伊藤美誠、度重なる話し合いの末「とてもありがたい契約」でTリ...の画像はこちら >>

パリ五輪を目指しTリーグ参戦を決断した伊藤美誠

 9月10日、Tリーグ5シーズン目の開幕戦、日本卓球界にとって待望の瞬間が訪れる。これまで日本女子のトップランカーのなかで唯一、同リーグに参戦していなかった伊藤美誠(スターツ)が、7月にリーグ4連覇中の日本生命レッドエルフからの参加を表明。
すでに8月に行なわれたTリーグ初の個人戦「ノジマカップ」でTリーガーとしての初陣を果たしたが、5年目を迎える団体戦では初めてファンの前に姿を現す。

 そして今回、新天地でもその多彩な技術や勝負強さを発揮するであろう日本女子のエースに、Tリーグ参戦発表までの裏側や、背番号「99」の意味、開幕に向けての意気込みを聞いた。

Tリーグ参戦は誰にも話していなかった

――改めて、Tリーグ初参戦を決めるまでの経緯を教えてください。

 やはりパリ五輪出場を目指すとなると、代表選考対象であるTリーグに参戦しないと厳しいというのが大きな理由です。参戦するにあたって、どういう契約をするのかは、日本生命さんと、私の所属先であるスターツさんとはすごく話し合いました。「こういうことをしてほしい」「そのうえでTリーグに出たい」といくつか意見を出させてもらい、最終的にスターツさんに所属したまま日本生命レッドエルフの一員としてTリーグに出させてもらうという、私にとってとてもありがたい契約をしてもらえました。

――これまでTリーグを外から見る立場でした。

どのような印象を抱いていましたか。

 正直なところを話すと、自分のなかでは、海外の試合と比べるとどうしても盛り上がりに欠けるイメージがありました。国際大会では海外のお客さんの多くが、とても熱狂的だからです。でも、Tリーグを見ていて、日本でももっと卓球界を盛り上げようという気持ちはすごく伝わっていました。だからこそ今回、自分自身も試合に出場し、勝つことによってTリーグを盛り上げられたらなと思っています。

 試合は、何度かテレビや動画で観たことはありました。
海外遠征中や、お店でご飯を食べていた時に、「この対決は気になるな」と思った試合は、コーチと一緒にチェックしていましたね。2020ー21シーズンの日本生命vs木下アビエルのプレーオフファイナル、とくに早田ひな選手の試合は気になって観ていました。私もあの雰囲気のなかに入れるかもしれないと思うとすごく楽しみなので、そのために一戦一戦、チームの勝利につながる活躍ができたらいいなと思います。

――その早田選手の存在が、Tリーグ参戦の決め手として大きかったと7月のオンライン会見で話していましたが、何か相談はされていたのでしょうか。

 いいえ、発表当日までは早田選手にも、他の選手にも一切話していませんでした。会見の数時間前に石田大輔さん(早田ひな専属コーチ)や、周りの人に「実はこうなりました。

よろしくお願いします」と連絡をさせてもらったぐらいです。そうしたら翌日、私の練習場所にレッドエルフのメンバーが来てくれて、「ようこそ~」って迎え入れてくれたんです。「とても温かいチームに入れたな」と感じましたね。

敗戦をきっかけにいい方向に向かい始める

――ちなみに、ユニホームの背番号を「99」に決めた理由はなぜですか。

 けっこうサラッと決めたので、とくに深い意味はないのですが......(笑)。強いて言えば、選手入場は若い背番号順でコートに入ると聞いたので、先に他のメンバーに出てもらい、新加入の私が「みんなで頑張ろう」「お互いを支えていきましょう」という気持ちで最後に入場させてもらえたらな、という思いがありました。



――そうだったんですね。東京五輪の女子シングルスで銅メダルを獲った後に、「嬉しい気持ち1%、悔しい気持ち99%」と話していたので、その99%の悔しさを忘れずにパリを目指すという意味で決めたのかな、と勝手に予想していました。

 すごい!(笑)。確かにその理由もあるかもしれないです。それと番号だけ見ると、「99」ってけっこう可愛くユニホームに収まったな、まとまりがいいなって、今は思いますね。

――最後に、開幕戦に向けて意気込みをお願いします。


 今は体調的にもそうですし、気持ち的にもすごくいい状態にあるので、自分にしかできない卓球をTリーグでも出していけたらいいなと思っています。

 振り返ると、7月にハンガリー・ブダペストで開かれたWTTチャンピオンズの準々決勝で、中国の王曼昱(ワン・マンユ)選手に敗れたんですが、その時に「これから自分に何が必要なのか」ということに気づけてから、自分の卓球がいい方向に向かっているなと感じています。

 そのなかでも、とくにメンタル面において、どんなに強い選手と対戦しても、少しでも余裕を持つ、リラックスすることがすごく大事だなと感じました。そういう状態で試合に臨むことができれば、国内の大会でもいいパフォーマンスにつながると思うので、Tリーグの試合はすごく楽しみな気持ちが大きいです。

 また、パリ五輪代表選考基準は世界ランキングなのか、国内大会での累積ポイントなのか、まだどちらが採用されるのか決まっていませんが、私は今できることを全力でやるだけです。世界ランクでも、国内ランクでも1位を獲ることを目標に、ノジマTリーグ開幕戦から頑張りたいと思っています。

【Profile】
伊藤美誠(スターツ所属)
2000年10月21日生まれ、静岡県出身。世界ランキング(最新)5位。2歳から卓球を始め、小学2年生以下、小学4年生以下の全日本選手権で優勝。10歳の時に出場した、全日本選手権・一般の部で(大会)史上最年少勝利記録を更新するなど、幼少期より数々の記録を打ち立てた。16年リオ五輪の女子団体で銅メダルを獲得。21年の東京五輪では3種目に出場し、混合ダブルスでは日本卓球史上初の金メダルを獲得。シングルスで銅メダル、女子団体戦で銀メダルを獲得した。