村元哉中&髙橋大輔が世界選手権初出場へ。日本の過去最高成績の...の画像はこちら >>

四大陸選手権で銀メダルを獲得した村元哉中・髙橋大輔組

巻き起こした"かなだい旋風"

「かなだい」と親しみを込めて呼ばれるようになった村元哉中・髙橋大輔組は、アイスダンス界で旋風を巻き起こしている。

 カップル結成2年目にもかかわらず、昨年はNHK杯、ワルシャワ杯で日本アイスダンス歴代最高得点を立て続けに更新した。今年1月の四大陸選手権では、チャンピオンシップにおける日本勢史上最高位の銀メダル。

ISU(国際スケート連盟)シーズン世界ランキングでも国内ではダントツの1位で、暫定トップ10入りした(3月6日現在で15位)。

 日本国内でこれほどアイスダンスが注目されたことはなく、今や旗手的存在だ。

「すべての面で成長しているんじゃないかと思います」

 村元は、結成から2年間を振り返って言う。

「技術面でも表現面でも、ダンサーとしてひとつのチームになってきているのはすごく実感していて。NHK杯とワルシャワ杯では実際に評価も得られて。アイスダンスを始めたばかりの大ちゃん(髙橋)がここまで来られたことは本当にすごいし、成長をしているなって感じています」

 ふたりが"超進化"と表現した躍進だ。

【予想を覆すふたりの活躍】

 3月23日、フランスのモンペリエで開幕する世界選手権は、かなだい2年目の総仕上げとなるか。

ーー2019年夏にアイスダンサーへの転向を決意しましたが、その時の自分に言葉を送るとしたら?

 昨年のインタビューで質問を投げた時、髙橋は明瞭な声で即答していた。

「覚悟しとけよって感じです。想像以上に大変だぞって(笑)」

 しかし、その成長のスピードは目覚ましい。別競技への異例の挑戦でありながら、次々に予想を覆してきた。アイスダンス関係者の見通しを、はるかに上回った。

 シングルスケーターとして長年、男子フィギュア界を背負ってきた者の決意の違いだろうか?

「昨シーズンから考えると、表彰台は想像もつかなかったです」

 銀メダルを受賞した四大陸選手権後、髙橋はそう振り返っている。



「シルバーメダリストになったうれしさの半面、悔しさもすごくあって。そんな自分にびっくりしています。やっぱりゴールドメダル、表彰台の真ん中に立つのを、ふたりでやってみたいというのは芽生えてきていますね。その先にもいろいろな景色が見られるんじゃないかなって。表彰台に上がると、そうした欲も感じています」

 心の整理が難しい北京五輪代表発表後、見事に結果をたたき出した。そこで生まれた「欲」は、世界のトップを競ってきたスケーターならでは、と言えるか。
それは単純な競争心ではない。高潔とも言える探求心だ。

【世界選手権で日本最高順位の更新なるか】

 そして世界選手権、かなだいはいよいよトップダンサーたちと同じ舞台に上がる。

 リズムダンス、『ソーラン節&琴』の世界観は、のちのちもかなだいの代名詞として語られるだろう。大漁旗があちこちで上がるような雄壮さから、ヒップホップダンスの異国感的な律動が覆いかぶさる。ふたりの身体から音が鳴り響くような錯覚すら覚えるはずだ。



 四大陸選手権では、冒頭にタイミングがずれて村元が転倒するアクシデントはあったが、その減点以外、上々の出来だった。ミッドナイトブルースは日本選手歴代最高得点を出したワルシャワ杯を上回るレベル4で、ミッドラインステップシークエンスもレベル2から3に上げた。コンディション面を考慮すれば、確実な成長を示していた。

 そしてフリーダンスは、『ラ・バヤデール』。2年目になるだけに完成度は高い。夢の中だけで結ばれるふたりの悲恋を、氷の上に映し出す。
最近はリフトも安定してレベル4を獲得するなど、ワルシャワ杯でたたき出した190.16点以上も十分に望めるはずだ。

 今回の世界選手権は、ウクライナ侵攻による制裁によりロシアの有力なカップルたちが出場できない。それでも強敵はそろっているだけに、フリー進出も易々とはいかないだろう。そこで、もし10位以内に入ることができたら、日本フィギュアスケート界に金字塔を打ち立てることになる(過去最高成績は2018年、村元とクリス・リード組の11位)。

「世界選手権では、枠取りという部分でも(10位以内に入って)2枠を取って帰ってきたいです。そうなったら、2023年には(小松原美里・尊組など他のカップルと)一緒に世界選手権という場に立てるかもしれないので。
その意味でも、僕たちは世界選手権を精一杯頑張りたいです!」

 そう語る髙橋は寛大で、先駆者的スケーターの矜持をにじませる。

 結成からわずか2年だが、かなだいは濃密な日々を過ごしてきた。短編の連作小説のような味わいがある。フランスでの世界選手権は、ひとつの結実になるはずだ。