1978年の発売開始から世代を超えて愛され続けるギンビス社の動物型ビスケット「たべっ子どうぶつ」をフル3DCGアニメーション映画化した『たべっ子どうぶつ THE MOVIE』が、5月1日から全国公開された。本作でぞうくんの声を担当した水上恒司と映画オリジナルキャラクターのぺがさすちゃんの声を担当した髙石あかりに話を聞いた。

-オファーがあった時はどんな気持ちでしたか。

水上 声優のお仕事のオーディションにはずっと落ちていたので…。でも今回はオファーがあったので「僕で大丈夫かな」と思いました。僕の下手くそ具合を皆さんはご存じなのかなと(笑)。でも、僕に託して期待してくださっている以上、その期待に少しでも応えたいと思いました。

髙石 私は「たべっ子どうぶつ」のグッズも持っていたので、そこの一員になれるうれしさがすごくありました。あとは、私が演じるぺがさすちゃんは映画オリジナルキャラクターということで、どんなキャラクターなんだろうと。とてもかわいらしいですし、どう演じていけるのかというところですごく楽しみでした。

-最初に脚本を読んだ時の印象は?

水上 人間ではないキャラクターたちに人間味を感じるところがすごくすてきだと思いましたし、それが子どもたちに通ずるということは大人にも通じることだと思ったので、そういう作品を作ることの一翼を担えることがうれしかったです。

髙石 やっぱり「たべっ子どうぶつ」って、子ども向けのイメージがあると思うんですけど、大人の方たちにも見てほしいと思いました。それぐらい物語性があって、後半のどんでん返しにもすごく引き込まれるので、そこは楽しみにしていただきたいと思いました。

-実際にアフレコをしてみて難しかったことや楽しかったことはありましたか。

髙石 難しさはすごく感じました。どう感情を乗せるのかというところですごく悩みました。冒頭で事故が起きて、ぺがさすちゃんがそれに驚くところはすごく楽しみながらできたという思いはあるんですけど、ぺがさすちゃんが気持ちを吐露するシーンは、何回もさせていただきました。歌はもともと送っていただいた楽曲があまりにもよかったので、これを自分がどう説得力を持って歌えるのかという不安はありましたが、皆さんも歌っていただいたら分かると思うんですけど、すごく気持ちがいい歌ではあるので、それを歌う楽しさはありました。

水上 この映画の主人公はらいおんくん(声:松田元太)とぺがさすちゃんです。だけど僕が演じたぞうくんのように、彼らに付随するキャラクターたちが、しっかりキャラクターとして立っている。そこが素晴らしい作品ですが、ぞうくんたちには言葉の出し方やストロークみたいなものがないんです。でも、それを自然に見せるところがこの映画のすごさだと思います。一つ一つのせりふの進路というか、思いを込めるためのストロークを、短い中で一つ一つやっていかなければならないという技術的な難しさをすごく感じました。今回の僕の役の作り方は、ぞうくんのキャラクター性よりも、らいおんくんのことをどう見ているかというものだったので。

-確かにぞうくんは、おとなしめというか、低い声であまり感情を表に出さないようなキャラクターでした。

水上 例えば、かんしゃくを起こしている子どもに対して、大人もそれに乗っかるようなことをするといさめられないと思うんです。

だから、ぞうくんはらいおんくんに何をされても「らいおんくん、こうだよ」と言って、それを聞いたらいおんくんがハッとするというようなキャラクターだと思ったので、そうしたところからきた抑制なのかなと思います。ぞうくんは昭和のいい女房みたいな感じです。それがいいかどうかは分かりませんが、僕はそんなイメージで演じました。

-それはご両親のイメージ?

水上 僕は九州出身なので、それはすごく感じます。男を立てるみたいな昔のイメージ。それがいいとか悪いとかではなくて、それは僕がそうした生い立ちだからこそ、そういうイメージが湧いてきたのかなと思います。

-自分が演じた役以外で好きなキャラクターはいましたか。

髙石 私は「わにくん」が好きです。

水上 僕は、関智一さんが声を当てたゴッチャンです。ゴッチャンとらいおんくんが出会うシーンのカットバック。あそこは技法的にもすごく引き込まれました。関さんとはご一緒したことがあったので懐かしさを感じながら、やっぱりうまいなと思いました。

-この映画のメッセージ性についてはどう思いますか。

髙石 人を笑顔にするという意味で言うと、大勢の人たちに対してというのは難しいと思いますが、自分の周りの家族や友達には笑顔で見てもらえたらうれしいという思いは常にあります。いろんな感情を表現して、気持ちが湧き立つようなお芝居を目指しました。

水上 多分これを見てくれる子どもたちは、見栄を張ったり、嫉妬したり、人の言うことを聞かなかったりという感情をまだ言語化できないと思うんです。このたべっ子どうぶつのキャラクターたちのように、何もかもうまくいかない中で、壁や何かしらの障害を感じながらも進んでいかなければならない。至極当たり前のことをこの作品では語っています。だからそれを言語化できなくてもいいから、子どもたちに感じてもらえればいいと思います。そして保護者の方々が、それを言語化して子どもたちに伝えてほしいです。その点では、大人の方にも見ていただける作品になっていると思います。

-完成作を見て改めて感じたことはありましたか。

髙石 最初にデータで頂いて小さい画面で見たんですけど、先日やっと大きいスクリーンで見ることができて、やっぱり映画館で見ていただきたいなと思いました。モフモフ感みたいなものが伝わるし、映像に対してもすごいこだわりが見えます。

音楽も今回歌わせていただいたのもそうですが、劇中で流れるものもすごくすてきです。あとは色遣いがすごいです。

水上 アフレコの時にはまだ画になっていないところがあって、そこからどれだけの技術が盛り込まれたのかは分からないですけど、一般のお客さんたちと比べて少しだけ進んだところを感じられたからこそ、技術的なところにも興味を持ってほしいと思いました。僕らのアフレコを宣伝として使っていくのもすごく大事なことですが、それと同じぐらい製作過程を知ることも大事だなと。それを知ることでアニメを作りたいと思う子どもが増えてくれればいいなと思いました。

-最後に観客や読者に向けて一言お願いします。

髙石 まず物語性があります。それとたべっ子どうぶつたちのかわいらしさや、モフモフを感じに来ていただきたいところもありますけど、大人の方には、一人一人のキャラクターや人間味から感じる面白さとか、話全体の流れとしてのどんでん返しの面白さを感じていただきたいと思います。

水上 子どもたちと一緒に保護者の方が来ることも多いと思います。保護者の方は、子どもが感動していたら、この子は一体何に感動しているのかという視点を持っていただきたいと思います。どこがよかった、何が面白かったという話を親子でするきっかけの一つになったらうれしいです。

(取材・文・写真/田中雄二)

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