天秤(テンビン)は投げ釣り、チョイ投げ、船釣り、磯からのカゴ釣りなど広いジャンルで親しまれてきたアイテムです。仕掛けの絡みを防ぐ目的で使われる事が多いですが、それだけではなく釣り物ごとに違った役割があります。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWS関西編集部・松村計吾)
釣りの仕掛けに使用する「天秤」とは?
「天秤」といえば一般的には、荷物を運ぶ「天秤棒」や、重量を測るための「天秤ばかり」などのイメージが強いかと思いますが、釣りの仕掛けに使う天秤は、脚が出ている形が似ているくらいで、役目は違うものになります。
釣り用天秤の基本的な役割
釣り用天秤の大方の役割としては仕掛けを投入する際に絡みを防ぐアイテムで、特にハリスが長い場合によく使われます。
海中での仕掛けをイメージすると釣りの仕掛けを投入する際、投げる(=空気抵抗がある)、海中へ仕掛けを沈める(=水の抵抗がある)時、ハリスに使用する糸自体は軟らかいので、空気や水の抵抗に負けて折れ曲がり、竿からの道糸やリーダーなどに絡みついてしまいます。それを防ぐために使われるというのが基本です。
釣り用天秤は多種多様
天秤の大小は、その釣りの「規模」によるところが大きいのはいうまでもありません。軽い仕掛けを投げるチョイ投げの釣りで、長さ60cmもあるようなステンレス製の天秤を使えば、それだけで重量オーバーです。

逆に脚の長さが5cmほどしかない天秤を、ハリスの全長が15mもあるような船釣りで使用すると、天秤の意味がありません。
また、形状でいうと脚が軸に対して片方しか出ていないのが一般的な片天秤、やじろべえの腕のように両方に突き出ているのが両天秤と呼ばれる形状で、片方しか出ていない天秤はアルファベットの「L」の字に形が似ているので「L字型天秤」もしくは「L型天秤」と呼ばれます。用途によって素材や脚の硬さ、形が変わってくるので釣り物によって使い分けるのが重要です。
船釣り用天秤
船釣りで天秤を使用する釣りの代表はマダイや青物、イサキなどを狙った「カゴ釣り」や「天秤吹き流し釣り(関西ではズボ釣り)」と呼ばれる釣り方です。この釣り方で使われる天秤は脚がL字型(ストレート型)になったタイプと、もう一つ、脚が丸く半月型(弓型)になったタイプがある。
特徴としては脚がストレートなタイプは素材が軟らかく、半月型になったものは比較的硬い素材が使用されている点です。
L字型天秤のメリット
2つの素材・形状で、実は使い方も多少変わってきます。軟らかな素材を使ったものが多いL字型天秤の場合、魚がヒットした時には天秤の脚が曲がり込んで多少の送り込みが可能になり、違和感を与えず食い込みが良い点が挙げられます。

また、魚がエサを食べて仕掛けを引っ張ると、道糸とハリスが直線に近い形となって引っ張られるため、竿や道糸にアタリが伝わりやすく感度がいいこともメリットです。そのため、L字よりも時計の4~5時方向まで脚に角度がついた、チドリ型などとも呼ばれる感度重視の天秤も販売されています。
半月(弓)型天秤のメリット
硬い脚の半月型天秤の場合、魚がエサを食べて引っ張るといったんは魚の引きに負けて、丸い脚が伸びるような形になった後、戻る反動で天秤自体が仕掛けを引っ張ることになります。実はそれが自動的なアワセにつながるのがメリットです。

船釣り用天秤の選び方
軟らかな天秤で感度や食い込ませることを重視するのか、それとも向こうアワセで確実なフッキングをさせるのか……は、置き竿で狙うか、手持ちで狙うかなどその時の状況次第で使い分けるのがオススメです。私も2タイプの天秤を常にタックルケースに常備しています。
投げ釣り用天秤
次に投げ釣りやチョイ投げに使う天秤を紹介します。この釣りの場合、ともにオモリが底に着底した状態で釣るのが基本なので、船釣りでの使用方法とは少し変わってきます。

遊動式と固定式が存在
投げ釣り用の天秤で大きく分かれるのは固定式と遊動式です。固定式の付け方は天秤の上部に道糸、脚の先に仕掛けを接続することで天秤を介するスタイル。逆に遊動式は道糸と仕掛けがダイレクトに接続されていて、そのライン上に天秤の上部と脚先の環が通っている状況になります。
固定式のメリット
仮に海底にある固定式の天秤で仕掛けに魚が掛かった場合、魚が引っ張っていこうとすればオモリが移動しないので、魚はオモリごと引っ張ることになります。その途中で違和感を感じてエサを放す魚も多いので、どちらかといえばエサを瞬時に吸い込んでくれるキスなどの釣りに向いているでしょう。

固定式の場合は、船釣りで半月型の脚の天秤を使うのと同じで、魚がエサを食べて引っ張れば、脚が伸び、戻る反動で自動的にアワセが入る便利な仕組みになっています。
遊動式のメリット
逆に大きなエサ、ハリでしっかりと食い込ませてからアワせるために違和感なく仕掛けを送り込んでいきたい釣りの場合は遊動式が有効になります。

送り込んでいける遊動式の場合は、脚の素材の硬さや形状についてはあまり関係ありません。どちらかといえば、投入時に空中での仕掛け絡みを防いでくれるのに特化した方へと発展しています。
脚形状は数釣りなら半月型
船釣り同様、チョイ投げ用の天秤の中にも脚がまっすぐな「L字型」と「半月型」があり、総じて半月型の天秤の脚は少し軟らかい設定で、1度伸びた後の戻る反動が有効になっています。

固定式の釣りの場合、多くはアタリがあれば自動的に天秤のハリがアワセを入れてくれることを考慮して、大きなアワセを入れることは少ないです。どちらかというと、アタリがあっても釣り続け、1投で多魚を狙うキスの数釣りなどで多用されます。つまり、キスの群れに当たった時に、鈴なりで釣れるのは、天秤の力が大きいといえるでしょう。
感度はL字型や逆V字型
感度は船釣りと同じくL字型などのストレートタイプの脚に軍配が上がります。より微細なアタリを取りたい場合に有効なのが、海底を引きずる時に道糸、脚、仕掛けが一直線になる「逆V字型」の天秤。ただし、魚が食った時にダイレクトに竿の硬さも魚に察知されるので、この釣りも軽い即アワセで掛けるのが基本です。特にライトな竿と仕掛けを使うチョイ投げに相性が良いです。
状況に応じた使い分けが重要
船釣りと投げ釣り、チョイ投げを例に挙げて天秤の役目を紹介しましたが、釣りにおける天秤の種類や機能はまだまだ奥深く、先人たちの経験と知識が詰め込まれたアイテムです。
一見形こそ似ていても、微細な変化による魚へのアプローチ方法の違いを考えるのも楽しく、理論が分かれば釣果を伸ばすヒントになるでしょう。
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<松村計吾/TSURINEWS編>
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