマセで狙うキハダマグロ釣りも、『基本』をしっかりこなすことで、運では無く、狙い通り大物を仕留められるのです。その『基本』と、ヒットした大物を逃さないための留意点をお話しさせていただきます。
確実な強度のタックルと仕掛け
例えばキハダの大きさが30kgとしてもヒットややりとりでの瞬間的な引き込み力は更に大きくなります。せっかくヒットしても針結びや道糸、天秤、ハリス、各接続部の強度に一カ所でも弱い部分があると、大きな魚はそこを必ず隙を突いて逃げてゆくのです。
例えばキハダが掛かり20号のハリスが切れた時「もっと太いハリスが必要だった」と単純に考えるのは間違いです。同じ力で魚が引き込んでも、ハリスに掛かる負荷はロッドの硬さやドラグ調整、道糸の太さ、クッションやリーダーの有無で変わってきます。

キハダを確実に仕留めるなら数10~100m以上出る道糸の強度は重要です。私は12ブレイド12号に信頼をおき使用しています。同10号でもそれ自体十分な強度があるのですが、乗船中に他者とのオマツリで傷付くリスクも考えての選択です。ただこの12ブレイドは編み込み繊維の構造が特殊でPEラインの弱点である擦れや傷にも強い優れたラインです。

南方延縄結びと管付大針結び
更に前日までに道糸をチェックして少しでも傷があれば、そこから先の部分は惜しみなくカットしましよう。仕掛け作りは当日船上で行うのでは無く、乗船までにしっかり準備していなければなりません。針結びは自信を持てる結び方をベテランさんや船長に学んで一つでいいので確実に習得しましょう。私の針結びはタタキ針なら『南方延縄結び』。管付針は『管付大針結び』です。

ショックリーダー
ハリスと天秤を接続するサルカン類もハワイアンフックなど強度が高いものを用い、ハリス端に内径0.8~1mmの強化チューブを被せ、漁師結びでサルカンに結んでいます。強化チューブを被せるだけで強度は格段と上がります。
また大物泳がせ釣りでも道糸の先にはショックリーダーを結びますが、コマセキハダ釣りでもショックリーダーは欠かせないと私は考えています。具体的には50号ナイロンリーダーを3mつけています。
リーダーと道糸の結束
相模湾のキハダ釣りは、初心者でもチャレンジできる釣りで、その中には道糸と天秤を直結びしている釣り人も見かけます。これだと運良く取り込めることはあっても、マグロがヒットしたときや、やりとりの際にタックルシステムに大きな衝撃が加わり、力を緩衝できずに針やサルカンなどいずれかの接続部で切られてしまう確率が高くなります。
リーダーと道糸の接続強度も針結び同様非常に重要です。この結びに不安があると、大物どころか、カツオでさえ、スッポ抜けて逃してしまいます。
摩擦系結びならルアーフィッシング定番のFGノットなど、針結び同様、どんなものでも良いので確実にできる結び方を一つマスターしましょう。最近は便利なリーダー結び器具やリーダーの端がはじめからループ処理されているものも市販されています。これなら道糸の先端にループを作り、ループtoループで安全確実な接続が初心者でもできます。
どうしてもリーダー結びに不安がある人は道糸と天秤の間に4mm径1mのクッションゴム(両端に強度が高いサルカン附属)を装着する方法もあります。
自分が結んだ針、作りあげたシステムで大物を釣りあげる経験が、より大きな自信になり、その後もコンスタントに大物を仕留めることにつながって行くのです。
つけエサの状態は常に良好に
どんなに高価なロッドやリールで釣っていても、魚は針に付いている付け餌のオキアミしか観ません。色が悪かったり形が崩れている付け餌ではヒットしません。大きなものが有利にはなりますが、多少小さくても抱き合わせや房掛けなどでアピール度は高められます。
コンスタントに魚を釣ってる人は付け餌の状態をベストに保つ努力をしています。オキアミは最適な解凍状態でもっとも容積が大きくなります。溶かしすぎや干からびたものは勿論、凍っているものも良くないです。
コマセワーク
今シーズンの傾向として、食い気のある良いナブラに出会せば経験のある同じ釣り人が確実に何度もヒットさせています。それは、正確なタナ取りと状況に適したコマセワークができているからです。船長の指示タナは必ず守ります。例えばハリス6mなら、船長の指示タナからハリス分の6mから半分の3mビシを余分に降ろし、コマセを振りながら指示タナで待ちます。
潮の速さや魚の活性に応じて降ろす深さやコマセの撒き方は調整します。私は潮が緩い時はハリスマイナス1~2m、速い時はハリス長半分位を落とす目安にしています。
コマセの振り出しは、他の釣り人の傾向も観察し、仕掛けを降ろしてすぐにヒットする時とじっくり待ってヒットしてくる時を見極めて、ビシ窓の調整やサオをしゃくる強さで変化を付けています。当日のアタリパターンを掴めれば、他のコマセ釣り同様、良いナブラに当たれば連続してヒットしてくるのが今年の傾向です。
やりとりの基本
ヒットした際、魚を逃す大きな要因として締めすぎたり、逆に緩過ぎるドラグ設定があります。締めすぎは魚が勢い良く走れば当然ですがそれだけラインシステムに大きな力が急激にかかりラインブレイクのリスクを高めます。
しかし、針掛かりした瞬間やファーストランの時ドラグが緩過ぎると糸が容易に出過ぎ、ラインテンションが保てません。このことでフッキングが甘くなったり、針が飲まれ魚を逃すのです。
ドラグ設定が重要
前述のように針結びを含めしっかりとした強度の仕掛けシステムで挑めば、ラインやハリスに傷が付いていたりやキハダに針を飲まれ無い限り、システムがブレイクして魚を逃すことはないのです。アタリを待つ際のドラグ設定はある程度強めが基本です。グッと手でラインを引きだしてギリギリ糸が出るか出ないか程度のドラグ設定で私はやっています。

アワセは確実に

キハダがヒットした時は、引き込むアタリならそのままロッドをシャクって閂にフッキングさせるべくアワセを入れます。ただ喰い上げのアタリの場合は素早く糸フケを巻き取ってラインが張った段階で確実にアワセを入れなければなりません。
魚がどんどん糸を引っ張り走る場合は慌てず走らせます。50~150mとその時の魚によってこのファーストランの距離は違ってきますが、ファーストランが短いから小さい魚とは限りません。
ファーストランが止まった段階で、ドラグを少し締めて様子を観ます。更に走る場合は無理せず糸を出します。魚が弱ると糸の出が止まり回旋運動に入ります。これが攻守交代のタイミングです。徐々にドラグを締め込みつつ、手巻きなら巻き上げポンピング動作、電動なら中速程度でラインテンションを一定に保ち巻き上げて行きます。
30kgを越すキハダでもファーストランが50m位で止まるものもありますがそういう魚体に限って、まだ弱っておらず勢いよく浮き上がって泳いだり、再び潜ることがあります。
糸ふけはすぐに巻き取ろう
浮き上がりの時は魚が付いていても糸フケが出来てあたかも魚がバレたように感じる場合がありますが、この時こそ巻き上げスピードを上げてどんどん糸フケを取らないと本当に針が外れ逃してしまいます。現場で良く起こるバラシのパターンです。
再び潜って走り出す場合でも弱気になってドラグを緩めるのはバラシの原因になります。
中乗りさんや船長が駆け寄って現場でもアドバイスをしてくれることがほとんどですし、アタリの出方、その後の魚の動きも実際は様々です。ですから臨機応変な対応が求められますが、私は ここに記したことを基本にキハダとやりとりしてきました。
次のページでロッドのパワーについて
ロッドパワーは弾性と硬さ

自分のファイティングスタイルに適したロッドの調子、強さを選択。「ロッドにはパワーが必要」、勿論そうなのですが、パワーとは何か、パワーだけで良いのかという話をさせていただきます。
どんな力が加わってもびくともしない『硬さ』がパワーだとしたらそれは間違いです。ロッドには魚の引きに応じてスムーズに曲がり込むと同時に、力が弱まった時にはスムーズに復元する『弾性力』、これに加えて、魚に振られないためのバットパワーが大物ロッドには必要なのです。それらが兼ね備わり、ハリス切れや針外れでのバラシ無く、魚が仕留められるのです。
電動リールを使う理由
手巻き両軸リールの手持ちスタンディングスタイルで大物に挑むベテラン大物釣り師は、バットの手前まで派手に曲がり込む軽量ロッドをポンピングして魚とのやりとりを存分に楽しむ傾向があります。勿論、それが本来の大物釣りといえましょう。
ただ 私が体力も筋力もある私が大物釣りで敢えて電動リールを用いるには、7月に掲載した【電動リール使用のメリット】で書かせていただいたようにそれなりの理由があります。
電動リールで大物とやりとりする場合、特に一昨年登場したダイワ・シーボーグ800MJのような非常に強い巻上力のある電動を使用する場合は、手持ちスタンディングであっても、ポンピングせず、サオ先を固定しつつ、直にサオの弾力と性能を活かし、ドラグと巻上速度をこまめに調整し、常に一定のラインテンションの電動巻き上げを行うことで大きな魚でも引き寄せられます。
バッドパワー
過去にはあまり意識されてきませんでしたが、この観点から、ハイパワー電動リールで大物を狙う場合は従来の大物ロッドに比べ、ロッドの中央部にもパワーと張りがあったほうが良いと考えます。私が昨年からシーボーグ800MJに組み合わせるマッドバイパースティングはまさしくその調子の大物ロッドです。
派手なポンピングを行わずこのスタイルで魚とやりとりすると魚の動きが常に正確にサオ先の目感度と手元に伝わる手感度で把握できます。
また魚を暴れさせないことでサメに襲われるリスクも少なくできます。やりとりの時間を短くできれば体力も温存でき集中力も持続できます。また、他者とのオマツリも減り、貴重な船全体の釣り時間も増やせるのです。仕立てでは無く、乗り合いの場合、特に電動リールを活用した釣りは、自分にとっても、周りにとっても、とても恩恵があるものになると考えています。

最後に

難しいことを当たり前にするためには深く考え、そして行動に移したくさんのことの積み重ねる必要があります。
自分を信じる、信じ切れるための努力を行い、周りの人も信じる。全てが重なったときに物事は成就します。キハダを釣りあげることを目指し、皆さん頑張りましょう!

<近藤惣一郎/TSURINEWS・WEBライター>