新型コロナウィルスのパンデミックの影響で中止になっていた東レ パン パシフィックオープンテニス(以下東レPPO)が3年ぶりに開催され、大坂なおみが日本のテニスコートに帰って来た。「ディフェンディングチャンピオンと言われるのは妙な感じがしますが」と前置きをしながら、「もう一度ここ(東レPPO)で優勝したい」と気持ちを強くして戦いに挑んだ。



日本のテニスコートに帰ってきた大坂なおみ。「テニスに関して、...の画像はこちら >>

1回戦は、短時間だったが、久しぶりに日本のコートでプレーをした大坂なおみ

 今回ノーシードでの出場となった大坂(WTAランキング48位/9月19日づけ、以下同)は、1回戦でダリア・サビル(55位、オーストラリア)と対戦したが、大坂と日本の観客が、有明コロシアムで共有する時間は思いのほか短くなってしまった。

 第1セット大坂1-0で迎えた第2ゲーム、30-30となった場面で、サビルがフォアの逆クロスを打ってネットへつなげようとした際に、サビルは左足着地時にひざを痛め、そのままリタイアとなった。残念ながら試合は唐突に終わってしまったものの、3年ぶりに日本のテニスファンの前でプレーできたことを大坂は素直に喜んだ。

「ファンの皆さんに会えるのが、本当に久しぶりでした。今夜もこんな悪天候のなか、皆さんが観戦に来てくれて、本当に心から感謝しています」

 今大会では、新型コロナウィルス感染予防のため、観客は選手からのサインをもらうことができなくなっている。それでも、観客を気づかう大坂は、コートサイドでファンへ歩み寄ろうとしたり、大会スタッフの説明に納得できない部分があるかのように、退場する際にサインに応じたりする場面も見られた。


「私としては、できるだけ多くの人にサインをしてあげたいという気持ちになっていたんですけれども......。特に、子供たちもたくさん来てくれていたので。今日は、残念ながら(スタッフからサインを)してはいけないよと言われたので、申し訳ない気持ちでいっぱいです。今後何かしらの方法を見つけて、皆さんのサポートに対してお返しできればと思います」

方向性は間違っていない

 2022年シーズンは、大坂にとって身辺で変化が多い年だった。

 その変化のひとつである、ウィム・フィセッテコーチとのタッグが解消されたことは、驚きだった。大坂とフィセッテコーチは、2019年年末からタッグを組み、コロナのパンデミックが続くなかで、2020年USオープンと2021年全豪オープンで優勝。"グランドスラム優勝請負人"と言われるフィセッテコーチの手腕は、大坂との取り組みでも発揮された。

だが、7月中旬に袂を分かつことが突然発表された。8月のUSオープンテニス前に大坂は、この決断について、こう話している。

「私とウィムは本当にいい時間をたくさん過ごしました。彼は本当にすばらしいコーチです。私たちの別れは、彼がどれだけいいコーチであるかということとは関係ないのです。正直なところ、私自身と、その時の私の頭のスペースに関係しているのです。
私はただ、何かをポジティブに変える必要があると感じていたのです。振り返りたくないし、自分がしたことを後悔したくはないんです」

 また、オフコートでは、長年所属していたスポーツ大手エージェンシー・IMGを離れて、大坂自身でスポーツエージェンシー「EVOLVE」を、長年大坂のマネジャーを務めてきたスチュアート・デュギッド氏とともに設立して新たなスタートをきった。今大会前の会見では、意気込みとともに今シーズンのさまざまな出来事を振り返った。

「これまでも毎年、キャリアの最初からさまざまな変化がありました。そのなかでも、今年は確かにいろいろなことが育っていったと思います」と語る大坂は、オンコートでもオフコートでも変化が多いが、自分のテニス方向性は正しいと感じている。

「テニスに関して、私は間違った方向にいっているとは思いません。
選手としてテニスは、自分のベースであり、確固たるものを築いてきていますし、それは変わらないです。テニスを通じてさまざまなことを学べています。自分はアグレッシブなプレーヤーですから、その姿勢は貫いていきたいです。

 オフコートでのあらゆることに関しては、いろんな楽しいことや自分が興味をもっていることに接する機会に多く恵まれて、本当にうれしいです。有り難いし、感謝しています。私の携わっていることもいい方向へ向かっていってくれることを望んでいます」

 テニス以外のことでも話題に事欠かない大坂が、モチベーションを保ちながら本当にテニスに集中できているのか、そして、いい方向へ向かっているのか、大坂の言葉を信じたいところだが、今後はやはり大坂自身が結果を残してこそ、それが証明されるのだろう。

2回戦で問われる現在の実力

 正直、試合時間が短かったため1回戦で大坂のテニスがいい状態なのかどうか、見極めることはできなかった。2回戦では、第5シードのベアトリース・ハダード・マイア(16位、ブラジル)と対戦する。2015年WTAオスプレイ大会の予選で1度だけ対戦して、大坂が勝っている。

 今季ハダード・マイアは、WTAノッティンガム大会とWTAバーミンガム大会で優勝し、さらにグランドスラムに次ぐグレードのWTA1000トロント大会で準優勝を果たした。2022年は62位からスタートしたが、シーズン後半になってランキングを急上昇させている。

「私も彼女(ハダード・マイア)もそれぞれ成長していると思います。

今のところ彼女がいい形で試合をしているのは知っています。とても楽しみな試合になると思います」

 今季、WTA1000マイアミ大会での準優勝しか大きな結果を残せていない大坂にとって、ハダード・マイアはかなりの強敵だ。

 もちろんプロテニスプレーヤーを続けていれば、いいことばかりではなく、誰だって山あり谷ありだ。再び大坂が上昇カーブを描くきっかけをつかめるのか、2回戦は、大坂の現在の実力が問われるだろう。