2月14日はバレンタイン。私たち人間は愛情表現にキスをしますが、サカナの中にもキスをするサカナがいます。

しかし、このサカナは愛情表現としてキスを使うのではなく、正反対に威嚇としてキスをしているというので、今回調べてみました。

(アイキャッチ画像出展:PhotoAC)

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キスするサカナ『キッシンググラミー』

私たち人間は言葉やハグ、キスという手段を使って、相手に愛情を表現をします。

サカナ界でも愛情表現のために、体の色を目立つように変化させたり、立派な住処を作ったりする種類がいます。相手の体に触れるような愛情表現をする種類はあまり多くありませんが、中には情熱的かつ直接的なアプローチである「キス」をするサカナもいます。

その名も『キッシンググラミー』。

名前に「キッシング」と付いている通り、キッシンググラミー同士が時折熱烈なキスをします。2匹のキッシンググラミーは目が合うと、ゆっくり近づき人目もはばからずに濃厚なキスをするのです。

「キス」をするサカナ『キッシンググラミー』 実は愛情表現ではない?
キッシンググラミーの唇(出典:PhotoAC)

キッシンググラミーの概要

キッシンググラミーは、観賞用の熱帯魚として人気がある「グラミー」と呼ばれる魚の1種類になります。一般的にグラミーは、スズキ目キノボリウオ亜目の主にオスフロネムス科(一部例外あり)に分類される複数種の総称とされています。

多くの種が10cm以下の小型種ですが、特にオスフロネムス亜科には、80cm程度にまで大型化するジャイアントグラミーなども含まれます。

その中で、キッシンググラミーは、スズキ目キノボリウオ亜目へロストマ科に分類されるサカナです。またヘロストマ科唯一の原生種でもあります。

原産国

このキッシンググラミーを含めたグラミーはマレー半島や、インドネシアのスマトラ島、ボルネオ島などに生息しています。

キッシンググラミーと品種改良

先述した通り、小型のものが多いグラミーですが、本種は全長20cmと大型の部類に入ります。ちなみに観賞用熱帯魚として親しまれているキッシンググラミーは、白変個体を固定した改良品種で、野生体色の個体は緑がかった銀色をしており、グリーン・キッシンググラミーと呼ばれます。

特に品種改良された白変個体のキッシンググラミーはぷっくりと発達した唇が特徴的で、体色も薄ピンク色をしているため、まさにバレンタインにピッタリのサカナと言えるでしょう。

キスは愛情表現ではない?

見た目も行動もバレンタインにピッタリだなと思った読者の皆様、大変申し訳ありません。

キッシンググラミーがキスする理由は、実は愛情表現とは正反対。ケンカの真っ最中なのです。熱いまなざしで見つめあっているのではなく、実はお互いの出方を探りあっており、目線を外すことなくにらみ合っているのです。

そして、濃厚なキスをしているように見えますが、人間に例えるならば胸ぐらを掴みあっている状態なのです。

キスをするのはオス同士

お察しのとおり、キスをしているグラミー同士は両方ともオスになります。キスする理由はいくつかあると考えられており、オス同士の縄張り争いや、メスの奪い合いだと考えられています。

一般的なサカナは、ヒレを広げて見た目を大きく見せたり、口を大きく開けて、どちらがより大きく口を開けるか競い合う種が多いですが、キッシンググラミーのキスもこれらの行動のひとつだと言えます。

オスとメスはキスをしない

闘争行動としてオス同士でキスをしますが、実は、オスはメスとはキスをしません。このことから見ても、キッシンググラミーにとってキスは愛情表現ではなく、オス同士のケンカや勝負のための手段なのだとわかります。

ちなみに、メス同士も縄張り争いにキスをすることはありますが、オスほど縄張り意識も高くないため、あまりキスをしません。

飼育する際は注意が必要

バレンタインシーズンになると、各地の水族館では季節ごとの展示として、このキッシンググラミーを観ることができます。

もちろん観賞魚としても人気が高いサカナなので、自宅で飼育することもできます。ただし先述した通り、闘争本能が強く、他のサカナと同じ水槽での飼育には向いていないようです。

表向きにはキスをする可愛いサカナですが、その裏ではオス同士の激しい戦いが繰り広げられています。カップルで水族館デートに出かけて、もし同魚を観た時には、うんちくを披露して好感度アップを狙ってみましょう♪

<近藤 俊/サカナ研究所>

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