公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(以下Bリーグ)は6月16日に通常理事会を開催。互選による投票を行ない、次期チェアマンとして島田慎二氏を選出した。
すでに10日の臨時会員総会で「チェアマン候補者たる理事」として決議されており、就任は事実上決まっていたが、これで正式に決定した。島田氏は7月1日に着任。現在の大河正明チェアマンは6月30日付で退任する。
次期Bリーグのチェアマンに決まった島田慎二氏
今回のチェアマン交代は大河氏の辞任によるものだ。
Bリーグは昨年7月にリーグの新たな形を目指す「B.LEAGUE BEYOND 2020」と題した中長期計画を発表。2026年をターゲットとした改革案を表明しているが、チェアマン任期に上限があるため、大河氏はそこまで在任できない。
大河氏は現在3期目で、来年夏まで任期を残している。新型コロナウイルスへの対応が求められるこの時期の辞任に唐突感は否めない。
しかし来シーズン、仮に1試合も開催できずとも、クラブに配分金を支払いつつ、リーグが1シーズン生き残るための資金調達にも目途を立てたことに加え、開幕時からのトップパートナーである「ソフトバンク」との契約継続も決定した。スムーズなトップの交代へ、できる限りの準備は果たしたと言えるだろう。
昨年11月に発表した2018−19シーズンの決算発表では全クラブとBリーグ本体、JBA(日本バスケットボール協会)は合わせて308億円の収益を上げ、年間入場者数も259万人を超えた。
大河氏が元銀行員で財務に明るい実務家だったのに対し、次期チェアマン島田氏は25歳で旅行会社を起業。アジア通貨危機、リーマンショックなどの苦難のなかでも、企業の売却や新たな設立を経験しながら時代を生き抜いてきたベンチャーマインドを持つ経営者だ。
中学時代は野球部、高校時代はサッカー部に所属するなど、もともとバスケットボールの世界とは無縁だったが、2012年に破綻寸前だった当時bjリーグ所属の千葉ジェッツを運営する株式会社ASPEの社長に就任。
経営難に陥っていた球団を立て直すべく、NBLへの転籍や地域密着の強化などを打ち出し、8年連続黒字へと導いた。クラブの財政危機から成長フェーズまであらゆる段階を経験している。
また千葉の代表と兼務する形でBリーグのバイスチェアマンを務めた時期もあり、昨年はリーグ初の1億円プレイヤー富樫勇樹を千葉から生み出すなど、さまざまな形でBリーグを牽引してきた。
しかし新型コロナウイルスは100年に一度とも言われる危機。「喜んで火中の栗を拾おうという思いで引き受けさせていただいた」と島田氏は言うが、今、リーグを取り巻く状況は厳しい。
2019−20シーズンの試合数減少により6月決算のB1、B2の28クラブのうち、じつに25クラブが赤字の見込みだ。
島田氏は就任にあたり、2020−21シーズンの10月開催を明言した。これは各クラブがスポンサーと向き合うにあたり、リーグとして意思表示を明確にすべきとの判断からで、「やるのかやらないのかわからない」という状況を回避した。早速、リーダーシップを発揮したと言える。
「フルでお客様を入れられるか、制限付きか、それとも無観客か。
その前提として選手が安心してプレーできる環境づくりも始まっている。プロ野球やJリーグの事例を見ながら、PCR検査なども見据えた仕組みを構築中だ。
各クラブへの資金的な援助も構想に入っている。リーグとしての投資や経費を見直し、配分金とは別にサポート資金をつくり支援。
「私自身が出向き、Bリーグのビジョンや可能性を語ることができる。個人的に飛び回ってでもクラブのサポートを本気でやっていきたい」
コミュニケーション能力の高さは島田氏の特徴だ。これまで個人として「島田塾」と銘打ち、各クラブの経営者との勉強会を主催してきただけでなく、2019年に千葉の社長を退任し、会長となってからはB2福岡のクラブ経営アドバイザーも務めた。日本中に散らばる各クラブがどんな問題を抱えているか、その事情に通じており、それが今回のチェアマン選出の理由のひとつとなっている。
「ひとつのクラブも経営破綻させない」と語る島田氏の言葉には覚悟が滲む。
また、「クラブの成長なくして、リーグの発展なし」と以前から繰り返し発言しており、すべてのクラブに対して強いリーダーシップを発揮してくれることを期待したい。