3回に分けてお届けする「源流釣り」シリーズも今回で最後。今回は「源流域でイワナをどう釣っていくか」について、具体的に解説しよう。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース関東版 茨城・上谷泰久)
「ハヤ止め」の滝からが本番
源流は川によってそれぞれ「どのようにイワナを狙っていくか?」が違う。中型の数釣りを楽しむのか、大イワナを夢見るのか。川の様子に注意を払いながらソ行する。
多くの場合、車止め(車で進入可能な最奥)から近い歩き出しは釣りの対象外。ダムのバックウオーターの川だと下流域はハヤやヤマメが生息し、これらと切り離す「ハヤ止め」という滝までは最低限、歩きたい。
魚の気配を感じ取ろう
上流へ行けば行くほど魅力あるエリアになってくる。水の中からの魚の気配を感じ取れるよう、体を慣らしながら歩くことが大切だ。魚影が濃いエリアまでくると足元でイワナが散ったり、流れの中に魚の影を見つけられたりするだろう。
魚止め滝(魚が容易に越えられない滝)を越えるとイワナの気配は途端に薄くなる。そんな場所は見切って、次なるエリアまで時短するアクティブな動きが源流釣り師には必要だ。

その日のパターンを見つけよう
ヤマメ釣りの基本「ナチュラルな流し」ではアタらないことが多いので、流れの中で止めて、エサを浮かせることで口を使わせる。源流の魚は人への警戒心が薄く、スレていないが、その日の釣れるパターンを見つけないと釣果には恵まれない。
流れの中だけでなく、流れがない岩の陰などに潜んでいる。ここも渓流とは大きく違うところなので、いろいろ探ってみよう。
源流には魚止め滝が点在し、近づくにつれて魚の型は大きくなる。
源流釣りのエサ
源流では大きな川虫があまりとれない。エサはミミズやブドウ虫を持参しよう。

ファイトは強引に
続いてファイトについてだが、近くに隠れ家の横穴や大岩の下などがあると、大型はハリ掛かりすると必ずそこへ逃げ込む。十分すぎるくらいの強度のイトを使って、力勝負で強引に仕留めるといい。
細いイトを使ったテクニカルな釣りにこだわる人はいるが、個人的には「太い、見え見えのラインを使って賢い大型に口を使わす」ことが腕の見せ所だと思っている。
源流釣りのアワセ
アワセのタイミングはとても重要。イワナは「掛かりが浅く水際でバレる」か「ハリを飲み込まれる」の極端な状況がとても多い。
この魚は、まずエサを口先でくわえて、何かのタイミングでスポッと飲み込む。相手が大物だと分かっていた場合「しっかり飲み込ませたい」と思うだろうが、幾多の危機を生き抜いてきた大型は十分すぎる時間を与えてもなかなか飲み込んでくれないもの。
こうした相手へのアワセのタイミングは、とてもワクワクする瞬間だ。

ハリを飲んだ魚でも、なるべく元気な状態でリリースしてあげたい。スムーズにハリを外せるように練習しておこう。
安全な釣行のために
源流はとても楽しい大人の遊び場だが、危険がともなう。大ケガしてしまっても携帯電話は圏外で助けを呼ぶことはできない。特に単独釣行の場合、徒歩数時間の山中で足に大きなダメージを負うということは死に直結する。決して無理せず、安全に帰宅することを心がけよう。
「きょうはここまで」、「次回はもう少し奥まで」と、1シーズンかけて1つの川の地図を完成させていくぐらいのペースが無難。
急斜面や岩壁の攻略
①途中まで登る②一度、降りる③再び、下から見上げて確実に安全な足場やホールドを確保。これをクライムダウンという。

疲れない足=健脚が重要
長い道のりを歩き続けても「疲れない足」が最も頼れる武器。源流釣りは腕自慢より足自慢。「健脚」という言葉がもっとも誉れの称号だ。体力が消耗してくると気が付かないうちに足は上がらなくなり、木の根っこにつまずいたり、岩場で滑ったり、集中力が欠けて安定しない石に足を置いたりしてしまう。
私は100kmマラソンを完走できるほど鍛え上げて、走れる足を最大の武器にしている。

野生動物との遭遇
滅多にあることではないがイノシシやクマなどに出会う危険も。常に臭いと音には注意を払っておこう。
熊鈴は数種類の音色の物をぶら下げ、なるべく自身の身体に当たらないようにして、遠くまで響くように調節しておく。
道迷い
山菜やキノコを採りに来た人が作ったゼンマイ道に知らずのうちに迷い込んでいるときがある。GPSなどを使って、正しい道に戻れるように確実な用意を。

水の確保
川ズ通しなら持参の水は500mlでいい。飲みきったら奇麗な川の水や湧き水をペットボトルに補充する。山の天気は気まぐれで突然の雨は珍しくない。雨後は水が濁るので、早めに確保しておこう。
登山道など、山道を多く歩くときは多めに持って行くこと。そして、水場をしっかり覚えておけば次回からは荷物を減らせる。
レジャー保険
最後の手段はレスキュー。あらかじめ家族にルートやスケジュールの詳細を教えておき、「○○県の○川へ釣りに行く。○月○日までに連絡がない場合はレスキューを頼んで欲しい」と伝えておこう。
救助費用は高額になるため、各保険会社からいろいろなレジャー保険が用意されている。
源流釣りならではの体験を
全3回に渡って紹介した源流釣り。皆さんいかがでしたでしょうか?源流って日本のアマゾンみたいだと思いませんか。
滅多に人が入り込まない自然界の中で、何が起こるかわからないドキドキ感。そして、大イワナとの巡り会い。伝説の大イワナ・タキタロウが人知れず秘境の奥地にいるかもしれません。
そんな魚に出会えた時、きっとあなたの生涯の記憶に残る1尾になるでしょう。
<週刊つりニュース関東版 茨城・上谷泰久 /TSURINEWS編>
この記事は『週刊つりニュース関東版』2020年3月13日号に掲載された記事を再編集したものになります。